95 / 122
変わり身
しおりを挟む
「もちろん秘密の扉から」
「何だって! 」
「まあその話はまた後にして続けましょう」
脱線ばかりでいつまで経っても話が進まない。
「黒木さんを無理矢理連れ出し相棒に代わりをしてもらいました。
相棒の方が身長もあり多少違いますがまあ似たようなもの。
こちらの思惑通り間違えてくれたみたいですしね」
絞殺される前に逃れた相棒。奇跡の生還を遂げる。
危うくこのまま夢の世界に閉じ込められるところだった。
「まったく! 死ぬかと思ったよ。本当に人使いが荒いんだから」
相棒は相変わらず眠そうに目を擦る。
人の話をロクに聞かず段取りを忘れ寝てしまう失態。大失態だ。
危険になったら知らせろとあれほど言っておいたのに。
熟睡中にいきなりロープを巻かれては助けを呼ぶのは不可能だろうよ。
仕方なく緊急マニュアル作動。
真犯人がドアに入って五分後にベルを鳴らすようにガイドさんに指示していた。
それを合図に一分後に突入。
もちろん気付かれないようにそれこそ慎重に。
「鍵を開けたら閉めましょうね。次の時の課題に。
ああ、もう次はないのか。ははは……
あなたはもう我々の手の内。逃がしはしません! 」
真犯人は悔しそうにロープを投げつける。
「ほら危ないって。冷静に冷静に」
「ねえ探偵さん。何もこの木偶の坊を代わりにしなくても良かったんじゃないの?
かわいそうじゃないか」
鋭い指摘。確かにそれは言える。もしもの時に命を落とすのは相棒。
その危険性を感じなかった訳ではない。いやもちろん感じたさ。
だが犯人の裏を掻くにはこれしかなかった。
囮に布団や偽物では明かりをつけっぱなしにした部屋では気付かれてしまう恐れが。
いやバレバレ。一瞬で分かること。いくら緊張していても慎重な犯人には通じない。
こちらの仕掛けに気付かれたらせっかくの計画が台無し。
もう一つ。こうせざるを得ない深い訳があった。真犯人が黒木を監視してる恐れも。
監視していれば当然彼が明かりを点けっぱなしで寝る習慣を把握してるはず。
我々も事前に気付いたぐらいだから真犯人だって。
入った時にもし消えていれば違和感を覚え犯行を踏みとどまるかもしれない。
もちろん拾った鍵で中に入ればその時点で御用だが言い逃れも出来る。
出来心で盗みに入ったと苦し紛れの言い訳をすることも。
そうなっては真犯人を追及できなくなる。連続殺人もきっと認めない。
それどころかわざと落としたことを知れば嵌められたと騒ぐかもしれない。
ただ真犯人はそこまでのクズじゃない。ある意味紳士で潔く認めただろう。
しかし我々は探偵。最悪の想定をするのは当然で失敗は出来ない。
だからこの手を使うしかなかった。
危険は承知の上。誰かがやらなければならないこと。
もちろん他にいなければ私だって……
相棒が快く引き受けてくれた。だからすべて任せることにした。
危険だが相棒にはそれくらいのことをやってのけてもらわなければ困る。
「彼には済まないことをしたと」
「本当かい? なら謝りな」
「僕もそうは思うんだけどな…… 」
首を絞められたようだが元気そうで良かった。それほどやわじゃないか。
凶器の壺も事前に回収しておいた。
ナイフや猟銃等の飛び道具を使わないのが真犯人のポリシーと言うかこだわり。
下手に所持してれば見つかる恐れもあるしそもそも準備してこなかっただろう。
どんなマジックにも種も仕掛けもある。ないものは出せない。
だからこそ危険は最小限だと相棒を信じ任せた。
「悪かった。ボーナスをやるから我慢してくれ。これも真犯人を誘き出す為さ」
なるべく危害が及ばないようにと考えたが相棒が話を聞かずに寝てしまうから。
そのせいで危ない目に。相棒と来たらいつもこう。もう少し時と場合を考えろよな。
真犯人目の前に熟睡する奴があるかよ。大胆にもほどがある。
だからこそ真犯人はつい気が緩んでしまったようだが。
「もう分かったよ。ボーナスは忘れないでよね」
相棒は自分の仕事は済んだと勝手に思い込んでるようだけどまだ寝かせない。
奴には手伝ってもらいたいことが山ほどある。
大体犯人確保の時に暴れられたらどうする? その時こそ相棒の出番だ。
もちろんそんな事態にならないようにするのが探偵だが不測の事態も考えられる。
「では真犯人さん。すべての罪をお認めになりますか? 」
真犯人ドスグロ山の雷人は何も発しない。
せめて首を振るなりしてくれないと張り合いがないんだけどな。
それはさすがに要求し過ぎか。
続く
「何だって! 」
「まあその話はまた後にして続けましょう」
脱線ばかりでいつまで経っても話が進まない。
「黒木さんを無理矢理連れ出し相棒に代わりをしてもらいました。
相棒の方が身長もあり多少違いますがまあ似たようなもの。
こちらの思惑通り間違えてくれたみたいですしね」
絞殺される前に逃れた相棒。奇跡の生還を遂げる。
危うくこのまま夢の世界に閉じ込められるところだった。
「まったく! 死ぬかと思ったよ。本当に人使いが荒いんだから」
相棒は相変わらず眠そうに目を擦る。
人の話をロクに聞かず段取りを忘れ寝てしまう失態。大失態だ。
危険になったら知らせろとあれほど言っておいたのに。
熟睡中にいきなりロープを巻かれては助けを呼ぶのは不可能だろうよ。
仕方なく緊急マニュアル作動。
真犯人がドアに入って五分後にベルを鳴らすようにガイドさんに指示していた。
それを合図に一分後に突入。
もちろん気付かれないようにそれこそ慎重に。
「鍵を開けたら閉めましょうね。次の時の課題に。
ああ、もう次はないのか。ははは……
あなたはもう我々の手の内。逃がしはしません! 」
真犯人は悔しそうにロープを投げつける。
「ほら危ないって。冷静に冷静に」
「ねえ探偵さん。何もこの木偶の坊を代わりにしなくても良かったんじゃないの?
かわいそうじゃないか」
鋭い指摘。確かにそれは言える。もしもの時に命を落とすのは相棒。
その危険性を感じなかった訳ではない。いやもちろん感じたさ。
だが犯人の裏を掻くにはこれしかなかった。
囮に布団や偽物では明かりをつけっぱなしにした部屋では気付かれてしまう恐れが。
いやバレバレ。一瞬で分かること。いくら緊張していても慎重な犯人には通じない。
こちらの仕掛けに気付かれたらせっかくの計画が台無し。
もう一つ。こうせざるを得ない深い訳があった。真犯人が黒木を監視してる恐れも。
監視していれば当然彼が明かりを点けっぱなしで寝る習慣を把握してるはず。
我々も事前に気付いたぐらいだから真犯人だって。
入った時にもし消えていれば違和感を覚え犯行を踏みとどまるかもしれない。
もちろん拾った鍵で中に入ればその時点で御用だが言い逃れも出来る。
出来心で盗みに入ったと苦し紛れの言い訳をすることも。
そうなっては真犯人を追及できなくなる。連続殺人もきっと認めない。
それどころかわざと落としたことを知れば嵌められたと騒ぐかもしれない。
ただ真犯人はそこまでのクズじゃない。ある意味紳士で潔く認めただろう。
しかし我々は探偵。最悪の想定をするのは当然で失敗は出来ない。
だからこの手を使うしかなかった。
危険は承知の上。誰かがやらなければならないこと。
もちろん他にいなければ私だって……
相棒が快く引き受けてくれた。だからすべて任せることにした。
危険だが相棒にはそれくらいのことをやってのけてもらわなければ困る。
「彼には済まないことをしたと」
「本当かい? なら謝りな」
「僕もそうは思うんだけどな…… 」
首を絞められたようだが元気そうで良かった。それほどやわじゃないか。
凶器の壺も事前に回収しておいた。
ナイフや猟銃等の飛び道具を使わないのが真犯人のポリシーと言うかこだわり。
下手に所持してれば見つかる恐れもあるしそもそも準備してこなかっただろう。
どんなマジックにも種も仕掛けもある。ないものは出せない。
だからこそ危険は最小限だと相棒を信じ任せた。
「悪かった。ボーナスをやるから我慢してくれ。これも真犯人を誘き出す為さ」
なるべく危害が及ばないようにと考えたが相棒が話を聞かずに寝てしまうから。
そのせいで危ない目に。相棒と来たらいつもこう。もう少し時と場合を考えろよな。
真犯人目の前に熟睡する奴があるかよ。大胆にもほどがある。
だからこそ真犯人はつい気が緩んでしまったようだが。
「もう分かったよ。ボーナスは忘れないでよね」
相棒は自分の仕事は済んだと勝手に思い込んでるようだけどまだ寝かせない。
奴には手伝ってもらいたいことが山ほどある。
大体犯人確保の時に暴れられたらどうする? その時こそ相棒の出番だ。
もちろんそんな事態にならないようにするのが探偵だが不測の事態も考えられる。
「では真犯人さん。すべての罪をお認めになりますか? 」
真犯人ドスグロ山の雷人は何も発しない。
せめて首を振るなりしてくれないと張り合いがないんだけどな。
それはさすがに要求し過ぎか。
続く
0
あなたにおすすめの小説
腹黒薬師は復讐するために生きている
怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。
カナリヤ・ハルデリス
カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。
そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。
国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。
それからカナリヤはある事により国外追放されることに…
しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか…
壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇
平和な国にも裏があることを皆知らない
☆誤字脱字多いです
☆内容はガバガバです
☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
雪嶺後宮と、狼王の花嫁
由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。
巫女として献上された少女セツナは、
封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。
人と妖、政と信仰の狭間で、
彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。
雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~
ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。
兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。
異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。
最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。
やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。
そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。
想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。
すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。
辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。
※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
※8万字前後になる予定です。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる