ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

文字の大きさ
47 / 122

犯罪被害者の会

しおりを挟む
黒木の口が緩んできた。今がチャンス。
事件解決にはなるべく多くの情報が必要だ。
その為には黒木の協力が不可欠。
犯罪詐欺グループのまとめ役。他の者が知らないことも彼ならきっと……
「他には? どんな些細なことでも構いません」
黒木は上を向き唸り声をあげると再び静かになった。
どうやらまだ悩んでるらしい。

私には分かる。彼は誰かに語りたくて仕方ないのだ。
今まで黙っていたのは漏れるから。
だが沈黙を保てばそれこそ犯人の思う壺。
真犯人の目的がただの皆殺しなのか心からの反省なのか?
とは言えもう三人も殺してしまった以上後戻りはできない。
それこそ千田のように最後まで……

探偵は一応は約束は守る。
必要以上に他の者に話したりはしない。
漏らすなと言われれば従うまで。
ただもちろん警察には洗いざらい吐く。
協力を求められたらやはり従うしかないのが現状。
もし守秘義務を守れと言うなら相談相手は弁護士に。探偵にそんな義務はない。
ただ言うにしても警察が要請した限られた場合のみだから現実的ではないが。

「黒木さん? 」
「他? そうだな。あの山田っておっさんを俺の女が狙っていた」
「それは山田さんで間違いないですね? 」
「なぜかは分からないがもっと大金を引っ張れると思ったんだろうな。
だからあの冴えないおっさんに色目を使った。俺の女だってのにな」
黒木曰く計画の内ではないとのこと。偶然出会った男女らしいが。

「山田さんはあなたの目からどう映りましたか? 」
「ああ、ただの冴えないおっさん。あれのどこがいいのか。
夜の誘いまでしやがった。だがあの堅物は何もしようとしなかったとさ。
まったく俺には理解できないよ。あのおっさんの考えてることが。
部屋をオープンにしてもうすぐにでも男女の関係になるところなんだぜ。
それを断るか普通? あり得ないだろ探偵さんよ? 」
黒木がデリケートな話を振る。どう答えればいいのか迷う。
一般的な話なら断るのはあり得ない。ただ私なら危険過ぎて誘いには乗らない。
それが探偵の振る舞い。どうであれ山田さんは舞い上がっていたのだろう。
いやそれとも分かっていて乗っかったか? まあ彼に直接聞くのが良い。
ただ彼にとって辛い思い出となってしまった。聞いていいものか。
それだけが心配。いい関係になったミサさんが突然亡くなったのだから。

「山田さんは異常だと? 」
「それはそうだろ。計画では子供が出来たと言って金を巻き上げるつもりだった。
まあいつもの悪い癖だな。殺されちまったのも天罰ってところか。可哀想にな」
仲間…… 愛人が殺されたと言うのに可哀想の一言。本当に血も涙もない奴だ。
仲間意識が希薄なのだろうか? 
いや違うか。もう吹っ切れたのだろう。
もはやミサさんを悲しんでいる余裕は彼にはない。

もうこれ以上は勘弁してくれと言うので大人しく戻ることに。
「ああちょっと待ってくれ! 思い出したことがある」
黒木は一体何を?
「実は気になることが一つ。犯罪被害者の会が作られてる。
訴訟を起こそうとしてるようだがまだ準備が整ってないらしい。
騙された奴らが団結して俺たちを狩ろうと。
まったく冗談じゃない。騙される方が悪いのに。無い知恵を絞りやがって! 」
どうやら逃げ切れないと悟り恐怖を抱いてる。
だがそんな情報を黒木はどうやって手に入れたと言うのか?

「犯罪被害者の会? 」
「鑑定士が知らせてくれた。どうもあのメガネの男が口を滑らしたらしい。
だがこの情報も当てになるかどうか。ただのハッタリかもしれないしな」
黒木の話では鑑定士自体は本物なので言い逃れができない状況。
もし事を荒立てて評判を落とせば仕事に差し支える。
犯罪被害者の会はどうやら鑑定士経由で被害の回復を図るつもりだったらしい。

「分かりました。貴重なお話をどうも。警戒を怠らないように。
明日には助けが来ます。それまで油断しないで下さい」
一応は注意をする。
だがこんな奴らを守ってどうしようと言うのだろう。
罪には罰を与えるべきだろう。
黒木の尋問を終える。

彼から思いもよらぬ話が出た。
新情報はまだ他の者に伏せる方がいいだろう。
それはガイドさんだけでなく相棒にも。
それにしても最後の犯罪被害者の会の件は初耳だった。
この会がどれほど事件に関わっているのかも気になるところ。
続けて話に出た龍牙から話を聞くことに。

                 続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~

ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。 兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。 異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。 最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。 やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。 そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。 想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。 すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。 辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。 ※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。 ※8万字前後になる予定です。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。 けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」 侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。 その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。 けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。 揺らぐ心と、重ねてきた日々。 運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。 切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。 最後まで見届けていただければ幸いです。 ※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます にて、親世代の恋愛模様を描いてます。

処理中です...