ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

文字の大きさ
53 / 122

第四の犠牲者

しおりを挟む
二泊三日の楽しいバス旅行。
ドスグロ山のドスグロホテルに滞在しなければこんな悲惨な目には遭わなかった。
誰もが抱く想い。それは飛び入り参加した我々も同じ考え。

ついに四日目の朝を迎えた。
今日こそは全員無事に朝を迎えられたと思ったのに。残念ながら新たな犠牲者が。
毎日一人ずつ殺されている計算だ。
考えたくはないがもしこれ以上下山が遅れれば全滅もあり得る。

とりあえず現場の状況を確認。
鈍器で殴られた痕は生々しく血だまりが広がる。
凶器は例のごとく壺であろうか。まだ断定出来ないが残骸がある以上はほぼ確定。
連続殺人は再び起きた。
第四の被害者は千田。
千田は頭を鈍器で複数回殴打されたことによるショック死だと相棒が見解を述べる。
「他に分かったことは? 」
「もう少し調べないと分からないよ。ただ今は現場を保存すべきかな」
相棒は状況判断が出来ている。数時間後には警察が到着することに。
遅くても昼までには来られるはずだ。
だから余計なことはせずに保存しようと。私も同意見。

とにかく全員を食堂に集めることにした。
被害者はバスツアーで最年少の千田。
ジュエリーの販売員としてこのツアーに参加した詐欺グループの一人。
なぜ彼は殺されたのか?
あれだけ警戒するよう注意したのに自ら鍵を開けたとすれば命を捨てたことになる。
到底あり得ないことだがそうとしか考えられない異常行動。

「お集まりになりましたね。私の見解を述べさせていただきます」
いつものように後を相棒に任せ自分の役割に徹することに。
「残念なことに第四の事件が発生しました。
どんな些細なことでも構いません。気が付いたことがあればお教えください」
冷静に冷静に。だが有り得るのか? これは不可能では?
隙があったとは言え一晩中見張り、人の出入りも確認したのになぜ千田が殺される。
彼が殺される合理的説明をして欲しいものだ。

どう考えたってあり得ない。
徹夜の見回りが無意味だったとでも言うのか?
それとも見回りをする前にすでに殺されていたのか?
いやそれはあり得ない。
ドア越しとは言え確認をした。その時は間違いなく異常なしだった。
それなのに千田は殺されてしまった。
撲殺だとすれば物凄い音がしたはず。少なくても両隣は気づくだろう。
それが昨夜は誰も気づけなかったことになる。いやその前もか。
一体何がどうなっているのやら。
もう自分自身が信用できなくなっている。
真犯人に追い詰められていく感覚。
探偵としてこれ以上の屈辱はない。

夜の見回りに行動制限。警戒するように呼びかけも。
誰も中に入れるなと念も押した。それでも第四の事件は起きた。
撲殺体。これは前の三件と何ら変わらない。
今ガイドさんが警察と連絡を取ってくれている。
警察の早い到着が待たれる。

「これはもう誰にも犯行は不可能なのでは? 」
マジシャンは冷静だ。まるですべて予定通りと言った感じ。それだけに侮れない。
「いえ今回は全員に犯行が可能だったと考えています。
一見監視の目を潜り抜け千田さんの部屋に行くのは不可能に見えますが……
私も人間。眠くもなるしトイレにも。それに三十分ほど監視を緩めていた時間帯も。
だから皆さんに犯行は可能かと思われます」
さすがに従業員の二人には難しいだろうが。
あの騒ぎがあらかじめ予定されていたのなら共犯もあり得るが…… 
とにかく真犯人だ。真犯人さえ捕まえれば誰がどう関わろうと関係ない。
一人だろうと複数だろうと聞きだせばいいのだから。

「それはないんじゃないの探偵さん。私らには無理な話だよ」
お婆さんが噛みつく。
「その根拠は? 」
「だからさあやっぱり密室だったんだろ? 」
「はい確かに…… 」
今回も今まで同様に密室で細工の痕も見られない。
どうやって入ったにしろ鍵が部屋にあれば普通は密室にならない。
だがどうだろう? それでも密室殺人が起きてしまった。
不可能殺人が我々の前に立ち塞がる。
仮に真犯人に行きついても密室の謎を解かない限り事件解決とはならない。


                    続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜

上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■ おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。 母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。 今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。 そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。 母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。 とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください! ※フィクションです。 ※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。 皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです! 今後も精進してまいります!

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍2冊発売中!
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。 だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。 蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。 実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...