夏への招待状 失われた記憶と消えゆく少女たち 無人島脱出お宝大作戦

二廻歩

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悪意 狙われたゲンジ

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とりあえず山へ向かう。
「ゲンジ。前に気をつけて」
亜砂が後ろに引っ付く。
「お兄ちゃん。早く! 」
リンが先頭を引っ張る。
リンで本当に大丈夫か? 不安になる。
今日は暑さも収まり登山にはもってこい。
絶好のハイキング日和。

トラブル発生。
「ゲンジさん手を貸してください」
ムーちゃんが立ち止まり助けを求める。
「どうした? 」
「足をくじいたみたい」
「どれ見せてみろ」
「うん。何ともないが」
登山中に異常があっては危険だ。
足が動くか確認。
「どうだ? 」
「はい。足はこの通り」
大きく蹴り上げて確認。
ムーちゃんの色白のほっそりした足にどうしても目が行ってしまう。
「ゲンジさん危ない! 」
空蝉の叫びと同時に衝撃が走る。
ムーちゃんのキックがクリーンヒット。
坂道を転げ落ちる。
「うわああ! 」
「ゲンジさーん! 」
ふう危なかった。
もう少しで滑落するところだった。
危ない危ない。
生い茂る雑草に救われる。
枝を掴み態勢を立て直す。

「ごめんなさいゲンジさん…… 」
「ムーちゃんのせいじゃないよ」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
ムーちゃんは涙を溜める。
「大丈夫だって。さあもう少しで頂上だ」
油断してしまった。
少しの気の緩みが大惨事に繋がる。
気をつけなくては。
「惜しい! 」
「うん。何か言った? 」
「いえ。怪我はありませんか? 」
「ああ。大丈夫」

頂上に到着。
山小屋を確認。
うん。特に変わったところはなさそうだ。
ヤッホー!
ヤッホー!
「おい。遊びじゃないんだからな」
「ゲンジもどう? 」
「まったく…… 仕方ないな」
「ほらもうちょっと近づいて」
「いやこれ以上は危険だよ」
足が止まる。
「なあリン」
「お兄ちゃん! 」
リンは勢いよく飛び込んできた。
「危ない! 」
両手でしっかり捕まえる。
「何をやってる! 危ないだろう? 」
「だって…… 」
「ゲンジさん大丈夫でしたか? 」
「ああ。俺は高所恐怖症だからこれ以上近づけないんだ」
「なーんだ。つまんないのお兄ちゃん」
「こらリン! 」
やはりわざと?
狙われている気がする。
俺が何をした?
まさかリンまで俺を…… 考え過ぎか?

下山。
山小屋には変わった点はなかった。
山を去りFL地点までやって来た。
「さあ急ぐぞ! 」
「ちょっと待ってゲンジ」
アイミが呼び止める。
「ねえ。デザートにココナッツでもどう? 」
「俺に登れと? 」
「ううん。疲れたんじゃない? そこで見てて」
「ああ。頼んだぞ」
「リンお願い」
リンが木を揺らす。
ココナッツが勢いよく降ってくる。
「うわ止めろ! 」
足元に落下。続けてもう一つ。
危うく脳天を直撃するところだった。
「リン止めろ! 」
「大丈夫だよお兄ちゃん」
「まったくもう…… 」
ココナッツを仲良く分ける。

うん? 何だこれ? 切れ目がある。
この鋭い切り口は一体?
「失敗しちゃった…… 」
「何か言ったか? まあいいや帰ろう」
「そうだ。せっかくだから釣りでもしない? 」
亜砂の提案。
「ゲンジさんどうします? 」
「そうだな。一時間ぐらいならいいか」
「先に行くよお兄ちゃん」
リンがはしゃぐ。
「待ってよリン」
亜砂が追いかける。
まったく何やってんだか。
魚が逃げるはずもない。
急ぐ必要などないのに……
いやもしかすると何かある?

二人が迎える。
「お兄ちゃんはここだよね」
リンがお気に入りの場所を覚えていてくれた。
「リン…… 」
このごつごつした岩場。
この辺りが絶好のポイント。
天気も悪くない。
昨日に比べて涼しく波も穏やか。

さあ釣るぞ!
釣り道具は持って帰るのが面倒なので岩場の影に隠してある。
錆びついたり持っていかれたりしないか心配もあるがそうなったらまた作り直せばいい。
「リン。そこのを取ってくれ! 」
「ごめんお兄ちゃん。手が離せないよ。引いてるの」
「本当かよ…… まあいいか」
どれどれずいぶん大きそうだな。引きが強い。
リンだけでは心もとない。
「リン…… 」
「重いよ! 」
「手伝ってやろうか? 」
「お願い! 」
「よし! 」
うわああ!
つるつると滑る岩場。
ほぼ毎日通っているがここまで滑ることは無かった。
「危ない! 」
「大丈夫お兄ちゃん? 」
「どうなってやがるんだここは? 」
「リン子供だから分かんない…… 」

見物客が寄ってきた。
「ゲンジ! 」
「おい。ここは滑りやすいぞ気をつけろ! 」
一応注意してやる。
「大丈夫ですか」
「ああ。ちょっと滑っただけだ」
まるでワックスをかけたばかりのようだ。
いくらつるつると滑る岩場とは言えこれはおかしい。
「おい! 」
「大丈夫ゲンジ? 」
心配はしてくれるが決して白状しようとはしない往生際の悪い連中。
滑って頭を打ち付け危うく死ぬところだった。
気をつけなくてはいけない。
しかしこれが偶然ならば仕方ないが悪意を持った者による犯行であれば対策の取りようがない。

リンが格闘すること十五分。
大物を釣り上げる。
「リン! 凄いぞ」
「お兄ちゃんのおかげだよ」
リンは照れる。
教えた甲斐があったと言うものだ。
「さあ帰るぞ! 」
「これどうする? 」
「そうだな。内臓を取り出したら豪快に焼くか」
「毒なんかないですよね? 」
ムーちゃんの表情が曇る。
「大丈夫。毒なんてないって。ねえゲンジ」
アイミは適当に言うが見たこともない魚。
毒はなさそうだが断定はできない。
「大丈夫だって心配しすぎだよ。何ならゲンジに毒見してもらったら」
俺…… ? 冗談ではない。
これも罠なのか?

料理の得意な空蝉に任せ宴の準備を始める。

                    【続】
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