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蘇る記憶
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翌日さっそく暗号解読にかかる。
「集まれ! 」
手伝ってもらう。
人手は多いに越したことはない。
「誰か分かる奴はいるか? 」
沈黙で返される。
「地図はどうだ? 」
やはり反応が無い。
正確とは限らないがこの島の地図に違いない。
後はこの英語で書かれた部分。
地図と暗号解読に一ヶ月を費やすことに。
博士……
不意に蘇る断片的記憶。
「おい! ゲンジ! 」
「俺のこと? 」
「そうだお前だ! 他に誰がいるって言うんだ。まったく果てしない間抜けめ。使えん!
私が拾わなかったらどうなっていたか。感謝しろよ! 」
感謝しろよ。貢献しろよ。
それが口癖だ。
あれ? なぜか覚えている。不思議なこともあるもんだ。
「あの島を見ろ! 」
「あそこですか? 」
「これから私たちが上陸する」
「ええっ? 」
「空模様が怪しくなってきた。スコールになる前に島に着きたい。急げ! 面舵一杯! 」
言われた通り操作する。
「馬鹿! そっちではない! 」
「でも…… 」
「しっかりしろ! これはお遊びじゃないんだぞ! まったく使えん奴だ! 」
いつものネチネチ作戦。
何が楽しくてこんな虚しいことをしなくちゃならない。
決めた! 宝を見つけた暁には俺は自由になる。
こんな爺にはとっとと退場してもらって俺が宝を独占するんだ。
奴の思い通りにはさせない。
奴の口ぶりからすれば使っても使っても無くなりはしないだろう。
俺が発見して俺が独占して歴史に名を刻むんだ。
そしたら銅像ぐらい建ててもらえるだろうか?
このさえ自分で作ったっていい。
夢が膨らむ。いやただの欲かな。
ははは!
笑いが止まらない。
だが今はその時ではない。
奴について回って隙を突く。
もう宝は目の前だ。
あれ……
いつの間にかおかしくなっていく自分がいる。
財宝の魔力に取りつかれたか?
昼過ぎ。
いつものように髭をそる。そして近くのリンを拾う。
育ち盛りのリン。少し成長した気がする。胸だってほら……
あのヨレヨレの服もそろそろ限界だ。
新しい服をと思うがリンの方がそれを拒否する。
その前に服を調達するのが先なんだが……
ああ……
これ以上成長して欲しくないと思うのはエゴか?
幼く無邪気なリンを失いたくない。
「さあ行くぞ! 」
リンを抱えて青空教室に向かう。
「ええ今日も? 」
「お前らが教えて欲しいって言うから。別に俺は構わないんだぞ」
地図も暗号も分からず手がかり無し。やることもないので暇つぶしに勉強を教えてやることにした。
今日は数学を教える。と言っても基礎の基礎。教科書など無い。
「ほらリン。この問題をやってみろ」
「お兄ちゃん助けて。もうダメ。限界」
「先生だ。先生と呼べ! 」
リンには難しかったかな?
「諦めるなリン! 」
「だって…… 」
「考えるんだ。考え抜く力を鍛えろ! 」
「お兄ちゃんごめん…… 」
「分かる者は? 」
「はい」
「よろしい」
リンの代わりにアイミが答える。
「次はな…… 」
日課を終える。
毎日昼過ぎに起き暗号の解読に時間を取る。その後勝手に授業を始める。
夕方まで続くこともあれば一時間で終わることも。
大体後者が多いが。
「復習を忘れるな! 解散! 」
海で一泳ぎしてから晩飯の確保に動く。
これが最近のルーティンだ。
いつまで続くか分からない果てしない島の生活。
脱出を何度か試したが上手く行くことは無かった。
それもそのはず。
俺には重大な欠点がある。
海が怖いのだ。
恐怖症かもしれない。
高所恐怖症に水への恐怖と。
昔。いや記憶を失う前の俺に何かが起きたのは間違いない。
雨は問題ない。
スコールだって耐え凌げばいい。
海も浅瀬なら怖くない。
だがやはり島を脱出しようと沖に泳ぎ出すと急に体が動かなくなってしまう。
ストップがかかる。
だから崖下の船にも及び腰。他の者に行ってもらった。
この島で生活する分には高い所もない。泳ぎも心配ない。
ある意味では理想的だ。
まあ陸に戻ればよほどのことが無い限り水も高さも問題ないんだが。
翌朝。
「どうだ調子は? 」
「はい。手掛かりがなく焦っているようです」
「そうか…… しかしもうそろそろ限界だぞ」
「あの…… あなたの目的は? 」
「おい! 調子に乗るなよ! お前らなどいつだって消せるんだ。俺が飽きればもうそれで終わりだ」
「分かってます」
「まあいい。確かに不思議だな。俺も実際なぜこのようなことをしているのか分からない。遊びのようなものだ。一種のゲームであり暇つぶし。それももうそろそろ終わりにしようと思う。だが希望もないこともない」
「希望? 」
「新たに発見できれば続けることも可能。永遠に続けることは難しいだろうがな」
「どうしろと? 」
男は答えずに続ける。
「それにはあいつの力が必要だ」
「ゲンジさん? 」
「どうかな? ふふふ…… 」
はぐらかされる。
「本当の意味で宝を探した時お前らの運命が決まる。
そうなれば俺も消えちまうかもな。
まあどっちだっていい。
お遊びを続けるには道具が必要。
どんな遊びも道具が無くては始まらない。
ははは! せいぜい消えないように努力するんだな」
「そうですか…… 」
「どうした? 」
「後悔…… してるんですね? 」
「まあな。罪悪感はある」
「俺も人間だ。お前は知らんが…… 」
「長くなっちまったな。そろそろ行け! 空蝉よ! 」
「はい。畏まりました」
男は姿を消した。
朝焼けの海を眺める少女。
昼まで海で雑用を済ませコテージに戻る。
ゲンジさん。ごめんなさい……
【続】
「集まれ! 」
手伝ってもらう。
人手は多いに越したことはない。
「誰か分かる奴はいるか? 」
沈黙で返される。
「地図はどうだ? 」
やはり反応が無い。
正確とは限らないがこの島の地図に違いない。
後はこの英語で書かれた部分。
地図と暗号解読に一ヶ月を費やすことに。
博士……
不意に蘇る断片的記憶。
「おい! ゲンジ! 」
「俺のこと? 」
「そうだお前だ! 他に誰がいるって言うんだ。まったく果てしない間抜けめ。使えん!
私が拾わなかったらどうなっていたか。感謝しろよ! 」
感謝しろよ。貢献しろよ。
それが口癖だ。
あれ? なぜか覚えている。不思議なこともあるもんだ。
「あの島を見ろ! 」
「あそこですか? 」
「これから私たちが上陸する」
「ええっ? 」
「空模様が怪しくなってきた。スコールになる前に島に着きたい。急げ! 面舵一杯! 」
言われた通り操作する。
「馬鹿! そっちではない! 」
「でも…… 」
「しっかりしろ! これはお遊びじゃないんだぞ! まったく使えん奴だ! 」
いつものネチネチ作戦。
何が楽しくてこんな虚しいことをしなくちゃならない。
決めた! 宝を見つけた暁には俺は自由になる。
こんな爺にはとっとと退場してもらって俺が宝を独占するんだ。
奴の思い通りにはさせない。
奴の口ぶりからすれば使っても使っても無くなりはしないだろう。
俺が発見して俺が独占して歴史に名を刻むんだ。
そしたら銅像ぐらい建ててもらえるだろうか?
このさえ自分で作ったっていい。
夢が膨らむ。いやただの欲かな。
ははは!
笑いが止まらない。
だが今はその時ではない。
奴について回って隙を突く。
もう宝は目の前だ。
あれ……
いつの間にかおかしくなっていく自分がいる。
財宝の魔力に取りつかれたか?
昼過ぎ。
いつものように髭をそる。そして近くのリンを拾う。
育ち盛りのリン。少し成長した気がする。胸だってほら……
あのヨレヨレの服もそろそろ限界だ。
新しい服をと思うがリンの方がそれを拒否する。
その前に服を調達するのが先なんだが……
ああ……
これ以上成長して欲しくないと思うのはエゴか?
幼く無邪気なリンを失いたくない。
「さあ行くぞ! 」
リンを抱えて青空教室に向かう。
「ええ今日も? 」
「お前らが教えて欲しいって言うから。別に俺は構わないんだぞ」
地図も暗号も分からず手がかり無し。やることもないので暇つぶしに勉強を教えてやることにした。
今日は数学を教える。と言っても基礎の基礎。教科書など無い。
「ほらリン。この問題をやってみろ」
「お兄ちゃん助けて。もうダメ。限界」
「先生だ。先生と呼べ! 」
リンには難しかったかな?
「諦めるなリン! 」
「だって…… 」
「考えるんだ。考え抜く力を鍛えろ! 」
「お兄ちゃんごめん…… 」
「分かる者は? 」
「はい」
「よろしい」
リンの代わりにアイミが答える。
「次はな…… 」
日課を終える。
毎日昼過ぎに起き暗号の解読に時間を取る。その後勝手に授業を始める。
夕方まで続くこともあれば一時間で終わることも。
大体後者が多いが。
「復習を忘れるな! 解散! 」
海で一泳ぎしてから晩飯の確保に動く。
これが最近のルーティンだ。
いつまで続くか分からない果てしない島の生活。
脱出を何度か試したが上手く行くことは無かった。
それもそのはず。
俺には重大な欠点がある。
海が怖いのだ。
恐怖症かもしれない。
高所恐怖症に水への恐怖と。
昔。いや記憶を失う前の俺に何かが起きたのは間違いない。
雨は問題ない。
スコールだって耐え凌げばいい。
海も浅瀬なら怖くない。
だがやはり島を脱出しようと沖に泳ぎ出すと急に体が動かなくなってしまう。
ストップがかかる。
だから崖下の船にも及び腰。他の者に行ってもらった。
この島で生活する分には高い所もない。泳ぎも心配ない。
ある意味では理想的だ。
まあ陸に戻ればよほどのことが無い限り水も高さも問題ないんだが。
翌朝。
「どうだ調子は? 」
「はい。手掛かりがなく焦っているようです」
「そうか…… しかしもうそろそろ限界だぞ」
「あの…… あなたの目的は? 」
「おい! 調子に乗るなよ! お前らなどいつだって消せるんだ。俺が飽きればもうそれで終わりだ」
「分かってます」
「まあいい。確かに不思議だな。俺も実際なぜこのようなことをしているのか分からない。遊びのようなものだ。一種のゲームであり暇つぶし。それももうそろそろ終わりにしようと思う。だが希望もないこともない」
「希望? 」
「新たに発見できれば続けることも可能。永遠に続けることは難しいだろうがな」
「どうしろと? 」
男は答えずに続ける。
「それにはあいつの力が必要だ」
「ゲンジさん? 」
「どうかな? ふふふ…… 」
はぐらかされる。
「本当の意味で宝を探した時お前らの運命が決まる。
そうなれば俺も消えちまうかもな。
まあどっちだっていい。
お遊びを続けるには道具が必要。
どんな遊びも道具が無くては始まらない。
ははは! せいぜい消えないように努力するんだな」
「そうですか…… 」
「どうした? 」
「後悔…… してるんですね? 」
「まあな。罪悪感はある」
「俺も人間だ。お前は知らんが…… 」
「長くなっちまったな。そろそろ行け! 空蝉よ! 」
「はい。畏まりました」
男は姿を消した。
朝焼けの海を眺める少女。
昼まで海で雑用を済ませコテージに戻る。
ゲンジさん。ごめんなさい……
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