推しの推し 嫉妬に狂って殺されたい!

二廻歩

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視線

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会長選挙は多数決で僕になるだろう。
別に立候補もしてないんだけど推薦されては仕方がない。
重い腰を上げて前向きに検討してみるかな。

「大田原さんは何で僕を選んでくれたの? 」
実際はなぜ選んだのかと恨み節ではあるがそこはまず置いて行こう。
そもそも二人のどっちかで確率は五分だからな。楽なものだ。
「理由ですか…… 」
そう言って数分は意識を失っていたのか動きがない。
もしかしたら一分ぐらいだったのかもしれないが僕にはとても長く感じた。
体感では十分弱ってところかな。

「大田原さん? 」
「特にこれと言った理由はなく先輩が消去法で会長に」
どうも彼女の言ってることが理解できない。理由がないなら選ぶなよ。
何となく適当ってそんないい加減な気持ちで投票されて堪るか。
「もう一人が休みがちだから」
どうにかそれらしい理由を付け加える。でもこれでは全然嬉しくない。

光は画家特有の病弱体質だから三回に一回は休む計算。
今はまだ辛うじて三年の先輩がいるからどうにか体裁は保ってられる。
もし来年にでもなれば大田原さんと二人っきりに。
別に嫌ではない。ただそうなった時に何を話せばいいのか…… 自信がない。
新入生が入れば別だがその望みは薄い。まあ来年のことはどうでもいいか。
今は僕を選んでくれた彼女に感謝の気持ちを伝えたい。

「ちなみに僕の名前は? 」
光は親友だし先輩は誘ったぐらいだから当然だとして彼女はそうではない。
とは言えここまで楽しく一緒にやって来た仲間だ。
当然覚えてる。覚えてるに決まってるさ。
「はい」
ほらやっぱり。簡単過ぎるよな。

「それで? 」
「覚えてます」
そう言うだけでまったく山田と発してくれない。
なぜだ? やはり僕は忘れられやすい名前で存在なのか?
自信なくなるな。どうしてこうも記憶に残らないのだろう?
「落ち込まないでくださいよ山田会長! 」
もしも自分がなったら面倒だからと煽てる。何だ覚えてるじゃないか。
しかし次期会長候補なだけでまだ来年の話。早くてもお正月を過ぎてから。
三学期から新体制が発足するはずだ。その時は彼女が副会長。
だって光は彼女が言うように休みがちで不適切だから。

「ちなみに下の名前って分かる? 」
自信がないのでつい大田原さんを困らせてしまう。
だが眼鏡を光らせるだけ。答えようとしない。
「やっぱりそうだよね。うん。僕って存在感ないんだ。会長も相応しくないや」
つい弱音を吐く。こんな姿を後輩に見せるんだから会長失格だな。
「何を言ってるんですか次期会長。ほらいつもみたいに元気にお願いします」
大田原さん基本的にフォローが上手い。だがもう少し前に言ってくれてもいい。
上手い返しはいらない。ちょっとでも自信喪失に繋がるようなことは避けて欲しい。

「ありがとう。何だか凄く元気が出たよ」
「いえ…… 余計な面倒に巻き込まれたくない。ただそれだけです」
正直な人だ。でも来年会長になってどう変わるかは分からないぞ。
まるで人が変わったように厳しくなるかもしれない。それだけは覚悟して欲しい。

「ではそろそろ真面目に活動しましょう」
こうしてサークルは特に目標もなくただのんびりと無駄な時間を過ごす。
凄くもったいないなと思いながらもどうすることもできずにいる。
ああどうしてこう僕って情けないんだろう?
議題は間もなく始まる文化祭に参加するかどうか。
普通は強制参加だがそれはクラブ活動してる者たちだけ。
僕たちはただのサークルだからそんな拘束力はない。
でも光は展示したいと張り切ってるから参加するんだろうな。
光のアートを使って何か面白いことができればいいが。

「ははは! 面白い面白い! 」
つまらないことで盛り上がる。
あれ? 視線を感じるな。
ここは元々心霊現象研究会の部室だった。
いなくなった彼らの代わりに我々が使わせてもらっている。
いろいろあって解散することになって部室だけ引き継いだ。
だからおかしなポスターが張ってあったり藁人形が机の上にあったりする。
うちの会長はそう言うのお構いなしでラッキーとしか思ってない。
僕だって呪われてるとは思わないしその後の消息も噂で聞いてるので問題ない。

ただ視線を感じる。寒気もするのだ。
おかしな話だが本当のことで二学期からその嫌な感じがしている。
変なのは一学期にはその嫌な感じがしなかったこと。
ここ最近の出来事と言っていいのかもしれない。
何度か確認するも誰もいないことが続いた。
今ではもうただの勘違い。気にし過ぎと流しているが真実はまったくの不明。
でもここにはきっと何かがある。絶対にいるんだ。見え隠れする何かが。
僕たちを見続け冥界に誘おうとしている。

「どうしたんですか次期会長? 青ざめて? 」
「そうだぞ元気! いい加減話に集中しろよな」
らしくなく光が真面目になる。そんな時ばかり気配を感じるし視線も。
「なあ二人とも? 」
「はいはい。また始まったよいつもの戯言。いい加減集中しろよな! 」
光はまったく気にしてない様子だが大田原さんは彼方を睨みつける。
どうやら同じように視線を感じたのだろう。

「ちょっと見てきます」
そう言って部屋を出て行ったきりそのまま戻ることはなかった。

                     続く
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