永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

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南米からの贈り物

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彼女と二泊三日のささやかな旅行。
京都、奈良、大阪、愛知と観光名所を巡って地元に戻って来た。
今回の旅ではトナラ―に悩まされることはなかった。
こうして二人の非公式ながらの新婚旅行は終わりを迎える。

夜遅く実家へ。
「ただいま母さん。これ京都土産」
八つ橋と饅頭を手渡す。
「何だい…… ご立派だね。私を置いて一人だけで楽しんだのかい? 」
ただの挨拶だろうが嫌味ったらしくて敵わない。
俺は置いていってもいなければ話してさえもいない。
「いや急遽決まったことだから。次の機会には絶対連れて行くからさ」
こうやってごまかすがどうも乗り気にならない。母さんも本気ではないだろうし。
それに正式な新婚旅行だってまだだ。優先順位はどうしたって低くなる。
でもそろそろどこに行くか決めとかないとな。来年までにハネムーンへ。
それまでに体を絞って鍛えておこう。
母には何かのお祝いの時にでも旅行に誘うのがベスト。
まさか同居するつもりはないよな?
まだ一度も確かめたことがなかった。
恐らく今の彼女なら反対しないだろうが。やっぱりあり得ないよな。

「何だいやっぱり一人旅かい。可哀想にまあ」
「いや彼女と一緒だから」
そう言えば彼女はあまり写真を撮りたがらない。
せっかくの旅行だと言うのに下手な言い訳で逃げる。
写真映りが良くないとか小さすぎて嫌だとか。そんな感じだ。
あれだけ完璧に見える彼女も自分の容姿に自信がないらしい。
俺が可愛いよ。きれいだよと言わないと心配で苦しくなるそう。
本当に変わったな。付き合い当初から百八十度変わった。
まったくの別人に見えるのだから不思議だ。

「ああまだ別れてなかったのかい。先日大喧嘩したって聞いたけど。
あの子はあんたには相応しくないよ」
心配性の母。彼女の粗探しを始める。俺が騙されてると思ってるらしい。
大喧嘩ね…… まあ確かにそう言うこともあった。
だが付き合えばそれくらいのこといくらでも。
いちいち気にしていたら生活できない。
まあ俺はそう言う性格だけど彼女はと言うと突っ走ってしまうタイプ。

「最近その彼女に元気がないんだ。性格も変わったみたいで暗い」
この流れで相談するのもどうかと思うがタイミングも良いことだし。
「変わったって? どんな風に? 」
「それは…… 」
心配しないようにごまかすが逆に変な誤解されてはと思い正直に話す。
俺たちの関係は良好で問題ない。
「とにかく元気がないんだ。それに口数も減った」
「それは心配だね。でもどこも悪くはないんだろ? 」
「うん。優しくなったし綺麗にもなったけど体に異常はない。
俺が毎日調べてるから分かる…… 」
おっとおかしなことを言ってしまったかな。
「ならあんたの気のせいじゃないのかい? 前に顔を見せた娘だろ? 」
覚えていてくれたらしい。
「ああ…… 元気がないから心配なんだ」
彼女のことを思うとこっちまで沈んでしまう。
今の彼女に不満がある訳ではない。ただ前の元気な彼女に戻って欲しい。
あまりに身勝手だと自覚はしてるつもりだ。
「そんなこと心配してないで早く寝な! 明日早いんだろ? 」
母は元気づけるのではなく叱りつける。確かにもう遅いが。
もう十二時を過ぎた。風呂入って明日に備えなくては。

「ああそうだ。荷物が届いてるよ。またガラクタじゃないのかね? 」
南米からの贈り物だと意味不明なことを言う。俺に知り合い居ないけどな。
確かそろそろコパアメリカが…… 
「何だよ。ただの大手の配送会社じゃないか」
「いいから余計な荷物を増やさないでくれ! 狭いんだからね! 」
「これはいわゆる趣味でして…… 」
どうにか言い訳する。
中身は決して知られてはならない秘密のオモチャ。
親世代ではただ誤解するだけだから詳しくは言えない。
どう考えても隠しきれないがその手のことに疎いものだから助かる。
見つかったらやばい代物。危険極まりないブツ。
早く結婚しろと言われてしまう。

荷物を二階へ。
「ああそれから管理費がどうとか更新しろとか書いてあったよ」
勝手に封筒を開ける母。親書なんだけどな。
「分かったよ。後で見ておくから。おやすみなさい」

ふう今日は本当に疲れた。もう寝るとしよう。


                  続く
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