ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩

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睡眠の重要(性)

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グリーズ島・マウントシー洋館。

島に来て三日目。とは言えここでは初めての夜。

そう初夜という訳だ。間違いが起きないとも限らない。

今間抜けな追跡者が誘われるように檻に入った。

しかも自分で鍵を閉める愚行。誰にも聞かれたくない秘密の話し合い。

窓も閉じる。このクソ暑い夜に何てことしやがる。

もはや理解不能。自分が何をしているのか分かっているのか?

俺も我慢の限界。理性が吹っ飛びそうだ。

アリアだったか。確かに妖しい光をまとっているがまだガキだ。

俺が魅了され虜になるとでも思ってるのか?

つまらない駆け引きなどせずに正直にすべて話してくれると助かる。

今も不敵な笑みを浮かべる緋色の君。


「私のこと。ハッピー先生とのこと」

鼻息は荒く、無理に微笑むが目は笑っていない。

「私はね大河。皆の中で一番遅くに来たの。今年の初め。

だから皆とは関係は浅い。

皆がハッピー先生のことを。いえあの人のことをミス・マームって呼ぶの。

私も時々そう呼ぶことがある。でもこれは秘密だけどで本当のマームなの」

さっきからこいつは何を言ってるのだろう。その上呼び捨て。理解が追い付かない。

先を促す。


「手伝いとして見張りとしてこの島に連れて来られた。

だけどやることは特にないじゃない。

彼女たちは私と違って大人しいし問題も起こさない優等生。

人間味が無いとも言えるかしら。これは関係がまだ浅いから言えること。

時間だけが無為に過ぎていく。暇で暇で仕方なかった。

そんな時、大河あなたがやって来た。

目的は良く分からないけど協力しようかなと思って。

ああこのことは他言無用でお願い。ハッピー先生にもね。

話したことを知られたら叱られる。あの人怖いんだもん」


どうやら時間を持て余していたらしい。

手伝ってくれるそうだが果たして真に受けていいものか。

どうする? とりあえず保留にしておこう。

「じゃあね大河」

随分と馴れ馴れしい。彼女の手だとすれば俺は今まさに取り込まれようとしている。

まったく本当に恐ろしい女だ。

まあ今日はこれくらいで俺が手を出しては彼女の思う壺。

いつの間にか虜にされ尻尾を振ることになる。そして飽きたら捨てられてお終い。

悲惨な末路が頭に浮かぶ。


アリアは自分の部屋に戻った。

要注意人物のアリアの正体が分かっただけでも収穫かもしれない。

祭りまでには何としても目的を達成させる。

その為には今やるべきことは……

何とかしなくてはと言う思いが強くなっていく。

いやそれでは遅いか。俺の顔を見た者だっているかもしれない。

この島に来るのは初めてではない。あの時の思いを、一年前の復讐を果たす。

いやあの時の苦しみを味わせたい。真実を知らしめるのだ。


夜中の二時頃、ふと目が覚める。

物音がしたような…… 気のせいか。

ベッドに戻る。

島に着いてから歩き回ったおかげでなんの苦も無く眠りにつく。

二日経ったがまだどうもベッドには慣れない。そのせいか夜中に目が覚める。


あることがきっかけで地獄の生活が始まった。

俺はそれに慣れ耐え忍んだ。辛かったがどうすることもできない。

助けてくれる者はいない。逃げ出す方法も分からずじまい。

そんな地獄からどうやって逃げ出したか困ったことに思い出せない。

まだ慣れないのか物音がすると目が覚めてしまう。

敏感過ぎるとも思うがこればかりはどうしようもない。

音がしたと思ったが勘違いだったか再び横になる。


疲れが吹っ飛んだのか緊張からなのかなかなか寝つけずにいる。

こうなってしまっては諦めるしかない。

眠れないのは辛い。

睡眠不足が何を引き起すか分からない。

そう恐怖すると余計に眠れなくなる負のスパイラル。

やはり気にしないのが一番。

目を瞑れば次の瞬間には朝。

何度試しても眠れそうにない。

仕方なくポケットから薬を取り出す。

これは睡眠薬などと言うちゃちなものではなく何にでも効く万能薬。

こうして気持ちが落ち着き眠気が復活。

不眠症でもないがこういうことが頻繁に起きる。

枕が変わったとも言える。

本来自然に眠りを促すべきだろうが眠れるのならばいい。

睡眠の大切さを身に染みている今日この頃。

睡眠の重要性って奴だ。

おやすみなさい。
              続く
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