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変わり身
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「もちろん秘密の扉から」
「何だって! 」
「まあその話はまた後にして続けましょう」
脱線ばかりでいつまで経っても話が進まない。
「黒木さんを無理矢理連れ出し相棒に代わりをしてもらいました。
相棒の方が身長もあり多少違いますがまあ似たようなもの。
こちらの思惑通り間違えてくれたみたいですしね」
絞殺される前に逃れた相棒。奇跡の生還を遂げる。
危うくこのまま夢の世界に閉じ込められるところだった。
「まったく! 死ぬかと思ったよ。本当に人使いが荒いんだから」
相棒は相変わらず眠そうに目を擦る。
人の話をロクに聞かず段取りを忘れ寝てしまう失態。大失態だ。
危険になったら知らせろとあれほど言っておいたのに。
熟睡中にいきなりロープを巻かれては助けを呼ぶのは不可能だろうよ。
仕方なく緊急マニュアル作動。
真犯人がドアに入って五分後にベルを鳴らすようにガイドさんに指示していた。
それを合図に一分後に突入。
もちろん気付かれないようにそれこそ慎重に。
「鍵を開けたら閉めましょうね。次の時の課題に。
ああ、もう次はないのか。ははは……
あなたはもう我々の手の内。逃がしはしません! 」
真犯人は悔しそうにロープを投げつける。
「ほら危ないって。冷静に冷静に」
「ねえ探偵さん。何もこの木偶の坊を代わりにしなくても良かったんじゃないの?
かわいそうじゃないか」
鋭い指摘。確かにそれは言える。もしもの時に命を落とすのは相棒。
その危険性を感じなかった訳ではない。いやもちろん感じたさ。
だが犯人の裏を掻くにはこれしかなかった。
囮に布団や偽物では明かりをつけっぱなしにした部屋では気付かれてしまう恐れが。
いやバレバレ。一瞬で分かること。いくら緊張していても慎重な犯人には通じない。
こちらの仕掛けに気付かれたらせっかくの計画が台無し。
もう一つ。こうせざるを得ない深い訳があった。真犯人が黒木を監視してる恐れも。
監視していれば当然彼が明かりを点けっぱなしで寝る習慣を把握してるはず。
我々も事前に気付いたぐらいだから真犯人だって。
入った時にもし消えていれば違和感を覚え犯行を踏みとどまるかもしれない。
もちろん拾った鍵で中に入ればその時点で御用だが言い逃れも出来る。
出来心で盗みに入ったと苦し紛れの言い訳をすることも。
そうなっては真犯人を追及できなくなる。連続殺人もきっと認めない。
それどころかわざと落としたことを知れば嵌められたと騒ぐかもしれない。
ただ真犯人はそこまでのクズじゃない。ある意味紳士で潔く認めただろう。
しかし我々は探偵。最悪の想定をするのは当然で失敗は出来ない。
だからこの手を使うしかなかった。
危険は承知の上。誰かがやらなければならないこと。
もちろん他にいなければ私だって……
相棒が快く引き受けてくれた。だからすべて任せることにした。
危険だが相棒にはそれくらいのことをやってのけてもらわなければ困る。
「彼には済まないことをしたと」
「本当かい? なら謝りな」
「僕もそうは思うんだけどな…… 」
首を絞められたようだが元気そうで良かった。それほどやわじゃないか。
凶器の壺も事前に回収しておいた。
ナイフや猟銃等の飛び道具を使わないのが真犯人のポリシーと言うかこだわり。
下手に所持してれば見つかる恐れもあるしそもそも準備してこなかっただろう。
どんなマジックにも種も仕掛けもある。ないものは出せない。
だからこそ危険は最小限だと相棒を信じ任せた。
「悪かった。ボーナスをやるから我慢してくれ。これも真犯人を誘き出す為さ」
なるべく危害が及ばないようにと考えたが相棒が話を聞かずに寝てしまうから。
そのせいで危ない目に。相棒と来たらいつもこう。もう少し時と場合を考えろよな。
真犯人目の前に熟睡する奴があるかよ。大胆にもほどがある。
だからこそ真犯人はつい気が緩んでしまったようだが。
「もう分かったよ。ボーナスは忘れないでよね」
相棒は自分の仕事は済んだと勝手に思い込んでるようだけどまだ寝かせない。
奴には手伝ってもらいたいことが山ほどある。
大体犯人確保の時に暴れられたらどうする? その時こそ相棒の出番だ。
もちろんそんな事態にならないようにするのが探偵だが不測の事態も考えられる。
「では真犯人さん。すべての罪をお認めになりますか? 」
真犯人ドスグロ山の雷人は何も発しない。
せめて首を振るなりしてくれないと張り合いがないんだけどな。
それはさすがに要求し過ぎか。
続く
「何だって! 」
「まあその話はまた後にして続けましょう」
脱線ばかりでいつまで経っても話が進まない。
「黒木さんを無理矢理連れ出し相棒に代わりをしてもらいました。
相棒の方が身長もあり多少違いますがまあ似たようなもの。
こちらの思惑通り間違えてくれたみたいですしね」
絞殺される前に逃れた相棒。奇跡の生還を遂げる。
危うくこのまま夢の世界に閉じ込められるところだった。
「まったく! 死ぬかと思ったよ。本当に人使いが荒いんだから」
相棒は相変わらず眠そうに目を擦る。
人の話をロクに聞かず段取りを忘れ寝てしまう失態。大失態だ。
危険になったら知らせろとあれほど言っておいたのに。
熟睡中にいきなりロープを巻かれては助けを呼ぶのは不可能だろうよ。
仕方なく緊急マニュアル作動。
真犯人がドアに入って五分後にベルを鳴らすようにガイドさんに指示していた。
それを合図に一分後に突入。
もちろん気付かれないようにそれこそ慎重に。
「鍵を開けたら閉めましょうね。次の時の課題に。
ああ、もう次はないのか。ははは……
あなたはもう我々の手の内。逃がしはしません! 」
真犯人は悔しそうにロープを投げつける。
「ほら危ないって。冷静に冷静に」
「ねえ探偵さん。何もこの木偶の坊を代わりにしなくても良かったんじゃないの?
かわいそうじゃないか」
鋭い指摘。確かにそれは言える。もしもの時に命を落とすのは相棒。
その危険性を感じなかった訳ではない。いやもちろん感じたさ。
だが犯人の裏を掻くにはこれしかなかった。
囮に布団や偽物では明かりをつけっぱなしにした部屋では気付かれてしまう恐れが。
いやバレバレ。一瞬で分かること。いくら緊張していても慎重な犯人には通じない。
こちらの仕掛けに気付かれたらせっかくの計画が台無し。
もう一つ。こうせざるを得ない深い訳があった。真犯人が黒木を監視してる恐れも。
監視していれば当然彼が明かりを点けっぱなしで寝る習慣を把握してるはず。
我々も事前に気付いたぐらいだから真犯人だって。
入った時にもし消えていれば違和感を覚え犯行を踏みとどまるかもしれない。
もちろん拾った鍵で中に入ればその時点で御用だが言い逃れも出来る。
出来心で盗みに入ったと苦し紛れの言い訳をすることも。
そうなっては真犯人を追及できなくなる。連続殺人もきっと認めない。
それどころかわざと落としたことを知れば嵌められたと騒ぐかもしれない。
ただ真犯人はそこまでのクズじゃない。ある意味紳士で潔く認めただろう。
しかし我々は探偵。最悪の想定をするのは当然で失敗は出来ない。
だからこの手を使うしかなかった。
危険は承知の上。誰かがやらなければならないこと。
もちろん他にいなければ私だって……
相棒が快く引き受けてくれた。だからすべて任せることにした。
危険だが相棒にはそれくらいのことをやってのけてもらわなければ困る。
「彼には済まないことをしたと」
「本当かい? なら謝りな」
「僕もそうは思うんだけどな…… 」
首を絞められたようだが元気そうで良かった。それほどやわじゃないか。
凶器の壺も事前に回収しておいた。
ナイフや猟銃等の飛び道具を使わないのが真犯人のポリシーと言うかこだわり。
下手に所持してれば見つかる恐れもあるしそもそも準備してこなかっただろう。
どんなマジックにも種も仕掛けもある。ないものは出せない。
だからこそ危険は最小限だと相棒を信じ任せた。
「悪かった。ボーナスをやるから我慢してくれ。これも真犯人を誘き出す為さ」
なるべく危害が及ばないようにと考えたが相棒が話を聞かずに寝てしまうから。
そのせいで危ない目に。相棒と来たらいつもこう。もう少し時と場合を考えろよな。
真犯人目の前に熟睡する奴があるかよ。大胆にもほどがある。
だからこそ真犯人はつい気が緩んでしまったようだが。
「もう分かったよ。ボーナスは忘れないでよね」
相棒は自分の仕事は済んだと勝手に思い込んでるようだけどまだ寝かせない。
奴には手伝ってもらいたいことが山ほどある。
大体犯人確保の時に暴れられたらどうする? その時こそ相棒の出番だ。
もちろんそんな事態にならないようにするのが探偵だが不測の事態も考えられる。
「では真犯人さん。すべての罪をお認めになりますか? 」
真犯人ドスグロ山の雷人は何も発しない。
せめて首を振るなりしてくれないと張り合いがないんだけどな。
それはさすがに要求し過ぎか。
続く
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