ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

文字の大きさ
87 / 122

第一村人

しおりを挟む
危険な第一村人を発見。
ここは礼を言って次の人を探すことに。

それから一キロ。
十分経過したところでお婆さんが走って来る。
お年寄りが走るとはこれはただ事ではない。

ハアハア
ハアハア
「大丈夫ですか? 」
「おう小僧さんかい。ああ、ありがたや。ありがたや」
ここのお年寄りは基本他人のことを小僧と呼ぶふざけた文化が定着しているのか?
失礼なんだからもう。見た目は童顔でもここまで言われたことはない。

「お爺さんが。ひひひ…… 」
苦しくて笑ってるようにしか聞こえない。
一緒に笑ってあげるのが良いのか? そんな訳ないよね。
「どうしたんですかお婆さん? 急いでるみたいですけど」
本当は関わりたくないがせっかくの地元民。温泉宿ぐらい知ってるでしょう。
それに第一村人候補。爺さんの件はなしにしてこのお婆さんが第一村人でいいや。

「あのお爺さんを見んでしたかい。この道を行ったと思うんだがね」
うわ…… これはトラブルの臭い。
どうも二人は夫婦らしい。忘れ物を届けに来たとか。
放ってもおけない。仕方なく引き返す。
お婆さんを連れてお爺さんの元へ。

「おう小僧。何じゃ婆さんを届けてくれたか。これは本当に助かったわ。
もうよい。後は母ちゃんのところに戻ってくれ」
はあはあ疲れた。もう嫌。
「小僧さん助かったよ」
「あのさっきから小僧さん小僧さんって。僕もう立派な大人なんですけど」
つい堪えきれずに訴える。少々大人げなかったかな。でも子ども扱いしてるし。
「あれまあ。人間かいな」
「人間? 小僧って人間じゃないの? 」
変な質問をしてしまった。そもそも小僧の身分なら己を理解してるはず。

「ごめんなさいね。てっきり私はドスグロ山の雷人かと」
ドスグロ山の雷人? ますます意味不明。
お婆さんが訳の分からない話をする。これはまさか……
「ああ儂も。この辺を根城にしてる雷人かと」
これは新手の詐欺では? まさか若者を勧誘する怪しい団体?
今逃げるべきなのか? それとも…… まあ面白そうだから付き合うか。

「さっきからドスグロ山だとか雷人だとか訳が分からないんですが」
「ああごめんよ。巻き込んでしまって」
お婆さんは飴玉を一つ取り出す。
お詫びの印だそうだ。
「いやだから…… 」
だから小僧じゃないって。小僧って飴食うの?

「おうおう何か言いたそうだな? 」
「いえ僕は…… 遠い国から参りました」
取り敢えず自己紹介。これで失礼はない。
いつも先生に目上の者にはしっかり挨拶しなさいと言われている。
それから敬えとも。これくらい常識だと。
常識であり基本。疎かにすれば探偵として成長しないと。
まず常識を知りそして疑う。
これが先生がいつも口を酸っぱくして言っている言葉。
まあどうせ遠回しに尊敬しろとか口答えするなと言いたいのだろうな。
それを直接言わないのが先生の情けないところ。

「おうやはり天界からやって来た小僧さんじゃ」
「ありがたや。ありがたや」
なぜか勘違いされる始末。
いちいち説明するのが面倒。勘違いしたままでもいいか。

「それでお爺さんはどこに向かっていたんですか? 」
疑問はそれだけ。それと温泉の場所を聞いたら別れるつもり。
「実はな小僧さん。この道を真っ直ぐ行くとドスグロ山でな。
儂はそのドスグロ山の専門家。若き頃から良く登っておって詳しい。
それで今都会の者がドスグロ山に閉じ込められたと連絡が来た。
この辺で待ち合わせの予定がどうもまだ来んようだ。

ドスグロ山? 薄雲山の隣の山だっけ。
そう言えば薄雲山に来る車内で聞いたような。
ドスグロ山の雷人だっけ。ただの噂に過ぎないはずだが。
まあ何にせよ僕には関係ない話。

「小僧さんも心配して姿を見せた。もう雷も収まるじゃろ」
誰も近づかせないように雷雨になる噂。
「だから違うって! 」
「ホホホ…… ねえお爺さん」
「まあ人間には明かせないわな。その正体」
もう完全に信じ込んでしまっている。
信じるのは構いませんからせめてその小僧さんの話を真剣に聞いてよね。
いつになったら温泉に辿り着けるんだろう。

             続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...