夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

文字の大きさ
29 / 61

登頂

しおりを挟む
博士はちっとも分かってくれない。
どうしたら理解してくれるのか。
助手は助手なのか? 人間ではないのか?
博士は俺をあくまで助手として扱う。
対等な関係を築こうとは一切考えてないらしい。
「分かった分かった。分かったよ! 」
博士が折れた?
「何が分かったんですか? 」
「君の苦労も知らないで悪かった。これでいいか? 」
口だけだ。やはりちっとも理解しようとしてくれない。
憎たらしい。何の反省も後悔もしてないと見える。
ただ改善の見込みもありそうだ。
「だったら形で示してくださいよ」
「しかし私ももう年だ。こういう力仕事は若い者に任せるのが一番だ」
確かに……
結局博士に乗せられてしまう。
しまった! うまいこと丸め込まれた。

「重いよ! 」
「もうすぐだ! 」
「まだですか? 」
「ほら見えてきた」
結局博士は何も持ってはくれなかった。
発掘道具を抱え上を目指す。
「どうだね。あそこが頂上だ」
「あれですか? 」
見えるか!
適当に合わせる。
荷物が重すぎて下しか見えない。
そもそも博士が邪魔をしている気がする。
「うん。ここからだいたい一キロってところかな」
まだだいぶある。
半分を過ぎた辺り。
ただ勾配は激しいが回り道をしないため時間のロスは少ない。
登山開始から一時間少々。目前に迫った頂上。
どんどん息が荒くなる。
「ほらダッシュ! 」 
先に到着した博士のスパルタ。
無茶を言いやがる。
ゼイゼイ
ハアハア
「息が上がって言葉にならない」
「急げ! 」
「くそ! 助手だと思ってこき使いやがって今に見てろ! 」
博士への恨みをパワーに最後の力を振り絞る。

「着いた! 」
「ようやくか。遅いぞ! 」
「もうダメ! 」
荷物を放って地べたに這いつくばる。
「おいみっともないぞ! 」
「誰も見てませんよ。無人島なんだから」
「口答えするな! 」 
「はいはい」
「早く準備に取り掛かれ! 」
息が切れ体力も失われ動くことさえ不可能なのに無茶言いやがる。
「五分休憩お願いします」
「仕方がない。認めてやろう。五分間だけだぞ」
山小屋が見える。
いつ頃からあったのかは定かではないがどうやら最近まで管理されていたようだ。
博士はいつの間にか姿を消していた。寛いでやがるな。
山小屋は小さくすぐに満杯となりそうだ。
多くても五人が限度だろう。

缶詰で体力を回復。
水分補給を忘れない。
これで熱さでどうにかなることは無いだろう。
荷物からも解放され体力も回復した今、景色を楽しむ余裕も出てきた。
「うわ! 」
突風が吹いた。危うくバランスを崩し落ちそうになる。
危ない危ない。
足がすくむ。
高いのはやはり苦手だ。
とりあえずあまり下を見ないように辺りを見回す。
絶好のスポット。
北は緑から海となっている。
東は緑一色。建物の一部が見える。
南と西は青一色。海が見えるのみ。
双眼鏡を持ってくればよかった。
もしかしたら何か見えるかもしれない。
息を吸う。
うーんいい気持ち。
太陽は直接当たるものの高度が高い為涼しい。
錯覚だろうか?
とりあえず手を口に添える。
「ヤッホー! ヤッホー! 」
「おい。いつまで休んでるんだ! 」
恥ずかしい所を見られてしまった。
「いいから早くしろ! 」
「くだらないことしてる暇があったら体を動かせ! 」

発掘開始!
「ちょっと待ってください。本当にここにあるんですか? 
「ああ。暗号を解読した結果ここが一番可能性が高い」
「本当かなあ…… 」
「ブツブツ文句を言わずにやるんだ! 」
「へいへい」
「全てを掘り返すつもりでやれ! 」
「博士は? 」
「私は山小屋で作戦を練る」
また楽な方を選びやがった。人の苦労も知らないでまったく……
「そんなこと言わないで一緒に頼みますよ」
スコップを渡す。
渋々手に取り掘り返す博士。
ただ闇雲に掘り返すばかりで深さも分からなければ目印もないのでは徒労に終わることは目に見えている。
もちろんそんなことは分かっている。
だが発掘作業とは本来そう言うものだ。
当たりをつけてもカケラ一つ見つからないことが往々にしてある。
だがあきらめてはいけない。
仮になくてもなかったことを発見したのは大きい。
失敗したら別の場所を探せばいい。

ザクザク
ザクザク
「ありませんね」
「こっちも全滅だ」
太陽が沈み始めた。
「どうしましょう博士? もう帰りますか? 」
「馬鹿を言うな! 」 
「でも…… 」 
「今夜はここで泊まるぞ! 」
「ええっ? 冗談がきついっすよ」
「嘘でも冗談でもない! もともと宝さがしに来たんだからな」
「分かってますよ…… 」
ようやく慣れてきた寝場所を変えられるのは辛い。
環境は最悪。
博士は気にしていないようだが埃だらけで雑魚寝するのはちょっと……

缶詰を開ける。
甘辛だれの豚肉。
空腹にはもってこい。一瞬で腹の中へ。
「まったく少しは味わえ! 」
博士の小言は無視。無視。
仕方なく山小屋で一泊。
博士と仲良く雑魚寝。
埃臭く息も詰まりそうだがそんなことを考える暇も無く夢の中へ。

                      【続】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...