6 / 122
食事
しおりを挟む
三○三号室。
一組の男女が言い争いを始める。
「まさか俺を棄てる気か? あんな奴に乗り換えるつもりじゃないだろうな? 」
冗談とも本気とも取れる男の態度。
嫉妬深く束縛男は最初だけなら可愛いが関係が続けば恐怖でしかない。
それが分かってるはずもなく暴走を続ける。
「はいはい。うるさいなあ。こっちは仕事。お願いよ」
派手な花柄の下着姿で足を組む。
「なあお前を信じたいんだよ。分かるだろ? 」
しつこくキスを迫ろうとする男。
「だからそう言うのはもうやめて! 」
イライラして悪態を吐く女。
だがしかしどうにか冷静さを取り戻す。
「ふふふ…… その壺で私をやるつもり? 」
「馬鹿な。商売道具を何だと思ってるんだ」
「もう骨董商のくせにまだ下働きをするつもり」
「おいおい勘違いするな。俺はそう演じてるだけで骨董は素人だ。
だからこの壺の価値さえ分からない。偽物か本物かは?
あいつに聞けば分かるがな」
腕のいい鑑定士が一人バスツアーに紛れ込んでいる。
「まあホテルで飾ってあるんだから偽物であるはずがない」
「それは鑑定ではなくただの推測じゃない。呆れた」
「そう言うな。俺は深く関わらないようにしてる。詳しくなければ危険はない」
おかしな持論を展開するハッタリ男。
「はいはい。分かったわよ。それで計画はどうなってるの? 」
本番は明日。それまではゆっくりしている。
目の前には人相の悪い輩。これでも少しはまともになった方。
人相が悪いものだから子供からも大人からも敬遠される。
だからなるべく静かに目立たないようにアドバイス。
仕事の前に悪目立ちしては困りますからね。
「計画? 」
「いいから早くして! 」
「俺たちの結婚か? 」
「ふざけないで。離婚するつもりない癖に。
今の会話録音してあるから奥さんに聞かせちゃおうかしら」
「いや待ってくれ誤解だ。ただの挨拶じゃないか」
奥さんの名前を出すと怖気づく。
こんな最低男と一時期とは言え付き合っていた自分が情けなく思えてくる。
それよりもビジネス。
「ああ。今回はこいつじゃない」
「ちょっとどういうこと? これがあなたの専門でしょう? 」
「ああ。だがさすがにいくら偽物でも壺をここまで運ぶとなると相当大変だ。
だから手軽に今回はジュエリーを扱う。これも依頼人の指示だ」
「へええ綺麗。凄い」
「ははは…… 全部偽物だ。本物など用意できる訳ないだろう。
我が開発部自慢の最高級カラーストーンさ。どれでも好きな色をくれてやる。
開発部とはまあ良く言ったもの。偽物を大量生産するなんてな。ははは…… 」
「調子に乗ってると足元をすくわれるわよ」
「そう言うなって。誰も分かりはしないさ。さあこのネックレスをつけてみろ」
明日行われる即売会に向け準備は着々と進んでる。
「それよりもお前。余計なことするなよ」
「ダーリンについて? 」
「何がダーリンだ。好き勝手しやがって。トラブルはごめんだ」
怒って出て行く。
もう嫉妬しちゃって。あんな男に靡くはずないでしょう。
ただあの男が大金持ちのボンボンの可能性が高い。
まだ独身だと言ってたけれどそれも本当かどうか。
何も結婚して全財産奪ってやろうなんて思ってない。
ほんの少し援助してもらうつもり。その為なら体を差し出すのも厭わない。
さあそろそろディナータイム。
服を着替えるとしますか。
他人の振りもしなくちゃいけないし。忙しい。忙しい。
七時。
最後の客が揃ったところで料理が運ばれてくる。
まずはアミューズ。
テリーヌとマッシュポテト。
前菜にシーザーサラダとサーモンのマリネ。
スープはカボチャの冷製スープ。
パンは雷ブレッド。
固さに定評があり歯ごたえ抜群。
色が黒なのはドスグロに掛けてなのだろうがちょっと不気味。
はちみつとバターとジャムをお好みで。
サーモングラタン。
創作料理の悪魔の誘惑。
最初は甘くて徐々に辛くなっていく。
一口ずつ丁寧に運ばないと悲惨な目を見る。
続いてマスの爽やか煮。
レモンをふんだんに使用。ついでに雷ソーダを最後に垂らして完成。
肉料理はジビエ。
シカ肉のステーキ。
昨日獲り今日捌いた新鮮なシカ肉をミディアムで。
ここでワインが振る舞われる。
今回は白を合わせる。
デザートに創作のオレンジケーキ。
これで完成。
旨い! 旨い!
評判はいい。
どうやら満足して頂けたようだ。
皆が食事を終え自室に戻ろうとした時フロア中に異音が響き渡る。
続く
一組の男女が言い争いを始める。
「まさか俺を棄てる気か? あんな奴に乗り換えるつもりじゃないだろうな? 」
冗談とも本気とも取れる男の態度。
嫉妬深く束縛男は最初だけなら可愛いが関係が続けば恐怖でしかない。
それが分かってるはずもなく暴走を続ける。
「はいはい。うるさいなあ。こっちは仕事。お願いよ」
派手な花柄の下着姿で足を組む。
「なあお前を信じたいんだよ。分かるだろ? 」
しつこくキスを迫ろうとする男。
「だからそう言うのはもうやめて! 」
イライラして悪態を吐く女。
だがしかしどうにか冷静さを取り戻す。
「ふふふ…… その壺で私をやるつもり? 」
「馬鹿な。商売道具を何だと思ってるんだ」
「もう骨董商のくせにまだ下働きをするつもり」
「おいおい勘違いするな。俺はそう演じてるだけで骨董は素人だ。
だからこの壺の価値さえ分からない。偽物か本物かは?
あいつに聞けば分かるがな」
腕のいい鑑定士が一人バスツアーに紛れ込んでいる。
「まあホテルで飾ってあるんだから偽物であるはずがない」
「それは鑑定ではなくただの推測じゃない。呆れた」
「そう言うな。俺は深く関わらないようにしてる。詳しくなければ危険はない」
おかしな持論を展開するハッタリ男。
「はいはい。分かったわよ。それで計画はどうなってるの? 」
本番は明日。それまではゆっくりしている。
目の前には人相の悪い輩。これでも少しはまともになった方。
人相が悪いものだから子供からも大人からも敬遠される。
だからなるべく静かに目立たないようにアドバイス。
仕事の前に悪目立ちしては困りますからね。
「計画? 」
「いいから早くして! 」
「俺たちの結婚か? 」
「ふざけないで。離婚するつもりない癖に。
今の会話録音してあるから奥さんに聞かせちゃおうかしら」
「いや待ってくれ誤解だ。ただの挨拶じゃないか」
奥さんの名前を出すと怖気づく。
こんな最低男と一時期とは言え付き合っていた自分が情けなく思えてくる。
それよりもビジネス。
「ああ。今回はこいつじゃない」
「ちょっとどういうこと? これがあなたの専門でしょう? 」
「ああ。だがさすがにいくら偽物でも壺をここまで運ぶとなると相当大変だ。
だから手軽に今回はジュエリーを扱う。これも依頼人の指示だ」
「へええ綺麗。凄い」
「ははは…… 全部偽物だ。本物など用意できる訳ないだろう。
我が開発部自慢の最高級カラーストーンさ。どれでも好きな色をくれてやる。
開発部とはまあ良く言ったもの。偽物を大量生産するなんてな。ははは…… 」
「調子に乗ってると足元をすくわれるわよ」
「そう言うなって。誰も分かりはしないさ。さあこのネックレスをつけてみろ」
明日行われる即売会に向け準備は着々と進んでる。
「それよりもお前。余計なことするなよ」
「ダーリンについて? 」
「何がダーリンだ。好き勝手しやがって。トラブルはごめんだ」
怒って出て行く。
もう嫉妬しちゃって。あんな男に靡くはずないでしょう。
ただあの男が大金持ちのボンボンの可能性が高い。
まだ独身だと言ってたけれどそれも本当かどうか。
何も結婚して全財産奪ってやろうなんて思ってない。
ほんの少し援助してもらうつもり。その為なら体を差し出すのも厭わない。
さあそろそろディナータイム。
服を着替えるとしますか。
他人の振りもしなくちゃいけないし。忙しい。忙しい。
七時。
最後の客が揃ったところで料理が運ばれてくる。
まずはアミューズ。
テリーヌとマッシュポテト。
前菜にシーザーサラダとサーモンのマリネ。
スープはカボチャの冷製スープ。
パンは雷ブレッド。
固さに定評があり歯ごたえ抜群。
色が黒なのはドスグロに掛けてなのだろうがちょっと不気味。
はちみつとバターとジャムをお好みで。
サーモングラタン。
創作料理の悪魔の誘惑。
最初は甘くて徐々に辛くなっていく。
一口ずつ丁寧に運ばないと悲惨な目を見る。
続いてマスの爽やか煮。
レモンをふんだんに使用。ついでに雷ソーダを最後に垂らして完成。
肉料理はジビエ。
シカ肉のステーキ。
昨日獲り今日捌いた新鮮なシカ肉をミディアムで。
ここでワインが振る舞われる。
今回は白を合わせる。
デザートに創作のオレンジケーキ。
これで完成。
旨い! 旨い!
評判はいい。
どうやら満足して頂けたようだ。
皆が食事を終え自室に戻ろうとした時フロア中に異音が響き渡る。
続く
0
あなたにおすすめの小説
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
〈銀龍の愛し子〉は盲目王子を王座へ導く
山河 枝
キャラ文芸
50人もの侍女をクビにしてきた第三王子、雪晴。
次の侍女に任じられたのは、異能を隠して王城で働く洗濯女、水奈だった。
頬に鱗があるため疎まれている水奈だが、盲目の雪晴のそばでは安心して過ごせるように。
みじめな生活を送る雪晴も、献身的な水奈に好意を抱く。
惹かれ合う日々の中、実は〈銀龍の愛し子〉である水奈が、雪晴の力を覚醒させていく。「王家の恥」と見下される雪晴を、王座へと導いていく。
ゲームのシナリオライターは悪役令嬢になりましたので、シナリオを書き換えようと思います
暖夢 由
恋愛
『婚約式、本編では語られないけどここから第1王子と公爵令嬢の話しが始まるのよね』
頭の中にそんな声が響いた。
そして、色とりどりの絵が頭の中を駆け巡っていった。
次に気が付いたのはベットの上だった。
私は日本でゲームのシナリオライターをしていた。
気付いたここは自分で書いたゲームの中で私は悪役令嬢!??
それならシナリオを書き換えさせていただきます
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
後宮恋歌――人質妃ですが、守られるだけでは終わりません
佳乃こはる
キャラ文芸
大陸の宗主国・夏。
北の辺境国・胡から人質同然に送られ、百人目の妃として後宮に入った少女・小蘭。
ある夜、彼女は奔放で軽薄に見える皇子・蒼龍と出会う。
だがその仮面の奥には、皇帝となる宿命と、誰にも明かせぬ孤独が隠されていた。
理不尽な運命に翻弄されながらも、自ら選び取る強さを失わない小蘭。
守るために距離を取ろうとする蒼龍。
嫉妬と陰謀が渦巻く後宮で、二人は惹かれ合い、やがて運命そのものに抗い始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる