ドスグロ山の雷人伝説殺人事件 

二廻歩

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ダイイングメッセージ解読

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【ドスグロ山】
血文字でそう書かれていた。
もちろん解読はほぼ完ぺき。
ここで真犯人をちらっと見る。
ふふふ……
笑ってやがる。余裕のつもりか? ただ精神が崩壊したか?
どちらとも取れるから困る。もうそろそろ諦めてもよさそうだが。
完全に追い詰めたはず。それでも告白しようとしない往生際の悪い真犯人。

「どうです皆さん。この暗号が解けますか? 」
雑見氏が我々に託したダイイングメッセージ。
真犯人に気付かれないように体で必死に守った決定的な証拠。
探偵のプライドに賭けて解読し真犯人を追い詰める。
もう最終段階。そうは思うのだがどうも嫌な予感がする。
「俺にはちっとも。早く教えやがれ! 」
痺れを切らした黒木が催促。
もう少し楽しみたかったが予定もあること。

「血文字の分析を頼む」
相棒に分析結果を発表してもらうことに。
これでようやく真犯人が分かる。
この血文字を解明すれば真犯人が。フーダニットは解かれる。
問題はその後に真犯人が大人しくすべてを告白するかどうか。
どうも見てると冷静で我々の下手な脅しではびくともしない感じがする。
うーん…… 嫌な予感がする。これは思いもよらぬ展開が待っている?

「えー遺体は鑑定士の雑見氏で間違いありません。
被害者や犯人の血液型はまだ判明しておらず警察の到着を待つしかない」
相棒はノロノロ話し出した。重要な部分だけでいいんだけどな。
血文字の分析結果を報告しろと言ったはずだが。
「おい木偶の坊。そんなんで分かるのかい? 」
またしても小駒さんの妨害に遭う。
いい加減大人しくしていてくれないかな。
黒木もそうだけど一向に話が前に進まない。

「ドスグロ山。正確には被害者の左側に【ドスグロ】の文字が。
右側に【山】の文字が。
両方とも被害者が残したものとされていたが実際は違うことが判明。
【山】のみが被害者が残したダイイングメッセージ。
それ以外の【ドスグロ】は別の誰かが付け足したものだと分かったよ」

何だって?
うわああ!
相棒の報告に耳を傾けた者から歓声が上がる。
「おいおい嘘だろ? 」
黒木は未だに信じられないと言った様子。そこに小駒さんの余計な一言が加わる。
「ははは…… 無理もないさ。素人には難しい。大体あんたは殺される側だろうが。
いちいち文句ばかり言ってないで大人しくしてな」
小駒さんのお陰でダイイングメッセージを解読できた。だからその点は感謝してる。
だが誰にでも噛みつく癖をどうにかしてもらえれば……
もう少し早く推理が進んで行くんだけどな。
もう時間もない。出来ればこれ以上は邪魔しないで欲しい。

「だってドスグロ山だぜ? 二つが別々に書かれたってどう言うことだよ? 」
「そうだそうだ」
「もう少し分かりやすくお願いします」
観客が騒ぎ出した。
「ああ皆さん落ち着いて。これは前から分かっていたことです」
「探偵さん! 」
「ですから落ち着いて今説明しますから」
明らかに血の色が違っていた。
すべてはダイイングメッセージだと思ってる。まさか付け足したなどとは思わない。
だが確かに真犯人は【山】を見て焦り決定的証拠を残してしまった。
もし今すぐ血を分析出来れば真犯人が誰かすぐに分かるだろう。

「いいですか。真犯人はダイイングメッセージにかなり後から気付いた。
それこそ陽が昇る頃。しかしその頃には恐らく被害者の血は固まってしまっていた。
仕方なく自分の指で血文字を書いた。【ドスグロ】とね。こうして血文字は完成」
【ドスグロ山】
すぐに気づいてれば消すことも出来たし自らの血を使う必要もなかった。
もっと遡れば即死する程強く叩いていれば余計なことをせずに済んだ。
真犯人の気の緩みと言うか落ち度。

「あーもう! まどろっこしいね。ダイイングメッセージの意味を教えてやんなよ」
小駒さんと共にダイイングメッセージの謎を解いたので大体のことを把握している。
もちろん大事なことは伏せたつもりだが。
「なぜ【ドスグロ山】にしたと思いますか? 」
「知るかよ! ここがドスグロ山だからだろ。違うのか? 」
痺れを切らした黒木が騒ぐ。
「確かにそれも一つあります。ですがそんな単純でしょうか。他には? 」
頭の悪い生徒を追い詰めるようで気が引けるが皆に理解してもらう為。
丁寧に分かりやすくを心がける。それには考えてもらうことも必要。

「知るかよ! 早く教えろ! 」
我がままな黒木が我慢できずに怒り出す。


                続く
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