104 / 122
秘密の抜け穴
しおりを挟む
三〇三号室。第二の事件現場。
ミサさんの遺体を前にしても取り乱さない真犯人。
我々の揺さぶりにも何とか耐えている。
仕方がないか。では次に行くとしよう。
まったく真犯人の奴めどれだけ粘ればいいんだ。
こっちはもうすべて証拠が揃っている。いい加減自白してくれよな。
こうなったらもう言い逃れ出来ない決定的証拠を突きつけるしかない。
「皆さんはこの不気味な絵が気になりませんか? 」
巨大な絵画。黄緑色のカエルがこちらを睨みつけてる。
そう言えばガイドさんは苦手にしていたっけ。
今もなるべく見ないように目を瞑っている。
壁に掛っている迫力のある絵画に注目を向けさせる。
そう言えば食堂の額に飾ってあるイルカの絵も気になっていた。
その近くにはこれまた似たようなクジラの絵が。
「どうですか皆さん? 」
「探偵さん…… 」
ガイドさんは壁の絵の秘密をすでに知っている。
本来だったら彼女に解説してもらいたいが…… 面倒だ一気に行ってしまえ。
「真犯人のあなたはすべて知ってますよね? 」
返事一つ返さない。余裕がないのか笑みは消え視線を合わせようとさえしない。
どうにか取り繕ってるが本当に限界のようだ。そう見えるだけかもしれないが。
この状況でも何か企んでいるとしたら相当な切れ者。
用意周到に殺人計画を進めた奴なら有り得るか。
「では誰でも良いのでその絵の前に立ってください」
「分かったよ。俺が行ってやる」
皆が牽制してるところを黒木が前に出る。
彼も詐欺グループをまとめたリーダーとしての誇りがある。
身勝手だが仲間の恨みを晴らしたいのだろう。意外にも協力的だから助かる。
「では黒木さん慎重にお願いします」
「おお…… 気持ち悪いなこれ。俺の部屋のオタマジャクシと何か関係あるか? 」
「はい。三号室は四号室とペアになっています。
独立したものではなく大きな部屋を二つに分けたと考えればいいかと。
だからこそ鍵も共通。それから…… 」
これ以上は実際に体験してもらった方が早い。
黒木は絵の前に立つ。
「カエルの絵の真ん中辺りを探ってください」
「ああ真ん中だな。どれどれ。ああ? 」
「下の方。下の方をよく探ってください」
苦戦すること三分。ようやく取っ掛かりを見つけた黒木。
「おい何だこれ? ドアみたいなのがあるぞ」
ざわざわ
ざわざわ
新発見に驚愕し言葉を失う者たち。
「ちょっと探偵さん。これはどういうことだい? 」
さっそく小駒さんが噛みつく。
「どうと言われましても…… 見たまんまかと…… 」
「そうだ私の日記がどこかに消えたよ。どこを探してもないんだ。
まさかあんたの仕業じゃないだろうね? 」
余計なことを思い出させてしまった。実際は相棒であって私は関係ない。
説明は後回し。黒木にドアを動かすように指示。
「うん? いやびくともしないぞ。何だこれ? ははは…… 」
興味を示すがただの装飾だと考えてる黒木。
おかしいな。開いてるハズなんだけどな。
そうか黒木を閉じ込めた時に癖で鍵を掛けたんだった。失敗。失敗。
三〇三号室は黒木の監禁場所。
鍵はポケットに入ったまま。
「これを使ってください! 」
ポケットから三号室の鍵を出す。
黒木が遠慮なく奪い取る。
鍵を回すとガチャと言う音がし開錠。
これでほぼトリックの完成。
「黒木さんも覚えてますよね。監禁された時のことを」
「それはまあ。さっきのことだしな。だが目隠しをされていたから詳しくは。
お前に無理矢理押し込まれこの部屋で監禁されていた。まったく良くやるぜ本当に」
「見てください。それが秘密の抜け道です」
黒木は躊躇することなく隣の部屋へ。
即ち自分の部屋に戻る。
「すげえ! これはすげえよ! 」
まるで子供のように行ったり来たりを繰り返す。
「何だこの仕掛けは? 」
騒ぎだすハイテンションの黒木。
「それは元々このホテルの売り。
団体客が多くその実情はお友だちか家族か。
山奥の田舎で鍵をつけていませんでした。
この地方でもお年寄りを中心に家の鍵は夜ぐらいにしか掛けず昼間は無施錠。
近所の者が勝手に出入りし放題。防犯意識など微塵もありません。
いつも顔を合わせるご近所さんばかり。鍵を掛けるのは村の者を信用してない証拠。
最悪村八分にされてしまう。
まあこれは大げさに言いましたが昭和まで残っていた伝統の文化。
平成になってもこの文化は受け継がれていた。
続く
ミサさんの遺体を前にしても取り乱さない真犯人。
我々の揺さぶりにも何とか耐えている。
仕方がないか。では次に行くとしよう。
まったく真犯人の奴めどれだけ粘ればいいんだ。
こっちはもうすべて証拠が揃っている。いい加減自白してくれよな。
こうなったらもう言い逃れ出来ない決定的証拠を突きつけるしかない。
「皆さんはこの不気味な絵が気になりませんか? 」
巨大な絵画。黄緑色のカエルがこちらを睨みつけてる。
そう言えばガイドさんは苦手にしていたっけ。
今もなるべく見ないように目を瞑っている。
壁に掛っている迫力のある絵画に注目を向けさせる。
そう言えば食堂の額に飾ってあるイルカの絵も気になっていた。
その近くにはこれまた似たようなクジラの絵が。
「どうですか皆さん? 」
「探偵さん…… 」
ガイドさんは壁の絵の秘密をすでに知っている。
本来だったら彼女に解説してもらいたいが…… 面倒だ一気に行ってしまえ。
「真犯人のあなたはすべて知ってますよね? 」
返事一つ返さない。余裕がないのか笑みは消え視線を合わせようとさえしない。
どうにか取り繕ってるが本当に限界のようだ。そう見えるだけかもしれないが。
この状況でも何か企んでいるとしたら相当な切れ者。
用意周到に殺人計画を進めた奴なら有り得るか。
「では誰でも良いのでその絵の前に立ってください」
「分かったよ。俺が行ってやる」
皆が牽制してるところを黒木が前に出る。
彼も詐欺グループをまとめたリーダーとしての誇りがある。
身勝手だが仲間の恨みを晴らしたいのだろう。意外にも協力的だから助かる。
「では黒木さん慎重にお願いします」
「おお…… 気持ち悪いなこれ。俺の部屋のオタマジャクシと何か関係あるか? 」
「はい。三号室は四号室とペアになっています。
独立したものではなく大きな部屋を二つに分けたと考えればいいかと。
だからこそ鍵も共通。それから…… 」
これ以上は実際に体験してもらった方が早い。
黒木は絵の前に立つ。
「カエルの絵の真ん中辺りを探ってください」
「ああ真ん中だな。どれどれ。ああ? 」
「下の方。下の方をよく探ってください」
苦戦すること三分。ようやく取っ掛かりを見つけた黒木。
「おい何だこれ? ドアみたいなのがあるぞ」
ざわざわ
ざわざわ
新発見に驚愕し言葉を失う者たち。
「ちょっと探偵さん。これはどういうことだい? 」
さっそく小駒さんが噛みつく。
「どうと言われましても…… 見たまんまかと…… 」
「そうだ私の日記がどこかに消えたよ。どこを探してもないんだ。
まさかあんたの仕業じゃないだろうね? 」
余計なことを思い出させてしまった。実際は相棒であって私は関係ない。
説明は後回し。黒木にドアを動かすように指示。
「うん? いやびくともしないぞ。何だこれ? ははは…… 」
興味を示すがただの装飾だと考えてる黒木。
おかしいな。開いてるハズなんだけどな。
そうか黒木を閉じ込めた時に癖で鍵を掛けたんだった。失敗。失敗。
三〇三号室は黒木の監禁場所。
鍵はポケットに入ったまま。
「これを使ってください! 」
ポケットから三号室の鍵を出す。
黒木が遠慮なく奪い取る。
鍵を回すとガチャと言う音がし開錠。
これでほぼトリックの完成。
「黒木さんも覚えてますよね。監禁された時のことを」
「それはまあ。さっきのことだしな。だが目隠しをされていたから詳しくは。
お前に無理矢理押し込まれこの部屋で監禁されていた。まったく良くやるぜ本当に」
「見てください。それが秘密の抜け道です」
黒木は躊躇することなく隣の部屋へ。
即ち自分の部屋に戻る。
「すげえ! これはすげえよ! 」
まるで子供のように行ったり来たりを繰り返す。
「何だこの仕掛けは? 」
騒ぎだすハイテンションの黒木。
「それは元々このホテルの売り。
団体客が多くその実情はお友だちか家族か。
山奥の田舎で鍵をつけていませんでした。
この地方でもお年寄りを中心に家の鍵は夜ぐらいにしか掛けず昼間は無施錠。
近所の者が勝手に出入りし放題。防犯意識など微塵もありません。
いつも顔を合わせるご近所さんばかり。鍵を掛けるのは村の者を信用してない証拠。
最悪村八分にされてしまう。
まあこれは大げさに言いましたが昭和まで残っていた伝統の文化。
平成になってもこの文化は受け継がれていた。
続く
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる