永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

文字の大きさ
27 / 59

お爺さんとの齟齬

しおりを挟む
一人目。
「まあ良かろう。それで儂に何が聴きたい? 」
一通り疑ったところで飽きたのか態度を軟化させる。ようやく機嫌が直ったらしい。
しかしまだ完全には信用されてない。様子見と言ったところ。

疑いの目で見る困ったお爺さん。
警察だと信用されずに説得も効果なし。
やはり一人で来たのがまずかったかな。怪しいもんな。
警察も例に漏れず人手不足。しかも最近はもっとひどく人手不足に拍車が掛かる。
交番に一名いるだけでもありがたいと思って欲しい。
もっと田舎に行けばずっとパトロール中の札が掛けられてるところだって。

「分かりました。前置きはなしで。失踪届を出された方があなた方が怪しいと。
ですから念のためにとお話を伺いにきた次第です。
何かお知りのことがあればお聞かせください」
警察も辛い。どちらの肩入れも出来ない。今ある事実にのみ目を向けるしかない。
もしこれが隣人トラブルであるならばその元を断つ必要がある。
ただ警察が介入すれば余計に拗れる事態に陥ることも。
だから事件に発展するまで手が出せない。
しかし今回は失踪事件なので警察が介入可能。

「儂は詳しくない。儂では力にはなれそうにない」
「でしたらぜひご協力ください」
「気の済むまで勝手にやってくれ」
意外にも素直に応じる。
もう諦めたのか? 潔白だから?

お爺さんに付き添ってもらって部屋を見て回る。
「もうよろしいですかな? 何なら犬小屋も見ますか? 」
何年も放置されたボロボロの犬小屋。そこに愛犬の名前が。
お爺さんとこの家の歴史を感じさせる。
もちろん中には何もありはしないだろう。
閉じ込めるには目立ちすぎるしな。

「分かりました。こちらにはいらっしゃらないようですね」
これで捜索してることになるだろう。
失踪事件で警察が動かないと分かれば地域の信頼を失ってしまう。
そうなってはますます捜査に非協力的になる。
市民と警察は手を取り合って事件解決に取り組んでいくのが理想であり目標。

「警察も暇ですな。訳の分からない話を真に受けて」
お爺さんはここぞとばかりに嫌味を言う。
「ははは…… ではこの方との関係は? 」
昨日しつこく粘っていた男の写真を見せてみる。一種の賭けだ。
「ああこの人か…… 警察も関わらない方がいいよ。
まったく何を考えてるんだろうなあいつは? 」
なぜかイラついてる様子。
「しつこいんだから。勝手に人の家に遊びに来て。
断るのもなんだから優しくしてやったら馴れ馴れしく近づいて来る」
もはや憎しみが見え隠れするほど。男はなぜこんなにも嫌われている?
どうも男の話す内容とこのご老人の話が一致しない。

「実はその方の彼女さんが失踪したそうなんです。心当たりはありませんか? 」
まだ結婚もしておらず今月から同棲を始めると言っていた。
そう言う意味ではめでたい祝福されるべき二人。
だがなぜか突然その一方の彼女が失踪する事件が発生。
不可解な事案なのは間違いない。

「ははは…… あんたはからかわれてるんだよ」
お爺さんは否定的だ。何を根拠にそのようなことを?
「ですが失踪したのは間違いないと。からかいますかね? 」
「失礼だがその女性を見た覚えは? 」
「それは一度もありません」
「だったらどうして失踪したと言える? 」
「はあどうもよく分かりませんが…… 」
「儂は毎日のように来られてノイローゼ気味なんだ。
平穏な日常を取り戻したい」
「あまり上手く行ってないと? 」
「どうしてこうなってしまったのかの。出会った時は好青年だと思ったのに」

「分かりました。それで彼女が失踪した心当たりありますか? 」
「心当たりって…… ああ喧嘩してたよ。随分激しく。これはもうダメだなと」
「それはいつですか? 」 
「先月にショッピングモールでな」
「ショッピングモールと言うのは隣の駅の? 」
どちらの駅からも直線距離は同じぐらいだが無料の送迎バスは隣駅からのみ。
多くの買い物客が訪れると言う大型ショッピングモール。
水が無料だから助かるんだよな。
私もちょくちょく寄らせてもらっている。一度に何でも揃うから便利でいい。
すぐに時間が経つのが玉に瑕ではあるが。

               続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...