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ハプニング 窒息する唇
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薄曇り山を後にする。
こうして相続争いは当主死亡と言う最悪の結末を迎えた。
すぐさま犯人を確保出来たのがせめてもの救い。
良かったんだか悪かったんだか微妙な状況だが一応の解決を見た。
「おい。あの探偵のガキはどうした? 」
「ええ? 警部が帰るように命令したんでしょう? 」
「ああ目障りだったからな。しかし帰しちまってよかったのかなと思ってよ」
意味深な発言。
「それはもちろん。ああ…… 」
「気付いたか? 奴の言う探偵はたぶんあっちの事件に巻き込まれてるはずだ。
明日にも救出する予定だったからあいつも連れて行けば良かったかなと」
ドスグロ山で起きた連続殺人事件。
現時点で三人が亡くなる異常事態。
「あっちですか」
ドスグロ山連続殺人事件。
通称ドスグロ山の雷人殺人事件。
「難事件になりそうだ。面白くなってきたぜ」
「警部。不謹慎ですよ」
「うるせい! さあここを片付けてさっさと次の現場に向かうぞ」
ドスグロ山。
現在午後五時。夕暮れ時。
「起きてください探偵さん」
耳元で囁くガイドさんについ興奮してしまう。
「うわああ! 」
驚いた振りでどうにかごまかすが気付かれたか?
「もう、探偵さんが起こしてくれって言ったんでしょう? 」
それは相棒に言ったのであって…… ガイドさんに起こされるとは想定外。
思っても見ないハプニングに嬉しいんだか嬉しくないんだか。
まあ嬉しくないはずがないが。ただ現状三人も殺されてる。
ガイドさんがいきなり壺を振り上げて撲殺しないとも限らない。
「ありがとう。でも…… 」
「ふふふ…… 殺されると思った? 」
「ああ…… その口で私の口を塞ぎ窒息死させる気かと思ったよ」
一瞬本気で考えてしまった。恐怖によるものなのかただの願望によるものなのか?
ガイドさんは私の冗談を真に受けて固まってしまった。可愛らしい人だ。
冗談はそれくらいで話を聞く。
「それで何か? 」
「はい実は…… 」
そこで口を噤んでしまう。
「ガイドさん? ガイドさん? しっかりしてください! 」
「怖いんです。また殺人事件が起きるかと思うと堪らなく怖い」
震えている少女のような彼女。二十代後半かと思いきやまさか二十歳そこそこ?
年齢を聞くのも失礼。パンフレットには彼女のプロフィールもあるとのこと。
お婆さんがそんな風に話していた。だが我々は部外者。偶然迷い込んだ哀れな探偵。
興味はあるが突っ込んだ質問はしないのがマナー。
「大丈夫。恨まれるようなことはしてないんだろ? 」
「それはもちろん。でもいつ誰に恨まれてるか分からないし…… 」
疑心暗鬼に陥っている加害者でも被害者でもない我々の協力者であるガイドさん。
あらゆる意味で彼女を守らなくてはならない。
強引に抱きしめて口づけを交わす。
弱っている彼女を落とすのは訳ない。
ただ罪悪感がどうしても消えないが。
「これで大丈夫さ」
「駄目お願い! 」
震える手は冷え切っておりいくら温めようとも無意味。
熱い何かを注入してやるのが一番だが生憎とそこまで大胆ではないのだ。
「用があったんじゃないのか? 」
「そうでした。またなんです」
大事件が起こったと主張する。
一体どう言うことだろうか?
「それが千田さんがもう嫌だと暴れていまして」
販売員の男。確か神経質だとかでバスでも吐いたとか言っていたな。
「彼なら部屋に籠っていたのでは? 」
「はい。ですが急に大声を上げたと思ったら自分は悪くないと何度も。
もう尋常ではありません」
一人で籠ってるから精神がやられるのだ。
皆と一緒にいた方がどれだけいいか早く気づくべき。
「それで未だに暴れてると? 」
「説得をお願いしたいのですが」
「もちろん構いませんよ」
引き受ける。探偵がこの程度のことで怯んでいられない
良い機会だから千田さんからもう少し話を聞くとしよう。
ノックをし中に入れるように説得。
「ああ探偵さんか。俺はもうダメだ。もう終わりだ! 」
縋りつこうとする悪人。
さあ今がチャンス。
千田はどのような秘密を抱えてるのか?
ようやく動機の解明が出来そうだ。
今このチャンスを逃せば決して真相には辿り着けないだろう。
続く
こうして相続争いは当主死亡と言う最悪の結末を迎えた。
すぐさま犯人を確保出来たのがせめてもの救い。
良かったんだか悪かったんだか微妙な状況だが一応の解決を見た。
「おい。あの探偵のガキはどうした? 」
「ええ? 警部が帰るように命令したんでしょう? 」
「ああ目障りだったからな。しかし帰しちまってよかったのかなと思ってよ」
意味深な発言。
「それはもちろん。ああ…… 」
「気付いたか? 奴の言う探偵はたぶんあっちの事件に巻き込まれてるはずだ。
明日にも救出する予定だったからあいつも連れて行けば良かったかなと」
ドスグロ山で起きた連続殺人事件。
現時点で三人が亡くなる異常事態。
「あっちですか」
ドスグロ山連続殺人事件。
通称ドスグロ山の雷人殺人事件。
「難事件になりそうだ。面白くなってきたぜ」
「警部。不謹慎ですよ」
「うるせい! さあここを片付けてさっさと次の現場に向かうぞ」
ドスグロ山。
現在午後五時。夕暮れ時。
「起きてください探偵さん」
耳元で囁くガイドさんについ興奮してしまう。
「うわああ! 」
驚いた振りでどうにかごまかすが気付かれたか?
「もう、探偵さんが起こしてくれって言ったんでしょう? 」
それは相棒に言ったのであって…… ガイドさんに起こされるとは想定外。
思っても見ないハプニングに嬉しいんだか嬉しくないんだか。
まあ嬉しくないはずがないが。ただ現状三人も殺されてる。
ガイドさんがいきなり壺を振り上げて撲殺しないとも限らない。
「ありがとう。でも…… 」
「ふふふ…… 殺されると思った? 」
「ああ…… その口で私の口を塞ぎ窒息死させる気かと思ったよ」
一瞬本気で考えてしまった。恐怖によるものなのかただの願望によるものなのか?
ガイドさんは私の冗談を真に受けて固まってしまった。可愛らしい人だ。
冗談はそれくらいで話を聞く。
「それで何か? 」
「はい実は…… 」
そこで口を噤んでしまう。
「ガイドさん? ガイドさん? しっかりしてください! 」
「怖いんです。また殺人事件が起きるかと思うと堪らなく怖い」
震えている少女のような彼女。二十代後半かと思いきやまさか二十歳そこそこ?
年齢を聞くのも失礼。パンフレットには彼女のプロフィールもあるとのこと。
お婆さんがそんな風に話していた。だが我々は部外者。偶然迷い込んだ哀れな探偵。
興味はあるが突っ込んだ質問はしないのがマナー。
「大丈夫。恨まれるようなことはしてないんだろ? 」
「それはもちろん。でもいつ誰に恨まれてるか分からないし…… 」
疑心暗鬼に陥っている加害者でも被害者でもない我々の協力者であるガイドさん。
あらゆる意味で彼女を守らなくてはならない。
強引に抱きしめて口づけを交わす。
弱っている彼女を落とすのは訳ない。
ただ罪悪感がどうしても消えないが。
「これで大丈夫さ」
「駄目お願い! 」
震える手は冷え切っておりいくら温めようとも無意味。
熱い何かを注入してやるのが一番だが生憎とそこまで大胆ではないのだ。
「用があったんじゃないのか? 」
「そうでした。またなんです」
大事件が起こったと主張する。
一体どう言うことだろうか?
「それが千田さんがもう嫌だと暴れていまして」
販売員の男。確か神経質だとかでバスでも吐いたとか言っていたな。
「彼なら部屋に籠っていたのでは? 」
「はい。ですが急に大声を上げたと思ったら自分は悪くないと何度も。
もう尋常ではありません」
一人で籠ってるから精神がやられるのだ。
皆と一緒にいた方がどれだけいいか早く気づくべき。
「それで未だに暴れてると? 」
「説得をお願いしたいのですが」
「もちろん構いませんよ」
引き受ける。探偵がこの程度のことで怯んでいられない
良い機会だから千田さんからもう少し話を聞くとしよう。
ノックをし中に入れるように説得。
「ああ探偵さんか。俺はもうダメだ。もう終わりだ! 」
縋りつこうとする悪人。
さあ今がチャンス。
千田はどのような秘密を抱えてるのか?
ようやく動機の解明が出来そうだ。
今このチャンスを逃せば決して真相には辿り着けないだろう。
続く
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