ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

文字の大きさ
51 / 122

人影

しおりを挟む
皆で一か所に集まり夜を明かすと言う私の提案が賛否分かれ言い争いに発展。
ここに来て反対派が優勢に。それにしても絶対に助かるのになぜ反対するのか?
「私はお婆さんに賛成です。鍵をかければ問題ないのだから一緒の必要はない。
それに真犯人があの二人のどちらかならまったくの無意味」
龍牙が反対に回るだけでなく反対の方向に持って行こうとする。
だが三つとも密室だったことを踏まえれば龍牙の主張は意味をなさない。
「俺も反対だ。誰がこんな奴らと過ごせるかよ! 」
奈良が噛みつく。
「探偵さんには悪いですがそれならば私も反対です」
山田さんも反対に回った。
上手く行きそうだったのにやはり一筋縄ではいかないか。
残りはガイドさんと料理人と相棒。
彼らはどう考えているのだろうか?

「私はどちらでも構いませんが一応は女ですから一緒と言うのはちょっと…… 」
料理人が遠慮がちに意見を言う。絶体反対でもなさそうだが翻すとは考えにくい。
「そうですね。探偵さんには申し訳ないですが皆で過ごすのは現実的ではないかと」
頼りのガイドさんにもそっぽを向かれた。
これは誤算。お客のことを考えれば優先順位は安全になるはずなのに。
本来誰であれ三人も殺されればわらを掴む思いで探偵に縋りつくはず。
こんな状況でも素直に聞き入れないとは人の心は本当に複雑だ。
出来たらワガママを言わずに素直に従ってくれないか。

最後に…… ああ聞くまでもないか。
相棒はどっちでも構わないと欠伸をしながら答える。
相棒さえ説得できない不甲斐なさ。もうどうでも良くなってくる。
「分かりました。皆さんがそうおっしゃるなら好きにしてください。
但し命を狙われようと疑いを掛けられようと自己責任ですからね」
いくら探偵とは言えお願いしかできない。強制はできないのだ。

夕食は静かなものだった。
それぞれ好きな缶詰を選びパックご飯を平らげる。
それで腹が膨れなければ栄養補助食にクッキーとチョコでどうにでもなる。
これは昨夜もそうだし昼も食べた。
明日までの辛抱とは言え飽きつつある。
もちろん贅沢言ってられない。生き延びるためだ。

「うまいうまい! 」
相棒が夢中で貪る。
さすがに奴だって飽きたと思うがそんな素振りを一切見せない。
食べ過ぎで腹痛を起こさなければいいが。
「どうぞこちらも」
情けないことに恵んでもらおうとしている。
「ふう。もういいっす」
一人だけ自由でいい。
私なんか昨日から食欲がないのにこいつはいつも通り。やはり肝が据わっている。
見回すと皆食事を終えようとしている。
私語もせずにただ黙々と食べている中で相棒だけが笑っている。かなり異質な存在。

食事を終えると日課の見回りに。
黒木と千田の部屋を行き来する。
「きゃああ! 」
すぐに悲鳴があがる。まさか何かあったのか?
不安な気持ちを抑え悲鳴の聞こえた方へ。
「どうしました? 」
従業員の二人が指さしながら何事か喚いている。
「どうしたんですか? 」
「影が…… 」
震えた声で変な人影を見たと言い張る二人。
「探偵さんお願い! 」
「ちょっと…… 抱き着くのは…… 」
あまりにも強引なやり口。
「お願い! お願い! 離さないで! 」
一度恐怖を感じるとダメらしい。
影が襲ってくると本気で思ってるらしい。
「落ち着いてください。あれはただの影で実態はありません」
いくら違うと言っても聞き入れようとはしない。
一体何がどうなってるのか?
落ち着くまでそばにいてやることにした。

そう狙われてるのは黒木や千田とは限らない。
真犯人の狙いは彼女たちなのかもしれない。
だからあれほど食堂で夜明けまでと言ったのに聞き入れないから怖い目に遭うのだ。
今からでも遅くない。一緒に。
「もう大丈夫ですよ」
冷静に。冷静に。
彼女たちに危害が加わることはないと説得する。
もちろんそんなこと聞くはずもなくいつまで経っても服を引っ張り離そうとしない。
いつになったら解放してくれるのかな? 見回り中なんだけど。
嬉しいような…… やっぱり嬉しいような……
泣く泣く別れて見回りに戻る。



                  続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。 カナリヤ・ハルデリス カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。 そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。 国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。 それからカナリヤはある事により国外追放されることに… しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか… 壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇 平和な国にも裏があることを皆知らない ☆誤字脱字多いです ☆内容はガバガバです ☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません

処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。 けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」 侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。 その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。 けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。 揺らぐ心と、重ねてきた日々。 運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。 切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。 最後まで見届けていただければ幸いです。 ※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます にて、親世代の恋愛模様を描いてます。

処理中です...