52 / 122
仮眠
しおりを挟む
せっかく提案した案も反対多数で否決。
探偵としての経験を活かした大胆な提案だったのに相手にされなかった。
結局何の対策を取ることも出来ずにただ鍵を掛け戸締りを徹底するだけ。
これでは今までと何ら変わらない。
三件とも密室をすり抜けるように起きている。
無策ではどうぞ襲ってくださいと言ってるようなもの。
私の意見に素直に従えばガイドさんたちだって影に怯えることもなかった。
こんな風に抱き着くハプニングだって回避できたはず。
それは確かに悪くはないと思うけれど……
十分経過。
ようやく落ち着いたのか恥ずかしそうに手を離すガイドさん。
「済みません。つい…… 」
分かってくれればそれでいい。
「いいですか二人とも。今はもう誰が狙われるかまったく分からない。
なるべく一人は避けて極力出歩かないように」
おそらく狙われるのは詐欺グループのどちらか。真犯人は犯罪被害者の会の誰か。
それが一番あり得る話。だがこの構図に当てはまらないことだってある。
警戒を怠ってはいけない。
急いで見張りに戻る。
もうすぐ十時になろうとしている。
今のところ人影騒動ぐらいで静かなものだ。
何もないとすぐに眠くなってしまうから軽いトラブルぐらいはあってもいい。
だが願い虚しく不審な物音は聞こえてこない。
聞こえるのは微かなイビキの音ぐらい。
黒木の部屋から聞こえる。
どうやら怖いものなしのようで図々しく熟睡している。
ふあああ…… 私も寝たいよ。探偵とは何と因果な商売なのか。
ブツブツ言いながら見回る。
十二時になり相棒と交代。一時間ほど仮眠をとる。
そして一時過ぎに任務へ戻る。
守りは完璧なはず。
部屋は密室。
人が訪ねることもなく実に静かだ。皆寝たのだろう。
さあもうひと頑張りだ。
四時過ぎに一度物音がしたが相棒がベットから転げ落ちた音らしい。
人騒がせな奴で困る。念のために様子を見る。
「大丈夫だよ。おやすみなさい」
呑気な相棒はそう言うともう夢の世界へ。
私もそろそろ限界。出来れば変わって欲しいものだ。
眠くなった眼を開きどうにか朝を迎える。
日が差してきた。
凍り付いた大地に陽の光が差し込む。
解放されたように明るく輝き始めるドスグロ山。
鳥のさえずりが心地よい。
ああもう朝だ。これで助かったはず。
それから二時間ほど粘り六時過ぎに相棒が姿を見せたので交代。眠ることにした。
これはいい夢が見られそうだ。
探偵として取れる最低限の行動をした。後は相棒に任せておけばいい。
一部屋ずつ直に回っていけないのが情けないがこれが限界だろう。
おやすみなさい。
ひと眠り。
「探偵さん! 探偵さん! 」
眠ったと思ったらすぐに起こされた気がする。
感覚的には一分も経っていない。
だがガイドさんが血相を変え起こしに来た以上随分時間が経ったのだろう。
ノックぐらいして欲しい。いくら鍵もマスターキーもあるとは言えそれが常識では?
ガイドさんの血の気が引いている。まさか何かあったのか?
いやそれはないか。きちんと見張りをした訳だし。
「どうしました? 今何時ですか? 」
時計を確認。針は八時を示していた。
まだ二時間も寝てないよ。眠いのになもう。
ガイドさんの必死の説明をほぼ理解できずにただうんうんと頷く。
「探偵さん聞いてるんですか? 」
ガイドさんはしきりに何か訴えている。
今は眠い。出来れば相棒に頼んでほしいな。
そんな願いが通じることはなく感情任せに騒ぎ立てる。
もう一人加わり余計に騒がしくなった。
最悪なことに相棒まで何か喚きだした。
これはもう真剣に聞いてやる必要があるかな。
と言いつつもうひと眠り。睡眠不足は探偵にとって致命傷。
頭が回らなければただの人。
そろそろ起きなければな。
起こしに来てくれたガイドさんや相棒の姿がない。
やはり何かが起きたのだろう。
あれからどれだけ経ったのか? 寝ていると時間の感覚が分からなくなる。
さっきから遠くで怒声が聞こえる。
異常を知らせる叫び声。
「どうしました? 」
眠い目を擦りながら音のする方へ。
「探偵さん遅いですよ! 早く! 早く! こっちです」
ええっとここは確か千田さんのお部屋。何度も伺ったので記憶に残っている。
「まさか千田さんが? 冗談ですよね? 」
異変を察知した者たちが集まっている。
「ほら確認しな。早くしないか! 」
お婆さんは怒っているようだ。
部屋の中へ。
中には相棒の姿が。
「遅かったね。これだ。また犠牲者が」
相棒が差し示した先には千田の変わり果てた姿があった。
ついに四人目の犠牲者。
続く
探偵としての経験を活かした大胆な提案だったのに相手にされなかった。
結局何の対策を取ることも出来ずにただ鍵を掛け戸締りを徹底するだけ。
これでは今までと何ら変わらない。
三件とも密室をすり抜けるように起きている。
無策ではどうぞ襲ってくださいと言ってるようなもの。
私の意見に素直に従えばガイドさんたちだって影に怯えることもなかった。
こんな風に抱き着くハプニングだって回避できたはず。
それは確かに悪くはないと思うけれど……
十分経過。
ようやく落ち着いたのか恥ずかしそうに手を離すガイドさん。
「済みません。つい…… 」
分かってくれればそれでいい。
「いいですか二人とも。今はもう誰が狙われるかまったく分からない。
なるべく一人は避けて極力出歩かないように」
おそらく狙われるのは詐欺グループのどちらか。真犯人は犯罪被害者の会の誰か。
それが一番あり得る話。だがこの構図に当てはまらないことだってある。
警戒を怠ってはいけない。
急いで見張りに戻る。
もうすぐ十時になろうとしている。
今のところ人影騒動ぐらいで静かなものだ。
何もないとすぐに眠くなってしまうから軽いトラブルぐらいはあってもいい。
だが願い虚しく不審な物音は聞こえてこない。
聞こえるのは微かなイビキの音ぐらい。
黒木の部屋から聞こえる。
どうやら怖いものなしのようで図々しく熟睡している。
ふあああ…… 私も寝たいよ。探偵とは何と因果な商売なのか。
ブツブツ言いながら見回る。
十二時になり相棒と交代。一時間ほど仮眠をとる。
そして一時過ぎに任務へ戻る。
守りは完璧なはず。
部屋は密室。
人が訪ねることもなく実に静かだ。皆寝たのだろう。
さあもうひと頑張りだ。
四時過ぎに一度物音がしたが相棒がベットから転げ落ちた音らしい。
人騒がせな奴で困る。念のために様子を見る。
「大丈夫だよ。おやすみなさい」
呑気な相棒はそう言うともう夢の世界へ。
私もそろそろ限界。出来れば変わって欲しいものだ。
眠くなった眼を開きどうにか朝を迎える。
日が差してきた。
凍り付いた大地に陽の光が差し込む。
解放されたように明るく輝き始めるドスグロ山。
鳥のさえずりが心地よい。
ああもう朝だ。これで助かったはず。
それから二時間ほど粘り六時過ぎに相棒が姿を見せたので交代。眠ることにした。
これはいい夢が見られそうだ。
探偵として取れる最低限の行動をした。後は相棒に任せておけばいい。
一部屋ずつ直に回っていけないのが情けないがこれが限界だろう。
おやすみなさい。
ひと眠り。
「探偵さん! 探偵さん! 」
眠ったと思ったらすぐに起こされた気がする。
感覚的には一分も経っていない。
だがガイドさんが血相を変え起こしに来た以上随分時間が経ったのだろう。
ノックぐらいして欲しい。いくら鍵もマスターキーもあるとは言えそれが常識では?
ガイドさんの血の気が引いている。まさか何かあったのか?
いやそれはないか。きちんと見張りをした訳だし。
「どうしました? 今何時ですか? 」
時計を確認。針は八時を示していた。
まだ二時間も寝てないよ。眠いのになもう。
ガイドさんの必死の説明をほぼ理解できずにただうんうんと頷く。
「探偵さん聞いてるんですか? 」
ガイドさんはしきりに何か訴えている。
今は眠い。出来れば相棒に頼んでほしいな。
そんな願いが通じることはなく感情任せに騒ぎ立てる。
もう一人加わり余計に騒がしくなった。
最悪なことに相棒まで何か喚きだした。
これはもう真剣に聞いてやる必要があるかな。
と言いつつもうひと眠り。睡眠不足は探偵にとって致命傷。
頭が回らなければただの人。
そろそろ起きなければな。
起こしに来てくれたガイドさんや相棒の姿がない。
やはり何かが起きたのだろう。
あれからどれだけ経ったのか? 寝ていると時間の感覚が分からなくなる。
さっきから遠くで怒声が聞こえる。
異常を知らせる叫び声。
「どうしました? 」
眠い目を擦りながら音のする方へ。
「探偵さん遅いですよ! 早く! 早く! こっちです」
ええっとここは確か千田さんのお部屋。何度も伺ったので記憶に残っている。
「まさか千田さんが? 冗談ですよね? 」
異変を察知した者たちが集まっている。
「ほら確認しな。早くしないか! 」
お婆さんは怒っているようだ。
部屋の中へ。
中には相棒の姿が。
「遅かったね。これだ。また犠牲者が」
相棒が差し示した先には千田の変わり果てた姿があった。
ついに四人目の犠牲者。
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる