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29.目覚め
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──ローゼ川河岸。
くたくたになりつつも、私達は何とか対岸へと到着する。
幸か不幸か、到着とほぼ同時にホバークラフトの燃料が切れた。
……とはいえ、あれだけ加速していれば無理もない。寧ろ、ここまでよく持ち堪えたほうだと思う。
「よし、アメリア! すぐにハンスを船から運び出すぞ!」
「ええ!」
私とレオは頷き合うと、二人で瀕死状態のハンスを運び草むらの上に横たわらせる。
ふと顔を上げると、前方にはもみの木が生い茂る森が広がっていた。
河岸付近に釣り人でもいれば助けを求めようかと思ったのだが、一見したところ人の姿は確認できない。
「ハンスさん、しっかりして! すぐにお医者様のところに連れていくから……だから……!」
──お願い、死なないで。
相変わらず、腹部の出血は酷い。
そんなハンスを見ていると、思わず「もう間に合わないかもしれない」という後ろ向きな考えが頭をよぎる。
私はそんな不安を払拭するようにぶんぶんと首を横に振ると、ハンスを町まで運ぶために再び彼の手を取った。
レオは彼の両足を、私は両手をそれぞれ持つと、一先ず森を抜けるために歩を進める。
そうやって進み続けて、十五分ほどが経過した頃。
不意に、ハンスが意識を取り戻した。
「う……ぐはっ……」
ハンスが吐血したので、私達はすぐさま立ち止まって彼を地面に下ろした。
「おい、ハンス! しっかりしろよ! 俺を置いて先に逝くなんて……絶対に許さねぇからな!」
「ハンスさん! もう少しで町に着くわ! だから、頑張って!」
「……もう、無理だ……諦めろ。お前達だけで……町に行くんだ……頼む……行ってくれ……お前達の……負担に……なりたくない……」
絞り出すような声で訴えてきたハンスに、私は自分の顔をずいっと寄せた。
そして、涙ながらに反論してみせる。
「……っ! そんなこと、できるわけないじゃない! 私は、皆で幸せになりたいの! 三人一緒じゃなきゃ意味がないわ! ……この中の誰が欠けても駄目なのよ!」
そう訴えてみせると、ハンスは一瞬瞠目し──そして、ゆっくりと口を開いた。
「……ありがとな、アメリア」
「え……?」
「俺は、家を出て以来……この先もずっと一人で……孤独のまま暮らしていかなければならないのだと……そう思っていた。でも……お前やレオのお陰で……俺の世界は変わった。孤独のまま一生を終えるはずだった俺が……異能力者である俺が……『家族』を持てるなんて思ってもみなかった。本当に感謝している……ありがとう」
再びお礼を言うと、ハンスはにっこりと微笑む。
そして──穏やかな表情のまま、静かに事切れた。
「ハンスさん!? そんな……嫌よ! お願い、目を開けて!! ねえ、約束したじゃない! 向こうに着いたら自由に生きようって……一緒に楽しいこと沢山しようって、約束したじゃない!」
「ハンス! 目を開けろよ! ……畜生っ! なんで……なんで、こうなるんだよ!!」
私とレオの激しい慟哭が、静かな夜の森に悲しく響き渡った。
ふと、私は先ほどの──トマとマリアとの戦いのことを思い出す。
──あの時……確かに、弾丸は自分に当たらず水面に落下していた。もしかすると、既に私の魔力は……。
「……ああ、そうだ。全部思い出した」
不意に、頭の中に走馬灯のように過去の出来事が流れ込んでくる。
魔女ガートルードの──いえ、私の特技は『癒やしの力』で怪我を治すことだったんだわ。
なるべく力を使わずに生きていたけれど、困っている人を見ると放っておけなくて時々こっそり治療してあげていたっけ……。
さっき、マリアが撃った弾が直前で止まって水面に落ちたのは無意識に能力を使っていたからだったのね。
──そう、私の魔力はあの時既に開花していたのだ。
くたくたになりつつも、私達は何とか対岸へと到着する。
幸か不幸か、到着とほぼ同時にホバークラフトの燃料が切れた。
……とはいえ、あれだけ加速していれば無理もない。寧ろ、ここまでよく持ち堪えたほうだと思う。
「よし、アメリア! すぐにハンスを船から運び出すぞ!」
「ええ!」
私とレオは頷き合うと、二人で瀕死状態のハンスを運び草むらの上に横たわらせる。
ふと顔を上げると、前方にはもみの木が生い茂る森が広がっていた。
河岸付近に釣り人でもいれば助けを求めようかと思ったのだが、一見したところ人の姿は確認できない。
「ハンスさん、しっかりして! すぐにお医者様のところに連れていくから……だから……!」
──お願い、死なないで。
相変わらず、腹部の出血は酷い。
そんなハンスを見ていると、思わず「もう間に合わないかもしれない」という後ろ向きな考えが頭をよぎる。
私はそんな不安を払拭するようにぶんぶんと首を横に振ると、ハンスを町まで運ぶために再び彼の手を取った。
レオは彼の両足を、私は両手をそれぞれ持つと、一先ず森を抜けるために歩を進める。
そうやって進み続けて、十五分ほどが経過した頃。
不意に、ハンスが意識を取り戻した。
「う……ぐはっ……」
ハンスが吐血したので、私達はすぐさま立ち止まって彼を地面に下ろした。
「おい、ハンス! しっかりしろよ! 俺を置いて先に逝くなんて……絶対に許さねぇからな!」
「ハンスさん! もう少しで町に着くわ! だから、頑張って!」
「……もう、無理だ……諦めろ。お前達だけで……町に行くんだ……頼む……行ってくれ……お前達の……負担に……なりたくない……」
絞り出すような声で訴えてきたハンスに、私は自分の顔をずいっと寄せた。
そして、涙ながらに反論してみせる。
「……っ! そんなこと、できるわけないじゃない! 私は、皆で幸せになりたいの! 三人一緒じゃなきゃ意味がないわ! ……この中の誰が欠けても駄目なのよ!」
そう訴えてみせると、ハンスは一瞬瞠目し──そして、ゆっくりと口を開いた。
「……ありがとな、アメリア」
「え……?」
「俺は、家を出て以来……この先もずっと一人で……孤独のまま暮らしていかなければならないのだと……そう思っていた。でも……お前やレオのお陰で……俺の世界は変わった。孤独のまま一生を終えるはずだった俺が……異能力者である俺が……『家族』を持てるなんて思ってもみなかった。本当に感謝している……ありがとう」
再びお礼を言うと、ハンスはにっこりと微笑む。
そして──穏やかな表情のまま、静かに事切れた。
「ハンスさん!? そんな……嫌よ! お願い、目を開けて!! ねえ、約束したじゃない! 向こうに着いたら自由に生きようって……一緒に楽しいこと沢山しようって、約束したじゃない!」
「ハンス! 目を開けろよ! ……畜生っ! なんで……なんで、こうなるんだよ!!」
私とレオの激しい慟哭が、静かな夜の森に悲しく響き渡った。
ふと、私は先ほどの──トマとマリアとの戦いのことを思い出す。
──あの時……確かに、弾丸は自分に当たらず水面に落下していた。もしかすると、既に私の魔力は……。
「……ああ、そうだ。全部思い出した」
不意に、頭の中に走馬灯のように過去の出来事が流れ込んでくる。
魔女ガートルードの──いえ、私の特技は『癒やしの力』で怪我を治すことだったんだわ。
なるべく力を使わずに生きていたけれど、困っている人を見ると放っておけなくて時々こっそり治療してあげていたっけ……。
さっき、マリアが撃った弾が直前で止まって水面に落ちたのは無意識に能力を使っていたからだったのね。
──そう、私の魔力はあの時既に開花していたのだ。
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