変態暗殺令嬢Mは王子を守りたい! 王子暗殺に巻き込まれた女たちのレクイエム 

二廻歩

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会場無事到着

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ポツポツ
ポツポツ
雨の影響でところどころに水が溜まっている。
もう腐りかけていて廃墟と化した天井は雨漏りだらけ。
こんな経験は初めてでついはしゃいでしまう。

「きゃああ! 冷たい! 」
つい大声に。外に響いてしまう。
「もう何をやってるんですかお嬢様? 」
睨みつけるビアンカ。これではすぐに見つかると警告。
分かってますがこれは不可抗力。自分ではどうにもなりません。
雨漏りなどメイドの愚痴でしか出て来なかった。何と言っても私はお嬢様ですから。
慣れてない。雨漏りもじっとするのも声を出さないのも不可能。
それくらメイドなら分かってるはずなのに無理を言う。
ただはしゃいで楽しいのは初めのうちだけ。もう帰りたくなった。

「おいこっちから声がするぞ! 」
まさかの男たち? どうも招待状を狙う輩とは違うらしい。
だとしたら協力を仰いでもいい? ですが危険性はむしろ高い気もする。
「どうする? 」
もう面倒だからビアンカに頼る。私としてはすぐにでもここを抜け出したい。
「落ち着いて下さい。誰も我々の存在を知らない。知られてない。
だから彼らは間違いなく一般の方で決して敵ではありません。
しかしだからと言って信じ切るのも違います。見つかった時に考えましょう」
まだ耐えろと言う。返事さえすれば救いの手を差し伸べるかもしれないのに。
残念ですがここは人生経験のあるビアンカに従うしかない。

「おい雨だぜ。また降って来やがった! 」
そう言うと男たちの声が遠ざかって行く。
どうやら追い払えたらしい。決して敵とは思えないがこれでよかったのでしょう。

それから一時間近く大人しくしてどっぷり夕闇に浸かったところで行動開始。
雨はどうやら上がったらしい。
男たちの話ぶりでは昨日から。今日も昼から振ったり止んだりを繰り返してるよう。
濡れてはせっかくの晩餐会の為に特別に注文したドレスが台無しに。
今着てるこのドレスだって汚れては敵いません。
招待状と共にビアンカに預けている。大事なものはなるべく彼女に。
その方が安心だからと言うので。でも荷物ぐらい持つんだけどな。
どうもビアンカこそメイドが抜けない様子。

ビアンカが安全を確認してから続く。
一歩一歩人の気配がないか確認しながら。
それでも警戒は怠らない。いつでも襲われてもいいように構える。
それでどうにかなる相手とは限らないが。大体人とも限らない。
恐ろしい話。ラクエラについては多少噂を聞いたことがある。
人ならざる者が闇に紛れて跋扈するとか。
つまらない噂でしょうけどここはそれだけ危ない街なのでしょう。
実際短時間に何度襲われたか。宿屋でそうなのだから外はもっと想像できないほど。

ラクエラの夜が始まる。
雨の影響もあるのか通りにはほとんど人が姿を見せない。
もうタイムリミットだと諦めたのだろうか? だとすれば我々の勝利?
果たしてこのまま招待状を手に晩餐会場に向かって良いのか?

そもそもこの血塗られた招待状は私宛ではない。
瀕死の重傷を負い命からがら逃げて来た女性の最後の願い。
それを叶える為にもここまでやって来た。
ただそれでもこのまま招待状に誘われて訪問していいものか?

間もなく晩餐会だと言う時になって急に不安が押し寄せる。
これは私の心の迷い。でも第六感がダメだと告げている。
それでも向かうのはひとえに王子に一目会いたいから。
それ以外の理由は見当たらない。
まさか本気で王子に気に入られるとは思っていない。
私はそこまでバカじゃない。多少は分別がついてるのです。
ああ王子いけません。私を選ぶなどあってはならないのです。ふふふ…… 
つい都合の良いように話を作ってしまう。ああ何て私は愚かしいのでしょう?
反省しないといけません。

こうして我々はついに舞踏会場に足を踏み入れることに。
さあ果たして何が待っているのでしょうか? 嫌な予感しかしない。
もちろん王子が優しく笑顔で出迎えてくれる。きっとそう。
招待状を奪おうとする者たちが気にはなりますがもうここまで来れば一安心。
ビアンカだってきっと全力で守ってくれるに違いありません。
それはお嬢様とメイドではなく姉妹として。

「お前たちは何だ? 」
随分と失礼な男に睨まれる。まさか招待客を追い返すつもり?
でも声も出ない。あれほどの迫力はストでも感じられなかった。
「失礼。我々は招待客でして…… 」
ビアンカは動じない。この程度では屈しない。どんどん前に進んで行こうとする。
「何だお前たちもそうなのか。それにしては身ぎれいな格好をしてるな」
上から下まで舐め回すように見る。何て人なの? 嫌らしい。
私の美貌にひれ伏さない者はいない。だからって失礼じゃない?
仮にも招待客なんだから。早く中に入れなさいよ。

「よし確認する。とりあえず裏に回れ」
どうもおかしい。招待客なのですよ? なぜ正々堂々と表から通さないの?
不愉快を通り越して異常さえ感じる。
果たして本当にこのまま中に入って良いものなのか?
王子は私を選ぶのでしょうか? 
疑念と悩みは尽きずにどんどん不安が増す。

                  続く
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