49 / 122
慰安旅行
しおりを挟む
咳ばらいを三度し語りだす龍牙。
「もう二年前になりますかね。別に色仕掛けでついて行ったのではありません。
ただ強引に勧誘するものだからつい。よくあることです。
あの場所にいたのは亡くなった三人と黒木だけ。
黒木が強引に迫るものだから断り切れずに白い壺を買う羽目に」
「おいくらで? 」
黒木たちがどれだけ吹っ掛けたのか気になる。
「三十万です。でもお金がなくてカードで支払いました」
「三十万? いくら何でも高すぎやしませんか。三十万ですよ? 」
「あの時は高いとかよりもいかにして無事に切り抜けるかしか考えていなかった」
「それで…… 本物だったんですか? 」
壺の価値が本物であればまだちょっと高い買い物した程度。
だがもしこれが偽物なら無価値なものを大金を払ってつかまされたことになる。
「はい鑑定士さんが太鼓判を押してくれましたからね」
「その鑑定士に文句を言いに行って派手にやり合ったって聞いてますが」
「お恥ずかしい。鑑定士の方もどうやら彼らの仲間だったようですね。
そのことに気付いていれば騙されずに済んだのに…… ああ脱線しましたね。
壺の本当の価値は分かりません。あの日帰りに割ってしまいましたから」
ただでさえ高い壺を無理矢理買わされてるのにその壺を壊すとはついていない。
これが偶然なら何てツキのない男となるが……
「それでどうやって偽物だと気づいたと? 」
物がなければ確認のしようがない。
「はい。同じような被害にあった人をネットで見つけたんです。
その人の話では偽物を掴ませて証拠隠滅に壺を壊すと。だから私の時もそうかなと。
その後同様の被害者が何人も現れ話を聞くことに。
壺も女性も手口はどうやら同じ。
これは皆で一致団結し訴えようと弁護士の協力の元犯罪被害者の会を設立しました。
私はその副代表です」
ついに龍牙は認める。
「では奈良さんもそのお仲間? 」
二人は親子でも兄弟でもなくタイプもまるっきり違う。
そんな二人が仲良くなるのはやはりこのような会を通じてだろう。
「まあそうですね…… 」
あっさりと奈良も仲間だと暴露する。
やはり龍牙を突っつくのが手っ取り早い。
「その言い方だと他にもいますね」
「ええっと…… あのお婆さんもそうです。息子だかお爺さんだかが騙されたと。
何度か見かけた覚えがあります。それからマジシャンの方もそうだと聞きました。
それだけじゃない。今度の旅行は実は我々被害者の苦しみを癒す為の慰安旅行。
参加者のほとんどが彼らの被害者になる訳です」
龍牙は淡々と衝撃的事実を語るものだからまるでサイコパス。
やはりどこか狂っているのだろう。色相が悪化してるに違いない。
これはもはや執行対象…… などとふざけたくもなる。
これ以上は話を聞けなかった。
少なくてもこのバス旅はただ偶然集まったのではなく意図されたことになる。
それが真犯人によるものなのは明らか。
だとすればこの後の殺人計画も当然練られているのだろう。
果たして真犯人はどう出てくるのか。
「最後に一つよろしいですか? 」
確認を取る。
「どうぞ。答えられる範囲で」
「壺は偽物だと? 」
「たぶんそうなんでしょう。まったく酷いことをする連中だ」
「では彼らを恨んでいると? 」
「当然ですよ。鑑定士を見つけて怒鳴り込んだんですからね」
「では騙されたことを根に持って殺そうとしたと? 」
「いえそれは違います。いくら何でも殺そうとは思いません。
ただ返してもらえるなら返してもらいたい。ただそれだけです」
合法的に取り返したいだけだと潔白を主張。
「ではあなたは殺すほどは恨んでいないと? 」
「だから何度もそう言ってるでしょう! 信じてくださいよ。私は何もしてない」
一連の殺人を完全否定する。
「分かりました。信じてみます。それよりも真犯人に心当たりありませんか? 」
龍牙は恨みこそあれど人を殺すような愚かしい真似はしないと。
それは彼の性格によるものなのか。この程度では誰も人を殺すことはないのか。
「それもどうかな。会の皆さんは恨んでいますがさすがに殺人を犯すまでは。
私も彼らも殺すほど恨んではいない……
いや待てよ。彼らに殺されたと叫んでいた遺族の方もいたとかいなかったとか」
龍牙は詳しい話を聞いた訳ではないと主張する。
これは犯人を庇っている可能性が高い。
聞き込みを終え黒木と千田の二人を除いた全員を食堂に集める。
さあ最後の夜。
今夜は何としても連続殺人を阻止しなければ。
続く
「もう二年前になりますかね。別に色仕掛けでついて行ったのではありません。
ただ強引に勧誘するものだからつい。よくあることです。
あの場所にいたのは亡くなった三人と黒木だけ。
黒木が強引に迫るものだから断り切れずに白い壺を買う羽目に」
「おいくらで? 」
黒木たちがどれだけ吹っ掛けたのか気になる。
「三十万です。でもお金がなくてカードで支払いました」
「三十万? いくら何でも高すぎやしませんか。三十万ですよ? 」
「あの時は高いとかよりもいかにして無事に切り抜けるかしか考えていなかった」
「それで…… 本物だったんですか? 」
壺の価値が本物であればまだちょっと高い買い物した程度。
だがもしこれが偽物なら無価値なものを大金を払ってつかまされたことになる。
「はい鑑定士さんが太鼓判を押してくれましたからね」
「その鑑定士に文句を言いに行って派手にやり合ったって聞いてますが」
「お恥ずかしい。鑑定士の方もどうやら彼らの仲間だったようですね。
そのことに気付いていれば騙されずに済んだのに…… ああ脱線しましたね。
壺の本当の価値は分かりません。あの日帰りに割ってしまいましたから」
ただでさえ高い壺を無理矢理買わされてるのにその壺を壊すとはついていない。
これが偶然なら何てツキのない男となるが……
「それでどうやって偽物だと気づいたと? 」
物がなければ確認のしようがない。
「はい。同じような被害にあった人をネットで見つけたんです。
その人の話では偽物を掴ませて証拠隠滅に壺を壊すと。だから私の時もそうかなと。
その後同様の被害者が何人も現れ話を聞くことに。
壺も女性も手口はどうやら同じ。
これは皆で一致団結し訴えようと弁護士の協力の元犯罪被害者の会を設立しました。
私はその副代表です」
ついに龍牙は認める。
「では奈良さんもそのお仲間? 」
二人は親子でも兄弟でもなくタイプもまるっきり違う。
そんな二人が仲良くなるのはやはりこのような会を通じてだろう。
「まあそうですね…… 」
あっさりと奈良も仲間だと暴露する。
やはり龍牙を突っつくのが手っ取り早い。
「その言い方だと他にもいますね」
「ええっと…… あのお婆さんもそうです。息子だかお爺さんだかが騙されたと。
何度か見かけた覚えがあります。それからマジシャンの方もそうだと聞きました。
それだけじゃない。今度の旅行は実は我々被害者の苦しみを癒す為の慰安旅行。
参加者のほとんどが彼らの被害者になる訳です」
龍牙は淡々と衝撃的事実を語るものだからまるでサイコパス。
やはりどこか狂っているのだろう。色相が悪化してるに違いない。
これはもはや執行対象…… などとふざけたくもなる。
これ以上は話を聞けなかった。
少なくてもこのバス旅はただ偶然集まったのではなく意図されたことになる。
それが真犯人によるものなのは明らか。
だとすればこの後の殺人計画も当然練られているのだろう。
果たして真犯人はどう出てくるのか。
「最後に一つよろしいですか? 」
確認を取る。
「どうぞ。答えられる範囲で」
「壺は偽物だと? 」
「たぶんそうなんでしょう。まったく酷いことをする連中だ」
「では彼らを恨んでいると? 」
「当然ですよ。鑑定士を見つけて怒鳴り込んだんですからね」
「では騙されたことを根に持って殺そうとしたと? 」
「いえそれは違います。いくら何でも殺そうとは思いません。
ただ返してもらえるなら返してもらいたい。ただそれだけです」
合法的に取り返したいだけだと潔白を主張。
「ではあなたは殺すほどは恨んでいないと? 」
「だから何度もそう言ってるでしょう! 信じてくださいよ。私は何もしてない」
一連の殺人を完全否定する。
「分かりました。信じてみます。それよりも真犯人に心当たりありませんか? 」
龍牙は恨みこそあれど人を殺すような愚かしい真似はしないと。
それは彼の性格によるものなのか。この程度では誰も人を殺すことはないのか。
「それもどうかな。会の皆さんは恨んでいますがさすがに殺人を犯すまでは。
私も彼らも殺すほど恨んではいない……
いや待てよ。彼らに殺されたと叫んでいた遺族の方もいたとかいなかったとか」
龍牙は詳しい話を聞いた訳ではないと主張する。
これは犯人を庇っている可能性が高い。
聞き込みを終え黒木と千田の二人を除いた全員を食堂に集める。
さあ最後の夜。
今夜は何としても連続殺人を阻止しなければ。
続く
0
あなたにおすすめの小説
〈銀龍の愛し子〉は盲目王子を王座へ導く
山河 枝
キャラ文芸
50人もの侍女をクビにしてきた第三王子、雪晴。
次の侍女に任じられたのは、異能を隠して王城で働く洗濯女、水奈だった。
頬に鱗があるため疎まれている水奈だが、盲目の雪晴のそばでは安心して過ごせるように。
みじめな生活を送る雪晴も、献身的な水奈に好意を抱く。
惹かれ合う日々の中、実は〈銀龍の愛し子〉である水奈が、雪晴の力を覚醒させていく。「王家の恥」と見下される雪晴を、王座へと導いていく。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
ゲームのシナリオライターは悪役令嬢になりましたので、シナリオを書き換えようと思います
暖夢 由
恋愛
『婚約式、本編では語られないけどここから第1王子と公爵令嬢の話しが始まるのよね』
頭の中にそんな声が響いた。
そして、色とりどりの絵が頭の中を駆け巡っていった。
次に気が付いたのはベットの上だった。
私は日本でゲームのシナリオライターをしていた。
気付いたここは自分で書いたゲームの中で私は悪役令嬢!??
それならシナリオを書き換えさせていただきます
後宮恋歌――人質妃ですが、守られるだけでは終わりません
佳乃こはる
キャラ文芸
大陸の宗主国・夏。
北の辺境国・胡から人質同然に送られ、百人目の妃として後宮に入った少女・小蘭。
ある夜、彼女は奔放で軽薄に見える皇子・蒼龍と出会う。
だがその仮面の奥には、皇帝となる宿命と、誰にも明かせぬ孤独が隠されていた。
理不尽な運命に翻弄されながらも、自ら選び取る強さを失わない小蘭。
守るために距離を取ろうとする蒼龍。
嫉妬と陰謀が渦巻く後宮で、二人は惹かれ合い、やがて運命そのものに抗い始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる