推しの推し 嫉妬に狂って殺されたい!

二廻歩

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ハイタッチ

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翌日。
光は今日は例によっておやすみ。どうせ風邪を引いたかずる休みだろう。
そう言う奴なんだよな光は。いい加減と言うか適当と言うか。
気分が乗らないと学校に来ない。僕の大切な親友なのに困るな。
これで大田原さんまで来なかったらどうしよう?
あれっきり帰って来なかったからな。少し心配してるんだよね。 
 
「今度ね…… 」
いつも相変わらずかわいらしい彼女。
クラスでは彼女だけが特別。彼女を中心に回っている。
彼女は男も女も関係なく付き合っている。
僕だって何だかんだ言いながらお世話に。

朝にはハイタッチまでする仲なのにどうして覚えてくれないんだろう?
とても不思議な存在。それが彼女…… ではなく僕。
いつだって側にいて話に加わる用意はある。
でもいつの間にか押しのけられて遠ざかってしまう。

毎日のルーティン。ハイタッチだよ? 大好きな彼女と毎日のようにハイタッチ。
まるで夢のような気分。ご褒美ならムチだってビンタだっていいがハイタッチ。
爽やかな朝の挨拶。元気に手と手を合わせる。
僕と彼女は毎日繋がっている。どれだけ絆が深いか分かるだろう?
でも基本彼女が僕を見ることはない。認識することもない。
それが残酷だが真実だ。ああ手と手が触れあってほぼ会話さえしてるのに。
しかも彼女の親友の一人とは毎日のように話してるんだ。
でもそれでも彼女は興味ないのか全然認識しない。

特殊かつ稀な存在。それが彼女…… ではなく僕だ。
僕が情けないから悪いんだ。決して彼女がバカだからじゃない。
それは百も承知だけどどうしても彼女のせいにしたくなる。
では今日も彼女の後ろ姿を見守るとしよう。

うなじが最高なんだよな。へへへ……
そう実は毎日のように後ろ姿をぼんやりと眺めている。
別に舐め回すように見ないのは常識や気持ち悪がられたくないからではない。
光り輝く彼女を直視できないだけ。なぜかすごく眩しいのだ。
彼女はそれだけ僕にとって神聖な存在。邪な心で見てはいけない。

「おい山田元気! ぼうっとしやがって! 何昇天してるんだ? 」
目線も表情も変えず前の席の奴が振り向くか隣の奴が反応する程度。
あえて誰も注目しない。それがこのクラスでの現実。
第三の山田の弊害。悪いことしても見つかりはしない。
存在感がないし気にする奴がいない。悲しいことに誰も気にしてくれない。
大げさのようでほぼ正しい。でもそれは予想なだけで事実はちょっと違う。
クラスで置物あるいは石と化している。

存在感がないのも悪いばかりではない。自由気ままに授業を受けることが可能。
教室内を歩き回ることさえできるのではと思う。実験するのも悪くないかなと。
でも実際は教師に見つかる訳で。
凄いよね教師は。生徒一人一人を見回してチェックしている。

クラスで目立たなくても教師には丸分かり。特に担任の国語教師は僕をからかう。
それでも僕は三人目の山田だから誰も振り返らないし気にもしない。
それが楽で心地よい時もあるが大抵は孤独感に苛まれる。本当に辛くて情けない。

「山田! この主人公は今どんな風に感じている? 」
難しい質問でいじわるをして僕を困らせようとしているかのよう。
教師だからもちろんそんなつもりはないんだろうけど時々そう思ってしまう。
大体このクラスで目立たない第三の山田が主役の気持ちなど分かるはずがない。
分からないし分かろうとも思わない。主役には十年早い。
どうせ僕が何を答えようと誰も気にしてない。特に彼女は存在を認識できない。

「分かりません」
充分に時間を取り考えてる振りをして答える。
これは無駄な時間を使った上での悪あがき。授業の進行の妨げになる迷惑行為。
でもすぐに分かりませんだと何も考えてないように思われるから仕方がない。
僕だってそれなりに考えてるんだって。彼女のことを中心にいろいろとね。
こうして時間を使うことで真面目で従順な生徒の振りをする。
これは僕の為だけでなくクラスの為さ。
答えずに雰囲気を悪くすれば全体に波及する。
反抗的な態度を取れば授業どころではない。
だからこれは正当な遅延行為であって決して非難するようなことではない。
それでも先生は許してくれない。どうにか答えるように持って行く。

「本当に分からないか? 」
「はい…… 」
「まったくお前って奴は…… いやいい」
「申し訳ありません」
うん。これで目をつけられることもない。
「よし座ってよし! 次はそうだな…… 」
何と僕の残した問題を彼女が答える展開。これは理想的。
食べ残しを代わりに食べてもらっているような何とも言えない優越感。
おかしな例えだがこれ以上思いつかないし変な方向に持って行きそう。

ああ僕たちはついに繋がったんだ。これでいい。これでいいんだ。
それだけじゃない。彼女はきっと僕を恨むはずだ。つまらないことで恨むんだ。
そしてふざけるなと睨みつけるはず。制裁を加えようとさえするかもしれない。
冗談じゃなく機嫌が悪ければするだろう。

ビッグチャンスがついに訪れた。いやこれは奇跡かもしれない。
二学期で初。一学期で二回。その時は彼女も分かりませんと逃げた。
しかし今回はそれでは許してくれない雰囲気。
どうしても答えないとならないようだ。

                    続く
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