26 / 124
手掛かりを求めて
しおりを挟む
死の接吻。
「気をつけるのだぞ! 接吻されたらもうどうにもならない。一時間以内にこの世界を脱出しないと永遠に閉じ込められてしまう」
恐ろしい。
「では元国王。橋にはどのように行けばよろしいのでしょうか? 」
爺をおだてていい気分にしてから話を聞く方が有益な情報が得られるはず。
「それが儂にも…… 」
「ちょっと元国王! 」
今度は厳しく対応。爺を追い詰める。
「良かろう仕方がない。まず川を探すのだ」
川? この近く川など存在するの?
「川の流れる方を南。要するに北から南に川は流れているはず。大体だがな。南の終着点まで行き東に折れる。そこから北に戻って最後に西に行けば橋だ。」
「えっと…… 」
ガムが素早く書き取る。
「大雑把過ぎる! 」
「仕方がなかろう。儂も話に聞いただけ。実際に行ったこともなければ考えたこともなかった。目印があるはず。よく探すのだ! 」
まだ大事なことを隠している気がするが…… もっと追及すべきだろうか?
「まずいですよ。そろそろ夜明けです」
ガムが騒ぎ出した。
「どうしよう…… 」
「心配するな。誓いの接吻までに探し出せばいいのだ。王子を拒絶し続ければ危険はない」
まだ完全には信用できないけど言ってることは間違っていない。
「さあ早く戻るのだ! 悟られては元も子もないぞ」
爺と別れる。
「ここの鍵も頼んだぞ」
抜け目のない爺。いや国王様か。
夜明けになる前に部屋に戻る。
ふうう…… 助かった。
もう眠いよ。
コンコン
コンコン
疲れと緊張から解放されたせいかよく眠れた。もうお昼近く。
王子がいつものブランチのお誘いにやって来た。
「ステーテル。どうした具合が悪いのか? 」
「いえ。申し訳ありません。今すぐに支度します」
「あれ君は? 君も行くの? 」
ガムが同行。王子と二人っきりは危険と判断。お願いして着いてきてもらった。
王子に気付かれないように探すのは不可能。ガムの協力が不可欠。
「王子様」
村人からの信頼は厚い。まだ子供だと言うのに見かけによらず惹きつけるものがあるのだろう。
「さあここだ」
昨日とも一昨日とも違った家。
「これは王子様。いらっしゃい」
「いつものを頼むよ」
「俺の料理は大雑把だからな…… お嬢さんたちのお口に合うか心配だ。ガハハハ! 」
豪快に笑う主人。
仕込みを終え準備完了。
なぜか皿を持ち出す。
「あの…… 」
「ああ心配ないよ。ちょっと歩くけどね」
「さあここだ。ここ」
リバーサイドにシートを敷く。
目の前の白い花を見ながらのブランチ。お洒落と言うか派手と言うか。
「春にはこの辺は桜が咲き誇りそれはきれいだよ。今はまあこの白い花でも愛でるるといいよ」
男が手料理を振る舞う。
意外と几帳面なのか手を川で洗う。だがその後がいけない。濡れた手をポケットに入れる。服で拭くなんて……
これでは大胆な料理にも期待はできそうにない。
「王子! 」
ガムが王子の相手をしている隙に単独行動を開始。
ちょうどいい具合に川がある。
急いで脱出方法を探さなくちゃ。
川の流れる方に沿って歩みを進める。
「おーい! ステーテル! 」
王子の声。
どうやら迷子になったと思っているらしい。急がなければ。
こっちでいいのよね。それから……
流れが緩やかになった。
近い。
どう言う構造かは不明だがせき止められている箇所に辿り着いた。
ここだ。ここで間違いない。
終着点。
後は東の方に行けばいい。
何か目印のようなものがあればいいのだけど。
像?
河童の銅像がある。
頭には皿を乗せこちらを睨んでいる化け物。全体的に緑なのが特徴。
一匹二匹……
親子の像だろうか。
これが目印? まさかねえ……
あの元国王の言っていたことが本当ならもう間もなく出口にぶち当たるはず。
どうする?
「おい! そこで何をしている? 」
銅像にばかり気を取られ近づく者を警戒していなかった。
「あれ…… お前は脱走した…… 」
「ええっ? 」
見覚えがあるような無いような……
シーンジャット初日に世話になった女性。
「ステーテルだったか? さあ戻りなさい! 」
まずい! どうしよう……
再び捕まってしまうのか?
続く
「気をつけるのだぞ! 接吻されたらもうどうにもならない。一時間以内にこの世界を脱出しないと永遠に閉じ込められてしまう」
恐ろしい。
「では元国王。橋にはどのように行けばよろしいのでしょうか? 」
爺をおだてていい気分にしてから話を聞く方が有益な情報が得られるはず。
「それが儂にも…… 」
「ちょっと元国王! 」
今度は厳しく対応。爺を追い詰める。
「良かろう仕方がない。まず川を探すのだ」
川? この近く川など存在するの?
「川の流れる方を南。要するに北から南に川は流れているはず。大体だがな。南の終着点まで行き東に折れる。そこから北に戻って最後に西に行けば橋だ。」
「えっと…… 」
ガムが素早く書き取る。
「大雑把過ぎる! 」
「仕方がなかろう。儂も話に聞いただけ。実際に行ったこともなければ考えたこともなかった。目印があるはず。よく探すのだ! 」
まだ大事なことを隠している気がするが…… もっと追及すべきだろうか?
「まずいですよ。そろそろ夜明けです」
ガムが騒ぎ出した。
「どうしよう…… 」
「心配するな。誓いの接吻までに探し出せばいいのだ。王子を拒絶し続ければ危険はない」
まだ完全には信用できないけど言ってることは間違っていない。
「さあ早く戻るのだ! 悟られては元も子もないぞ」
爺と別れる。
「ここの鍵も頼んだぞ」
抜け目のない爺。いや国王様か。
夜明けになる前に部屋に戻る。
ふうう…… 助かった。
もう眠いよ。
コンコン
コンコン
疲れと緊張から解放されたせいかよく眠れた。もうお昼近く。
王子がいつものブランチのお誘いにやって来た。
「ステーテル。どうした具合が悪いのか? 」
「いえ。申し訳ありません。今すぐに支度します」
「あれ君は? 君も行くの? 」
ガムが同行。王子と二人っきりは危険と判断。お願いして着いてきてもらった。
王子に気付かれないように探すのは不可能。ガムの協力が不可欠。
「王子様」
村人からの信頼は厚い。まだ子供だと言うのに見かけによらず惹きつけるものがあるのだろう。
「さあここだ」
昨日とも一昨日とも違った家。
「これは王子様。いらっしゃい」
「いつものを頼むよ」
「俺の料理は大雑把だからな…… お嬢さんたちのお口に合うか心配だ。ガハハハ! 」
豪快に笑う主人。
仕込みを終え準備完了。
なぜか皿を持ち出す。
「あの…… 」
「ああ心配ないよ。ちょっと歩くけどね」
「さあここだ。ここ」
リバーサイドにシートを敷く。
目の前の白い花を見ながらのブランチ。お洒落と言うか派手と言うか。
「春にはこの辺は桜が咲き誇りそれはきれいだよ。今はまあこの白い花でも愛でるるといいよ」
男が手料理を振る舞う。
意外と几帳面なのか手を川で洗う。だがその後がいけない。濡れた手をポケットに入れる。服で拭くなんて……
これでは大胆な料理にも期待はできそうにない。
「王子! 」
ガムが王子の相手をしている隙に単独行動を開始。
ちょうどいい具合に川がある。
急いで脱出方法を探さなくちゃ。
川の流れる方に沿って歩みを進める。
「おーい! ステーテル! 」
王子の声。
どうやら迷子になったと思っているらしい。急がなければ。
こっちでいいのよね。それから……
流れが緩やかになった。
近い。
どう言う構造かは不明だがせき止められている箇所に辿り着いた。
ここだ。ここで間違いない。
終着点。
後は東の方に行けばいい。
何か目印のようなものがあればいいのだけど。
像?
河童の銅像がある。
頭には皿を乗せこちらを睨んでいる化け物。全体的に緑なのが特徴。
一匹二匹……
親子の像だろうか。
これが目印? まさかねえ……
あの元国王の言っていたことが本当ならもう間もなく出口にぶち当たるはず。
どうする?
「おい! そこで何をしている? 」
銅像にばかり気を取られ近づく者を警戒していなかった。
「あれ…… お前は脱走した…… 」
「ええっ? 」
見覚えがあるような無いような……
シーンジャット初日に世話になった女性。
「ステーテルだったか? さあ戻りなさい! 」
まずい! どうしよう……
再び捕まってしまうのか?
続く
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる