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第一の現場
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真犯人ドスグロ山の雷人は何の反応も示さない。
せめて首を振るなりしてくれないと張り合いがないんだけどな。
それはさすがに要求し過ぎか。大人しくしてればそれに越したことはない。
「おいお前! 俺に何の不満があるってんだ? 殺されるなんて冗談じゃない! 」
黒木が吠える。弱い犬ほど吠えると言うが彼にも当てはまる。
どんどん顔色が悪くなり仕舞にはぶるぶる震え始めた。
自分に向けられた憎悪にもはや耐えられないのだろう。
いつも傲慢な態度に人を馬鹿にしたような彼も人の子。
しかももう少しで本当に殺害されるところだった。
我々の作戦がなければ…… そう思うと冷静では居られないのだろう。
同情はしないが気持ちは分かる。相棒が襲われたのだ。
黒木は血の気が失せ青白い顔に変化した。
「どうやらまだ犯人だと認めないようですね。証拠は揃ってるんですが」
焦る必要はない。真犯人は目の前にいる。
暴れる様子もなく実に静か。
「それはいくら何でも往生際が悪いよあんた。
ここは素直に認めるのが人間ってものじゃないのかい? 」
人生の先輩小駒さんによる有難いお言葉。真犯人は改心するか?
そんなことで認めるなら第一の被害者が出た時点で名乗り出てるか。
いくら紳士的でもそこは譲れない。
それにこれ以上追い詰めれば何をするか分からない。
その人の元の性格など関係ない。
窮鼠猫を噛むと言うことわざもあるぐらいだから。
慎重にも慎重に。説得するのが一番。
「探偵さんも探偵さんだよ。真犯人がそんな簡単に認めてたら世話ないって。
だってこの連続殺人事件を考えたんだろ? 相当なキレ者だよ。油断できない」
小駒さんも自分で言っておきながら話を変えこちらのせいに。
それはないよ。本当に困った人だ。
まるで沈黙してるかのように動きを見せない真犯人がかなり不気味。
「仕方ありませんね。では第一の事件から見て行きましょう」
否認する犯人。ただ危害を加えようとした事実をどう弁解するのか?
真犯人を含めた生き残った十名で第一の現場へ。
きゃああ!
ぼうっとしたバスガイドさんが気付かずに死体に触れそうになり悲鳴を上げる。
まったくこれで何度目だよ?
常に第一発見者にされたバスガイドさん。
「私もう嫌! 」
何度も何度も第一発見者に。
これも犯人が巧妙に仕組んだトリックの一部なら彼女にはどうしようもない。
「気をつけてください。死体も壺も転がってるんですから」
一応は注意する。遺体にでも触れられては現場保存も何もない。
無造作に置かれた壺は各部屋から集めたもの。
お婆さんの提案で第四の事件の前に戻した。
だが被害者のところや壺をそもそも拒否した者もいて結局第一の現場に放置。
黒木は気にすることなく受け取ったっけ。
壺が壊れないように慎重に。
それから亡骸は一応保存の為見えないように覆われている。
ただ中身が死体だと分かるようになっている。
こんなことでもない限り遺体とご対面。しかも再会するなどあり得ない。
相当レアな体験。臭いも激しい。
そろそろ腐ってきそうで心配だ。
予定では明日の早朝には警察が遺体を回収するはず。まったく当てにはならないが。
それまではこのままの状態で保存するのが探偵の務め。
私だってできれば見たくないし触りたくもない。
もっと言ってしまえば臭いも嗅ぎたくないし同じ空気を吸いたくもない。
それほど忌み嫌うものだ。
まあ誰も好き好んで遺体を置いておく奴は居ないだろう。
相当なマニアックなコレクターぐらいなものだろうか。
もちろんそんな奴はすぐに捕まるだろうがな。
おっと邪魔に。これでは皆が中に入れない。立ち止まらずに先に進む。
「うわわ…… もう戻りましょう」
バスガイドさんは恐怖からか及び腰。
腰を抜かしたトラウマが蘇ったのだろう。
「皆さんお入りになりましたね? 」
念の為に確認する。
一応は人数を数える。
自分を含めて九人。真犯人を含めれば十人いることが分かった。
うん誰も逃げ出してないようだ。
「あなたはなぜ美術商の海老沢氏を最初のターゲットに選んだんですか? 」
うーんと声は出すも答えずにそのまま。
「言いたくないのでしたら私の推理を聞いてください。
そして正しければ頷くなり拍手をするなり反応するように。
なぜか真犯人を好き勝手にさせている。
もう急ぐ必要もない。
とにかくプレッシャーを駆け自白を引き出すべき。
続く
せめて首を振るなりしてくれないと張り合いがないんだけどな。
それはさすがに要求し過ぎか。大人しくしてればそれに越したことはない。
「おいお前! 俺に何の不満があるってんだ? 殺されるなんて冗談じゃない! 」
黒木が吠える。弱い犬ほど吠えると言うが彼にも当てはまる。
どんどん顔色が悪くなり仕舞にはぶるぶる震え始めた。
自分に向けられた憎悪にもはや耐えられないのだろう。
いつも傲慢な態度に人を馬鹿にしたような彼も人の子。
しかももう少しで本当に殺害されるところだった。
我々の作戦がなければ…… そう思うと冷静では居られないのだろう。
同情はしないが気持ちは分かる。相棒が襲われたのだ。
黒木は血の気が失せ青白い顔に変化した。
「どうやらまだ犯人だと認めないようですね。証拠は揃ってるんですが」
焦る必要はない。真犯人は目の前にいる。
暴れる様子もなく実に静か。
「それはいくら何でも往生際が悪いよあんた。
ここは素直に認めるのが人間ってものじゃないのかい? 」
人生の先輩小駒さんによる有難いお言葉。真犯人は改心するか?
そんなことで認めるなら第一の被害者が出た時点で名乗り出てるか。
いくら紳士的でもそこは譲れない。
それにこれ以上追い詰めれば何をするか分からない。
その人の元の性格など関係ない。
窮鼠猫を噛むと言うことわざもあるぐらいだから。
慎重にも慎重に。説得するのが一番。
「探偵さんも探偵さんだよ。真犯人がそんな簡単に認めてたら世話ないって。
だってこの連続殺人事件を考えたんだろ? 相当なキレ者だよ。油断できない」
小駒さんも自分で言っておきながら話を変えこちらのせいに。
それはないよ。本当に困った人だ。
まるで沈黙してるかのように動きを見せない真犯人がかなり不気味。
「仕方ありませんね。では第一の事件から見て行きましょう」
否認する犯人。ただ危害を加えようとした事実をどう弁解するのか?
真犯人を含めた生き残った十名で第一の現場へ。
きゃああ!
ぼうっとしたバスガイドさんが気付かずに死体に触れそうになり悲鳴を上げる。
まったくこれで何度目だよ?
常に第一発見者にされたバスガイドさん。
「私もう嫌! 」
何度も何度も第一発見者に。
これも犯人が巧妙に仕組んだトリックの一部なら彼女にはどうしようもない。
「気をつけてください。死体も壺も転がってるんですから」
一応は注意する。遺体にでも触れられては現場保存も何もない。
無造作に置かれた壺は各部屋から集めたもの。
お婆さんの提案で第四の事件の前に戻した。
だが被害者のところや壺をそもそも拒否した者もいて結局第一の現場に放置。
黒木は気にすることなく受け取ったっけ。
壺が壊れないように慎重に。
それから亡骸は一応保存の為見えないように覆われている。
ただ中身が死体だと分かるようになっている。
こんなことでもない限り遺体とご対面。しかも再会するなどあり得ない。
相当レアな体験。臭いも激しい。
そろそろ腐ってきそうで心配だ。
予定では明日の早朝には警察が遺体を回収するはず。まったく当てにはならないが。
それまではこのままの状態で保存するのが探偵の務め。
私だってできれば見たくないし触りたくもない。
もっと言ってしまえば臭いも嗅ぎたくないし同じ空気を吸いたくもない。
それほど忌み嫌うものだ。
まあ誰も好き好んで遺体を置いておく奴は居ないだろう。
相当なマニアックなコレクターぐらいなものだろうか。
もちろんそんな奴はすぐに捕まるだろうがな。
おっと邪魔に。これでは皆が中に入れない。立ち止まらずに先に進む。
「うわわ…… もう戻りましょう」
バスガイドさんは恐怖からか及び腰。
腰を抜かしたトラウマが蘇ったのだろう。
「皆さんお入りになりましたね? 」
念の為に確認する。
一応は人数を数える。
自分を含めて九人。真犯人を含めれば十人いることが分かった。
うん誰も逃げ出してないようだ。
「あなたはなぜ美術商の海老沢氏を最初のターゲットに選んだんですか? 」
うーんと声は出すも答えずにそのまま。
「言いたくないのでしたら私の推理を聞いてください。
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とにかくプレッシャーを駆け自白を引き出すべき。
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