夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

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ゲンジじゃないよ! ゲンシだよ!

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「いやあ。済まんがこれはバカンスなんかではない」
「宝探しだ! 」
ついに狂ってしまったか?
発明には時間も金もかかる。
俺の口から言うのは憚られるが博士は計算ができない人だ。
簡単に借金を抱える。
だから当然苦しい。
本来バカンスする余裕などないはずだ。
最初から違和感があった。

「バカンスではないのですか? 」
「若いなあ君は。何年私に仕えて来たのかね。もうそろそろ私を理解してくれると思っていたが…… 」
騙される方が悪いと勝手な理論。
ふざけた奴だ。
「帰りますよ博士」
「ふふふ…… 残念だったね。もう遅い。どうやって帰るんだ? 」
「博士…… 」
「サメさんにでも送ってもらう気か」
もう周りは海。遠くの方に港らしきシルエットが見える。
嵌められた。
「どうするかね? 帰ってもいいんだよ」
「仕方ないなあ。分かりましたよ。協力しますよ」
「よしそれでこそ助手だ」
憎たらしいほどの笑顔を浮かべる。
「これで満足ですか? 」
「ああ」
「それでどこに向かっているんですか? 」
「それは言えない! 着いてからのお楽しみだ」
とにかく切り替えるしかない。

「お宝なんて本当にあるんですか? 」
「それはある。私のプライドにかけて」
もうそれ以上話すこともないのでゆっくり外を見る。
ゴオオオ!
潮風が顔に当たる。
ああ気持ちいい。だが強すぎないか。
「うん。絶好調。このまま晴れが続くといいがな」
呑気なものだ。まったく騙しやがって……
「おい! ラジオ! 」
無線ラジオを渡す。
「まずいな。明日は大荒れになりそうだ。嵐が来るらしい」
「そうですか…… 」 
大して興味が無い。
「急ぐぞ! 明日の昼までに着かんといかん」
「そうですか…… 」
素っ気なく応える。
「ゲンジ君! 聞いているのかね? 」
「あの…… すいません。俺はゲンジじゃなくてゲンシ。いつになったら覚えてくれるんですか? 」
「そんなことはどっちでもいい! 私がゲンジと言えば君はゲンジだ! 」
「それはないっすよ」
不満を述べる。
しかしまったく聞き入れてくれない。困った爺だ。
船はスピードを上げる。
危険は承知で突っ込む。
暴走ドライバー。
爺の運転は荒くていけない。
こうして泣く泣く宝さがしに加わることになった。

現在。
ようやく思い出せた。
なぜ今まで忘れていたのか?
それにしてもあの爺はまったく……
バカンスと偽って俺に宝さがしを手伝わせるとはふざけた爺さんだ。

どこからか声がする。
「お兄ちゃん! 」
元気よく走ってきて胸にダイブ。
「リン…… 」
「お兄ちゃん。心配したんだよ」
「嘘を吐け! だったらなぜ姿を見せない? 」
「ごめんねお兄ちゃん…… でも…… できることとできないことがある…… 」
「おいおい。大したことじゃないだろう…… 」
リンは涙を流す。
どういうことだろう?
俺が悪いのか? それとも……
頭を撫で優しく抱きしめてやる。
「リンはいい子だ。姿を見せなかったんじゃない。見せられなかったんだ。そうだろ? 」
「お兄ちゃん…… 」
勝手に都合よく解釈。
「歩こうか」
リンと海岸沿いを歩く。
すると今まで隠れていたかのように突然姿を現す少女たち。
「ゲンジ! 」
亜砂がいた。
それだけではない。
泳いでいたのか海から上がってくる二体のマーメイド。
「お前らいつの間に? 」
アイミとムーちゃんが手を振る。
これで四人揃った。後は一人。
コテージから声がする。
慌てて外に行ったので確認していなかったが空蝉が隣の部屋で待機していたらしい。
少しのハプニングぐらい乗り越えられる。
疑う心を鎮め話を聞く。

「それではさっそく始めよう」
暗号解読にかかる。
もうほぼ解けている。だが最後の一歩まではいけていない。
「このローマ字の意味分かる奴? 」
『FL』
「さあ? 」
亜砂の頭に違和感。
「どうしたそれ? 」
「へへへ。いいでしょう。作ったんだあ」
白のビキニを彩る花飾り。
「いいなあ。リンも…… 」
「自分で作れば? 簡単だよ」
「ガキっぽい」
アイミがからかう。
「それどうやって作ったんですか? 」
空蝉が興味を示す。
和服には合わないだろう。
しかし…… 待てよ。
「亜砂! どこで手に入れた! 」
「何だゲンジも興味あるんだ。でもねえ男の人には似合わないんじゃない」
「いいから教えろ! 」
「もう。分かった。着いてきて」

リンゴやブドウに似た果物や南国の草花が生い茂る一画に到着。
「ここから好きな花や葉を取って」
亜砂は一枚ちぎってやって見せる。
「リンもほら」
人の手によって作られた果樹園の一画。
今は誰も住んでいないがその跡が残っている。
たまに来ては管理しているのかもしれない。
博士に聞けばその辺のことも詳しく教えてくれるだろう。
博士…… 今どこにいるんですか?

「ほらできた」
花飾りの完成。
リンは嬉しさの余り飛び跳ねる。
「どうどう? お兄ちゃん! 」
「待ってリン! ゆっくり。花飾りが壊れる」
「そうか! 」
「どうしたのゲンジ? 」
アイミが怪訝そうにこちらを見る。
「分かったんだよ! 暗号の意味が。あのローマ字の意味がさ」
「FLだっけ」
「そうこれはFLOWERのことなんだ」
「花ってこと? 」
「だからここがFLだ! 」
                
                      【続】
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