ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

文字の大きさ
54 / 122

疑わしい者

しおりを挟む
千田が撲殺体で見つかった。
ついに連続殺人事件の犠牲者は四人に。
密室殺人の謎はさっぱりだが少なくても真犯人はこの中にいる。

「それに彼の心理を分かってるのかい?
仲間が殺され次は自分かもしれないと言うのにドアを開ける馬鹿がどこにいる?
私だったら絶対に開けないね。それとも被害者はベットで撲殺されたとでも? 」
お婆さんは冷静だ。
「いえそこから離れたドア付近で。たぶん殺害場所もそこだと思われます」
私が確認する前に廊下から部屋を覗いたのだろう。詳細を知っているらしい。

第一発見者は例のごとくガイドさん。
どれだけ運が悪いのだろうか?
似たような惨殺体を何度も見ている。
これではもうトラウマ確定。
それとももうとっくに慣れているとか?
呪われたバス旅行の責任者とは言えこんな体験はしたくないものだ。
同情と愛情が禁じ得ない。

「だとしたら寝ているところを襲われたのでないだろう」
お婆さんは断定する。確かに寝ている時ではない。
ならば被害者を招き入れた形に。物音に気付いて逃げたところを襲われた可能性も。
だがそれなら悲鳴の一つでも聞こえないのはおかしい。
「まさか顔見知りの犯行? 」
「ああ、ただここで言う顔見知りは仲間って意味じゃないかね」
お婆さんは明らかに誘導している。
犯人があらかじめ決まっているかのような物言い。確証でもあるのか?
「顔見知り程度ではなく何度も顔を合わせている仲間であると? 」
「分かって来たね。あんたも」
黒木が怪しいと踏んでいるようだ。私もそれは否定しない。

「ちょっとよろしいですか。本当にそうでしょうか? 」
マジシャンが待ったをかける。
何でもいいから情報を得ようとしたばかりに混乱状態。
「あなたは違うと? 」
「ええ。犯人は恐らく朝だと言ったのでしょう」
マジシャンは四度も第一発見者となったガイドさんを疑っている様子。
当然か。第一発見者を疑えは捜査の基本中の基本。
私の指示に従わず四度目では庇いようがない。

「今は丁度席を外してるところ。皆さんも正直そう思いませんか? 」
いつの間にかマジシャンが場を支配する。
「はい私もそう思います」
龍牙が周りを見ながら手を挙げる。
「俺もそう思うぜ」
奈良が続く。
この二人は示し合わせたかのようにガイドさんに一票を投じる。
「やっぱり怪しすぎるよ。いつも第一発見者なんてさ」
「何だい。いい加減だね」
お婆さんが呆れる。

「現実的にはガイドさんが一番怪しい。違いますか? 」
マジシャンはさも自分が正しいと説得にかかる。
「いい加減にしてください! 」
ついに料理人が立ち上がる。今まで大人しく聞いていたが限界のようだ。
「どうして彼女だと思うのですか? 恨みも何もないただのガイドですよ。
私どもを疑うのは筋違いではありませんか? 」
ただのバスガイドでありお客様の世話係だと主張する料理人。
「あなたは本当に無関係なんですか? 」
鋭い指摘で料理人を困らせるマジシャン。
「それは…… 無関係だとしか言えません」
料理人は何か隠してるのか自信なさげに答える。

「だったらあんたは誰が怪しいと思うんだい? 」
お婆さんが畳みかける。
伝説の小駒さん対料理人の田中さんの女の戦いが始まる。
「それは…… 」
黙ってしまうがそれを許しはしない雰囲気。
「それは誰だい? 」
「怪しい者を一人上げろと言われたら…… あの男の人」
相棒を指名する。
まさか冗談だろ? なぜ相棒が疑われなければならないんだ?
「ちょっとそれはどう言う意味ですか? 」
聞き捨てならない。見た目が怪しいとしても関係ない。
それこそただの部外者。
我々は偶然迷い込んだ哀れな明後日探偵。

相棒が怪しいとはどう言うつもりなのか? 
「ごめんなさい探偵さん。別にあなた方を疑っている訳ではないんです。
お客様も同僚も売れない。そこで目を付けたのが何だか得体のしれない彼だったの。
彼なら条件にもぴったり合う」
すべてが撲殺なら体が大きくて力持ちの相棒が適任。確かに俺も一瞬疑ったことも。
だが有り得ない。そもそもものぐさな相棒が出向いたのも私の命令。
それでも気まぐれを起こし帯同しないことだってあり得た。
今回は相棒の力が必要になるだろうと考えたから誘ったのであって犯人な訳ない。
それは火を見るよりも明らかだ。

「私は相棒を信じます。我々の為に現場検証までしてるんですよ」
「でしたら私も彼女を信じます。あの子がそんなことする訳ない! 」
料理人は一歩も引かない。いつの間にか私と料理人の争いに。
同僚が無実の罪を被せられているのを見ていられないようだ。
「だったら黒木を…… いや擁護できないか」
マジシャンも黒木を疑い始めた。
お婆さんが唱えた黒木犯人説が最有力に。

                    続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~

ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。 兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。 異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。 最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。 やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。 そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。 想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。 すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。 辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。 ※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。 ※8万字前後になる予定です。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

後宮恋歌――人質妃ですが、守られるだけでは終わりません

佳乃こはる
キャラ文芸
大陸の宗主国・夏。 北の辺境国・胡から人質同然に送られ、百人目の妃として後宮に入った少女・小蘭。 ある夜、彼女は奔放で軽薄に見える皇子・蒼龍と出会う。 だがその仮面の奥には、皇帝となる宿命と、誰にも明かせぬ孤独が隠されていた。 理不尽な運命に翻弄されながらも、自ら選び取る強さを失わない小蘭。 守るために距離を取ろうとする蒼龍。 嫉妬と陰謀が渦巻く後宮で、二人は惹かれ合い、やがて運命そのものに抗い始める――。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

処理中です...