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28.願い
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「この死にぞこないの魔女め! 今度こそ、殺してあげるわ!!」
「……っ!」
ああ、今度こそ本当に終わりなんだ。そう思い、ぎゅっと目を瞑る。
けれども。次の瞬間、感じたのは痛みではなくずっしりとした重みだった。
そう、まるで誰かが自分の上に乗っているような……。
ハッとした私は、まさかと思い目を開ける。
すると──
「ハンスさん!?」
自分を庇ってくれたであろうハンスが、腹部から血を流しながら自分の上に覆いかぶさっていた。
私は慌てて身を起こし、彼を座席の上に寝かせる。
「そんな……どうして……!」
「言ったろ……? お前を無事、隣国まで送り届けるのが……俺の務めだ。だから……こんなところで、お前を死なせるわけにはいかねぇんだよ……」
恐らく、ハンスは魔法壁を張ったせいで相当魔力を消耗していたのだと思う。
そして──迫りくる弾丸をどうにかするだけの力はもう残っていないと判断した彼は、その身を挺して私を庇ってくれたのだ。
「……! だからといって、ハンスさんが犠牲になる必要なんてないのに!」
止めどなく溢れ出る涙が、ハンスの頬にぽたぽたと滴り落ちる。
いくら家族のような関係とはいえ、彼と自分に血の繋がりはない。
なのに、どうして彼は私なんかのために体を張ってくれたのだろう。
「『どうして自分なんかのために』って顔してるな……」
「え……?」
「いいか、アメリア。血の繋がりなんかなくてもな……家族にはなれんだよ。お前はどうか知らねぇけど……俺は、もうずっと前からお前のことを本当の娘みたいに思っているんだ。だから、遠慮すんな。親が子供のために命をかけるのは……当然のこと……だろ……」
息も絶え絶えに、ハンスはそう返した。
……知らなかった。彼がそこまで自分のことを大切に思ってくれていたなんて。
「でも……! 私は、転生を繰り返している魔女なのよ!? 仮に、今世で死んだとしてもまた転生して──」
「そんなこと、考えるな」
ハンスに言葉を遮られた。
「確かに……お前は、特別な力を持った魔女だ。何度だって……転生を繰り返せるかもしれない。だけどな……それを心から望んでいるわけじゃないだろ……? 本心では、『寿命を全うしたい』と……そう思っている。だからこそ……何度殺されても、諦めずに転生を繰り返しているんだろ……? 俺はもう、これ以上……お前に苦しんでほしく……ないんだよ……」
「……!!」
「生きろ、アメリア……何としても生き延びて、そして、レオと一緒に……向こうで幸せに……暮ら……」
そこまで言って、ハンスは意識を手放した。
「ハンスさん!!」
狼狽しつつも、私はハンスの息があるかどうかを確認する。
「良かった! まだ息はあるわ……!」
でも……一体、どうやって追っ手を振り切ればいいの?
「飛ばすぞ、アメリア。しっかり掴まってろ」
「え……?」
「こうなった以上、後は運に任せるしかない。幸い、あいつらは武器の扱いに関しては素人だ。当たらないことを祈って、対岸まで突っ走るぞ」
自分の叔父が瀕死の状態だというのに、レオは平常心を保った様子でそう指示してきた。
もしかしたら、ハンスの思いを無下にしないためにも自分がしっかりしないと駄目だと決意したのかもしれない。
「……ええ!」
返事をした途端、魔法銃のリロードに手間取っていたマリアが再び銃口を向けてきた。
負傷して気を失っているハンスを座席の下に移動させると、私は弾が当たらないことを祈りつつ身構える。
すると、間髪を入れずにパァン! パァン! と何度も銃声が発せられた。爆発音が鳴り響くたびに、体が戦慄く。
そんな風にやり過ごしながら、対岸まであと少しというところまで来た頃。
ついに、マリアが撃った弾が私の腕をかすめた。
「──!?」
「あーあ……惜しかったわね。まあ、いいわ。今度こそ、とどめを刺してあげるから!!」
そう叫ぶと、マリアはニヤリと口の端を吊り上げ──こちらに向かって発砲した。
彼女の銃は、セシル女王達が持っていた銃のように暴発する気配はまだない。
──パァン!!
私がいる方向に狙いが定められた弾丸は、容赦なくこちらに迫ってくる。
その様が、まるでスローモーションのように感じられた。
今度こそ命中するかもしれない──そう思った瞬間。
何故か迫りくる弾丸が目の前でぴたりと停止し、ぽちゃっと音を立てて水面に落下した。
「え……?」
何が起こったのか分からなかった。
唖然として水面を見つめていると、不意にトマとマリアがいる方向から爆発音が聞こえてきた。
「い、いやぁぁぁ!!!!」
「うわああああああ!!!!!」
爆発に巻き込まれたトマとマリアは、その衝撃とともに体ごと船外に吹き飛ばされる。
ほぼ即死だったのか、二人は藻掻くことすらままならないまま川底に沈んでいった。
「や……やったわ、レオ! あの二人、魔法銃が暴発して船から落ちたみたい!」
「よし! このまま対岸まで飛ばすぞ!」
私達は、瀕死のハンスを一刻も早く医者に診せにいくために対岸へと急いだ。
「……っ!」
ああ、今度こそ本当に終わりなんだ。そう思い、ぎゅっと目を瞑る。
けれども。次の瞬間、感じたのは痛みではなくずっしりとした重みだった。
そう、まるで誰かが自分の上に乗っているような……。
ハッとした私は、まさかと思い目を開ける。
すると──
「ハンスさん!?」
自分を庇ってくれたであろうハンスが、腹部から血を流しながら自分の上に覆いかぶさっていた。
私は慌てて身を起こし、彼を座席の上に寝かせる。
「そんな……どうして……!」
「言ったろ……? お前を無事、隣国まで送り届けるのが……俺の務めだ。だから……こんなところで、お前を死なせるわけにはいかねぇんだよ……」
恐らく、ハンスは魔法壁を張ったせいで相当魔力を消耗していたのだと思う。
そして──迫りくる弾丸をどうにかするだけの力はもう残っていないと判断した彼は、その身を挺して私を庇ってくれたのだ。
「……! だからといって、ハンスさんが犠牲になる必要なんてないのに!」
止めどなく溢れ出る涙が、ハンスの頬にぽたぽたと滴り落ちる。
いくら家族のような関係とはいえ、彼と自分に血の繋がりはない。
なのに、どうして彼は私なんかのために体を張ってくれたのだろう。
「『どうして自分なんかのために』って顔してるな……」
「え……?」
「いいか、アメリア。血の繋がりなんかなくてもな……家族にはなれんだよ。お前はどうか知らねぇけど……俺は、もうずっと前からお前のことを本当の娘みたいに思っているんだ。だから、遠慮すんな。親が子供のために命をかけるのは……当然のこと……だろ……」
息も絶え絶えに、ハンスはそう返した。
……知らなかった。彼がそこまで自分のことを大切に思ってくれていたなんて。
「でも……! 私は、転生を繰り返している魔女なのよ!? 仮に、今世で死んだとしてもまた転生して──」
「そんなこと、考えるな」
ハンスに言葉を遮られた。
「確かに……お前は、特別な力を持った魔女だ。何度だって……転生を繰り返せるかもしれない。だけどな……それを心から望んでいるわけじゃないだろ……? 本心では、『寿命を全うしたい』と……そう思っている。だからこそ……何度殺されても、諦めずに転生を繰り返しているんだろ……? 俺はもう、これ以上……お前に苦しんでほしく……ないんだよ……」
「……!!」
「生きろ、アメリア……何としても生き延びて、そして、レオと一緒に……向こうで幸せに……暮ら……」
そこまで言って、ハンスは意識を手放した。
「ハンスさん!!」
狼狽しつつも、私はハンスの息があるかどうかを確認する。
「良かった! まだ息はあるわ……!」
でも……一体、どうやって追っ手を振り切ればいいの?
「飛ばすぞ、アメリア。しっかり掴まってろ」
「え……?」
「こうなった以上、後は運に任せるしかない。幸い、あいつらは武器の扱いに関しては素人だ。当たらないことを祈って、対岸まで突っ走るぞ」
自分の叔父が瀕死の状態だというのに、レオは平常心を保った様子でそう指示してきた。
もしかしたら、ハンスの思いを無下にしないためにも自分がしっかりしないと駄目だと決意したのかもしれない。
「……ええ!」
返事をした途端、魔法銃のリロードに手間取っていたマリアが再び銃口を向けてきた。
負傷して気を失っているハンスを座席の下に移動させると、私は弾が当たらないことを祈りつつ身構える。
すると、間髪を入れずにパァン! パァン! と何度も銃声が発せられた。爆発音が鳴り響くたびに、体が戦慄く。
そんな風にやり過ごしながら、対岸まであと少しというところまで来た頃。
ついに、マリアが撃った弾が私の腕をかすめた。
「──!?」
「あーあ……惜しかったわね。まあ、いいわ。今度こそ、とどめを刺してあげるから!!」
そう叫ぶと、マリアはニヤリと口の端を吊り上げ──こちらに向かって発砲した。
彼女の銃は、セシル女王達が持っていた銃のように暴発する気配はまだない。
──パァン!!
私がいる方向に狙いが定められた弾丸は、容赦なくこちらに迫ってくる。
その様が、まるでスローモーションのように感じられた。
今度こそ命中するかもしれない──そう思った瞬間。
何故か迫りくる弾丸が目の前でぴたりと停止し、ぽちゃっと音を立てて水面に落下した。
「え……?」
何が起こったのか分からなかった。
唖然として水面を見つめていると、不意にトマとマリアがいる方向から爆発音が聞こえてきた。
「い、いやぁぁぁ!!!!」
「うわああああああ!!!!!」
爆発に巻き込まれたトマとマリアは、その衝撃とともに体ごと船外に吹き飛ばされる。
ほぼ即死だったのか、二人は藻掻くことすらままならないまま川底に沈んでいった。
「や……やったわ、レオ! あの二人、魔法銃が暴発して船から落ちたみたい!」
「よし! このまま対岸まで飛ばすぞ!」
私達は、瀕死のハンスを一刻も早く医者に診せにいくために対岸へと急いだ。
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