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悲鳴
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二日目。
ついに始まる。骨肉の相続争いが……
きゃああ。
女性の悲鳴と共に朝を迎える。
「どうしました? 」
目の前には女性の姿が。しかもなぜか下着姿なのだ。まったくの謎。
「どうしたじゃありませんよ。なぜあなた方がここに居るんですか? 」
冷静な対応を見せる女性。そう言えば彼女は確かここのメイドだったような……
「それは…… 私にもちょっと…… 」
どうやら大事件とはいかないらしい。
惜しい。せっかく力を発揮するチャンスだったのに。
いやいや…… 何事も起きないのが一番。難事件が発生したら目も当てられない。
それに当主が殺されては元も子もない。
「もう早く出て行ってください」
どうやら酔ってお隣の部屋へ迷い込んだようだ。
決してわざとではないのに信じてくれない。信じて欲しいな。
部屋に迷い込んだだけでなくベットの中へまで潜り込んでいた。
これでは弁明もできない。痴漢で捕まっても文句は言えない。
いくら酔っていたとしても言い訳にならない。
ただ気になるのはなぜ我々が彼女たちの部屋へお邪魔できたかの一点。
謎は深まるばかりだ。
連れはびくともせずまだベットで夢の中。
私一人で戦うのはあまりに分が悪い。
ここは土下座でも何でもして沈静化を図るのがいい。
どうせ待っても悪化するだけかもしれないし。まあそれはそれ。
目の前には下着姿の女性二人。
私の為に脱いでくれたのではない。
だとすれば一晩中その格好でいたことになる。
暑いからな。それも頷ける。
ジロジロ見るあまり二人は服を着てしまう。
うん。これで少しはまともに会話できるだろう。
「あのお間違いになってますよ。隣の部屋ですよ」
嫌味のようにしつこい。分かってるって。
昨日は酷く酔っており連れにすべて任せて部屋に入った。
だからこれは不可抗力。言い訳に過ぎないのは重々承知の上。
さあ戻るとするか。
青磁の壺が目に止まる。
うーん。どうやら値の張る物のようだ。
後は絵画が一枚。
不気味な青の世界。
これはシュールレアリズムか。
うん。まあこんな物だろう。
「忘れ物! 」
連れが叩き起こされ我々は仕方なく退場するのであった。
本来の部屋に戻る。
ここにも壺が一つ。
今度は白い壺だ。
湖の写真。
それとベットとテレビにトイレ。
窓には絶景が。
ドスグロ山の景色が一望できる。
オーシャンビューならぬマウンテンビュー。
凄い眺めだ。
「おいそろそろ支度をしろ」
寝不足らしくまたベットに横になってる困った奴。
あと一時間もすれば始まるはず。
「さあそろそろ行くぞ」
うんと答えるのみ。
まったく無口で愛想が悪いから困るぜ。
だいたい任せたのに一つもできないってどういうことだよ?
何も話さないから不審がられるし。大丈夫だと言ったくせに部屋を間違える。
それにしてもなぜ俺たちは隣の部屋に侵入できた?
まさか間違えたのはあっちで…… いや有り得ないか。
執念で開けたのか?
まあいいか。細かいことは後回しだ。
午前十時となった。
下に降りる。
どうやら全員揃ったらしい。
さあ始まるぞ。
後は弁護士が読み上げればいいが……
どうも様子がおかしいんだよな。
どこにもバッチを着けたものがいない。
これはどう言うことだ?
弁護士は遅れているとでも言うのか?
仕方がない確認をしよう。
「奥さんご心配なく。旦那さんはきっとご無事ですよ」
「奥さん? 誰ですか? 」
真顔で返される。
「ですからあなたが奥さんですよね」
随分若作りしてるが間違いない。旦那さんの莫大な財産を狙っているうちの一人だ。
これはもはや弁護士も取り込まれているやもしれない。
「いい加減にしてください! 」
なぜか奥さんではなくメイドが怒り出す。
「せっかく昨日助けてあげたのに恩を仇で返すつもりですか? 」
うん? 何を言ってるんだこのメイドは。
メイド頭にでも昇格して浮かれているのか?
まあいい。多少変だが続ける。
「弁護士の先生がまだ来ておりません。しかしもう約束の十時。
僭越ながら私が代わりに今あなた方が置かれている状況を説明します。
脅迫状が届いております。
誰ですか? 少年誌の切り抜きで脅迫状を書いたおバカさんは。
そうあなたですね。次男の次郎さん」
「はああ? 」
まだシラを切ろうとしている。何てふてぶてしいのか。
「そう。あなたはまだ実行してない。脅迫に留まってます。
正直に話し自首することを勧めます」
私の言葉に心を動かされたのか? 単に欠伸が出たのかは定かではないが涙が光る。
「余興はそれくらいで」
メイドが間に入る。
何と失礼な。探偵を馬鹿にして良いことは一つもない。
「失敬な。では本日の主役であるご当主をお呼びください」
困惑した表情の奥さん。まさかもう殺害してしまったのか?
「もう一体何なの? 」
メイドが代わりに呼びに行く。
まったく最近のメイドは口の利き方も知らないようだ。
私は非公式とは言え招待を受けた身。実際は依頼人の代理をしているに過ぎないが。
とにかく落ち着こう。
続く
ついに始まる。骨肉の相続争いが……
きゃああ。
女性の悲鳴と共に朝を迎える。
「どうしました? 」
目の前には女性の姿が。しかもなぜか下着姿なのだ。まったくの謎。
「どうしたじゃありませんよ。なぜあなた方がここに居るんですか? 」
冷静な対応を見せる女性。そう言えば彼女は確かここのメイドだったような……
「それは…… 私にもちょっと…… 」
どうやら大事件とはいかないらしい。
惜しい。せっかく力を発揮するチャンスだったのに。
いやいや…… 何事も起きないのが一番。難事件が発生したら目も当てられない。
それに当主が殺されては元も子もない。
「もう早く出て行ってください」
どうやら酔ってお隣の部屋へ迷い込んだようだ。
決してわざとではないのに信じてくれない。信じて欲しいな。
部屋に迷い込んだだけでなくベットの中へまで潜り込んでいた。
これでは弁明もできない。痴漢で捕まっても文句は言えない。
いくら酔っていたとしても言い訳にならない。
ただ気になるのはなぜ我々が彼女たちの部屋へお邪魔できたかの一点。
謎は深まるばかりだ。
連れはびくともせずまだベットで夢の中。
私一人で戦うのはあまりに分が悪い。
ここは土下座でも何でもして沈静化を図るのがいい。
どうせ待っても悪化するだけかもしれないし。まあそれはそれ。
目の前には下着姿の女性二人。
私の為に脱いでくれたのではない。
だとすれば一晩中その格好でいたことになる。
暑いからな。それも頷ける。
ジロジロ見るあまり二人は服を着てしまう。
うん。これで少しはまともに会話できるだろう。
「あのお間違いになってますよ。隣の部屋ですよ」
嫌味のようにしつこい。分かってるって。
昨日は酷く酔っており連れにすべて任せて部屋に入った。
だからこれは不可抗力。言い訳に過ぎないのは重々承知の上。
さあ戻るとするか。
青磁の壺が目に止まる。
うーん。どうやら値の張る物のようだ。
後は絵画が一枚。
不気味な青の世界。
これはシュールレアリズムか。
うん。まあこんな物だろう。
「忘れ物! 」
連れが叩き起こされ我々は仕方なく退場するのであった。
本来の部屋に戻る。
ここにも壺が一つ。
今度は白い壺だ。
湖の写真。
それとベットとテレビにトイレ。
窓には絶景が。
ドスグロ山の景色が一望できる。
オーシャンビューならぬマウンテンビュー。
凄い眺めだ。
「おいそろそろ支度をしろ」
寝不足らしくまたベットに横になってる困った奴。
あと一時間もすれば始まるはず。
「さあそろそろ行くぞ」
うんと答えるのみ。
まったく無口で愛想が悪いから困るぜ。
だいたい任せたのに一つもできないってどういうことだよ?
何も話さないから不審がられるし。大丈夫だと言ったくせに部屋を間違える。
それにしてもなぜ俺たちは隣の部屋に侵入できた?
まさか間違えたのはあっちで…… いや有り得ないか。
執念で開けたのか?
まあいいか。細かいことは後回しだ。
午前十時となった。
下に降りる。
どうやら全員揃ったらしい。
さあ始まるぞ。
後は弁護士が読み上げればいいが……
どうも様子がおかしいんだよな。
どこにもバッチを着けたものがいない。
これはどう言うことだ?
弁護士は遅れているとでも言うのか?
仕方がない確認をしよう。
「奥さんご心配なく。旦那さんはきっとご無事ですよ」
「奥さん? 誰ですか? 」
真顔で返される。
「ですからあなたが奥さんですよね」
随分若作りしてるが間違いない。旦那さんの莫大な財産を狙っているうちの一人だ。
これはもはや弁護士も取り込まれているやもしれない。
「いい加減にしてください! 」
なぜか奥さんではなくメイドが怒り出す。
「せっかく昨日助けてあげたのに恩を仇で返すつもりですか? 」
うん? 何を言ってるんだこのメイドは。
メイド頭にでも昇格して浮かれているのか?
まあいい。多少変だが続ける。
「弁護士の先生がまだ来ておりません。しかしもう約束の十時。
僭越ながら私が代わりに今あなた方が置かれている状況を説明します。
脅迫状が届いております。
誰ですか? 少年誌の切り抜きで脅迫状を書いたおバカさんは。
そうあなたですね。次男の次郎さん」
「はああ? 」
まだシラを切ろうとしている。何てふてぶてしいのか。
「そう。あなたはまだ実行してない。脅迫に留まってます。
正直に話し自首することを勧めます」
私の言葉に心を動かされたのか? 単に欠伸が出たのかは定かではないが涙が光る。
「余興はそれくらいで」
メイドが間に入る。
何と失礼な。探偵を馬鹿にして良いことは一つもない。
「失敬な。では本日の主役であるご当主をお呼びください」
困惑した表情の奥さん。まさかもう殺害してしまったのか?
「もう一体何なの? 」
メイドが代わりに呼びに行く。
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とにかく落ち着こう。
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