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「何処だ!?探せ!!草の根一本残さず掻き分けて、何としてでも見つけろ!!」
朝の王城の政務室。
官僚たちが血相を変えて、部屋中のものを乱暴に漁っている。
「オーイオイ!王室の物を粗末に扱うとは、とんだ狼藉だなあ。あ?官僚様よ。」
「っ!!あ、貴方様は…」
「お探しのものはコレか?」
そんな連中に、俺は裏帳簿を見せつける。
「っ!!?」
「まさかこんだけの裏金を蓄えてたとはなあ。公になれば没落程度じゃ済まされねえんじゃねえのか?」
俺は裏帳簿をパラパラとめくり、中身をザッと覗く。
脱税、収賄、給付金の不正受給、そのほか諸々の些細な誤魔化しや詐欺……よくもまあこれだけの金を集められたものだ。
「返せっ!!!」
官僚のひとりに掴み掛かられて転倒した直後、俺は叫んだ。
「取り押さえろっ!!!」
廊下から何人もの近衛兵が駆けつけて、次々と連中が捕縛されていく。
「王弟殿下、此奴らの処遇は?」
「兄上に決めてもらえ。コイツを見せてな。」
近衛兵に裏帳簿を手渡すと、官僚どもは顔面蒼白で唇を震わせる。
「な…何故ですか殿下!!わたくしどもは貴方様を、真の国王と信じて支援する味方ですぞ!!」
「……俺は王弟。真の国王はあの御方ただひとりだ。じゃあな。」
「殿下っ!!!」
往生際悪く喚き散らす官僚どもを近衛兵たちに任せて、次の計画に移る。
内密で馬車を手配し、遠く離れた土地にある、とある民家へと移動する。
「この家で間違いないな。」
呼び鈴を鳴らすと扉が開かれ、中年の女性が現れる。
「はーい……あら、王弟殿下?何故このようなところに…」
「初めまして、伯母上。」
俺がそう言った直後、彼女は全てを悟ったような目で頷いた。
「そうなの……もうそこまで、知ってしまったのね。」
「………」
「とりあえず、あがって。中でお話ししましょ。」
リビングまで案内され、椅子に腰掛けた俺に、伯母上は温かいミルクを淹れてくれた。
「あれからいったい、何十年経ったのかしらね……弟が先先代の国王陛下に引き取られて、この家を出て行ったのは…」
「………」
俺は今クコリが攻略している兄弟丼ルートのキモとなる王族の因縁について、一から情報を整理する。
まず先先代の国王陛下……俺たちの祖父にあたる方は、先祖から代々受け継いできた神聖なる王家の血統を持っていたが、先天的な事情で子どもを作れない体だった。
そしてそのことを知ったときにはすでに、彼以外の王族は全員亡くなっていた。
王族はもはや滅びの一途を辿っており、そしてそれは国の終焉を意味する。
それを防ぐために、先先代王は極秘で養子をもらった。
王都で騒ぎになることを恐れて、遠く離れた田舎に住む男の幼子を。
その幼子が先代の国王陛下。
俺たちの父親であり、いま目の前にいる彼女の弟だ。
先代王は王家に引き取られてから、未来の国王として血の滲むような努力を重ねた。
それは日記から読み取れる。
そして努力が実り、彼は父である先先代王を含めたすべての国民から認められるほどの立派で偉大な王となった。
しかし心の片隅には、いつも影を抱えていた。
王家の血を騙り名誉を傷つけた自分のもとに、いつか神の罰が降りてくるのではないかと。
だから自分のそんな境遇と胸中を、元聖職者の王妃に話した。
王妃は先代王と先先代王ふたりへの救いの手を求めて、毎日のように祈りを捧げた。
するとそれからひと月も経たないうちに、先先代王の体は常人と変わらないほどになり、神の手によって王妃との間にザフィルを授かった。
先代王もともに喜び、王妃に深く感謝し、彼女を生涯かけて愛し続けることを誓い、彼女との間に俺を授かった。
………今にして思えば、なんとも現実離れした、都合の良いストーリーだ。
「俺が此処に来た理由を、まだ言ってませんでしたね。」
俺は伯母上に、先代王の日記を見せる。
「まあ…これは。」
「この日記は王城の政務室の隠し棚から発見しました。恐らくは優秀で公正な兄から王の座を奪い、傀儡にしやすい愚鈍な俺を新たな国王にするために、一部の官僚が盗んで保管していたのでしょう。」
「そんな…」
俺は深く頭を下げて懇願する。
「俺なりに手を尽くしましたが、これが世間に公表されるのは、もはや時間の問題です。王族を騙った罪が暴かれてしまえば、処刑は免れられない。真に聖なる血を継いだ兄が濡れ衣で処されるなんてあってはならない。でも真実を明かせば死ぬのは俺です。何か救いはありませんか?伯母上。」
「……………」
伯母上は席から立ち上がると、俺をある部屋に案内する。
「あの子たちが使った部屋です。この部屋から、何か手がかりになるものを探してちょうだい。私に出来るのはそこまでです。」
「ありがとうございます。」
俺は部屋の中を隅から隅まで、死に物狂いで捜査する。
しばらくの間探し続けていると、先代王の告白状が見つかった。
神聖な王家の血を騙る罪に苛まれた彼が、事実として残すために書いたものだ。
兄弟丼ルートではクコリとザフィルがこれを見つけたことで、奴の無実が証明されて俺が破滅に追いやられたんだっけか。
焼き尽くしたい気持ちは山々だが、これも後から必要になる。
もらっておこう。
(……っ!!これは!!!)
とある二枚の便箋が見つかった。
間違いない、先先代王と先代王が書いたものだ。
ちゃんと王の印まである。
(何が書いてあるんだ…?)
俺は便箋の中身を読み、勝利の確信を得る。
「何か役に立つものは見つかったかしら?」
「はい。これらさえあれば、俺と兄が手を取り合う未来が、きっと掴めるでしょう。」
ゲットした証拠を見せると、不安そうな面持ちだった伯母上がぱあっと明るくなる。
「良かった……どうか先先代の国王陛下や弟を信じて頑張ってね。私には何も出来ないけど、此処で貴方の無事を祈っているわ。」
「はい。ありがとうございます。」
俺は伯母上に感謝を伝えて、王城へと引き返した。
朝の王城の政務室。
官僚たちが血相を変えて、部屋中のものを乱暴に漁っている。
「オーイオイ!王室の物を粗末に扱うとは、とんだ狼藉だなあ。あ?官僚様よ。」
「っ!!あ、貴方様は…」
「お探しのものはコレか?」
そんな連中に、俺は裏帳簿を見せつける。
「っ!!?」
「まさかこんだけの裏金を蓄えてたとはなあ。公になれば没落程度じゃ済まされねえんじゃねえのか?」
俺は裏帳簿をパラパラとめくり、中身をザッと覗く。
脱税、収賄、給付金の不正受給、そのほか諸々の些細な誤魔化しや詐欺……よくもまあこれだけの金を集められたものだ。
「返せっ!!!」
官僚のひとりに掴み掛かられて転倒した直後、俺は叫んだ。
「取り押さえろっ!!!」
廊下から何人もの近衛兵が駆けつけて、次々と連中が捕縛されていく。
「王弟殿下、此奴らの処遇は?」
「兄上に決めてもらえ。コイツを見せてな。」
近衛兵に裏帳簿を手渡すと、官僚どもは顔面蒼白で唇を震わせる。
「な…何故ですか殿下!!わたくしどもは貴方様を、真の国王と信じて支援する味方ですぞ!!」
「……俺は王弟。真の国王はあの御方ただひとりだ。じゃあな。」
「殿下っ!!!」
往生際悪く喚き散らす官僚どもを近衛兵たちに任せて、次の計画に移る。
内密で馬車を手配し、遠く離れた土地にある、とある民家へと移動する。
「この家で間違いないな。」
呼び鈴を鳴らすと扉が開かれ、中年の女性が現れる。
「はーい……あら、王弟殿下?何故このようなところに…」
「初めまして、伯母上。」
俺がそう言った直後、彼女は全てを悟ったような目で頷いた。
「そうなの……もうそこまで、知ってしまったのね。」
「………」
「とりあえず、あがって。中でお話ししましょ。」
リビングまで案内され、椅子に腰掛けた俺に、伯母上は温かいミルクを淹れてくれた。
「あれからいったい、何十年経ったのかしらね……弟が先先代の国王陛下に引き取られて、この家を出て行ったのは…」
「………」
俺は今クコリが攻略している兄弟丼ルートのキモとなる王族の因縁について、一から情報を整理する。
まず先先代の国王陛下……俺たちの祖父にあたる方は、先祖から代々受け継いできた神聖なる王家の血統を持っていたが、先天的な事情で子どもを作れない体だった。
そしてそのことを知ったときにはすでに、彼以外の王族は全員亡くなっていた。
王族はもはや滅びの一途を辿っており、そしてそれは国の終焉を意味する。
それを防ぐために、先先代王は極秘で養子をもらった。
王都で騒ぎになることを恐れて、遠く離れた田舎に住む男の幼子を。
その幼子が先代の国王陛下。
俺たちの父親であり、いま目の前にいる彼女の弟だ。
先代王は王家に引き取られてから、未来の国王として血の滲むような努力を重ねた。
それは日記から読み取れる。
そして努力が実り、彼は父である先先代王を含めたすべての国民から認められるほどの立派で偉大な王となった。
しかし心の片隅には、いつも影を抱えていた。
王家の血を騙り名誉を傷つけた自分のもとに、いつか神の罰が降りてくるのではないかと。
だから自分のそんな境遇と胸中を、元聖職者の王妃に話した。
王妃は先代王と先先代王ふたりへの救いの手を求めて、毎日のように祈りを捧げた。
するとそれからひと月も経たないうちに、先先代王の体は常人と変わらないほどになり、神の手によって王妃との間にザフィルを授かった。
先代王もともに喜び、王妃に深く感謝し、彼女を生涯かけて愛し続けることを誓い、彼女との間に俺を授かった。
………今にして思えば、なんとも現実離れした、都合の良いストーリーだ。
「俺が此処に来た理由を、まだ言ってませんでしたね。」
俺は伯母上に、先代王の日記を見せる。
「まあ…これは。」
「この日記は王城の政務室の隠し棚から発見しました。恐らくは優秀で公正な兄から王の座を奪い、傀儡にしやすい愚鈍な俺を新たな国王にするために、一部の官僚が盗んで保管していたのでしょう。」
「そんな…」
俺は深く頭を下げて懇願する。
「俺なりに手を尽くしましたが、これが世間に公表されるのは、もはや時間の問題です。王族を騙った罪が暴かれてしまえば、処刑は免れられない。真に聖なる血を継いだ兄が濡れ衣で処されるなんてあってはならない。でも真実を明かせば死ぬのは俺です。何か救いはありませんか?伯母上。」
「……………」
伯母上は席から立ち上がると、俺をある部屋に案内する。
「あの子たちが使った部屋です。この部屋から、何か手がかりになるものを探してちょうだい。私に出来るのはそこまでです。」
「ありがとうございます。」
俺は部屋の中を隅から隅まで、死に物狂いで捜査する。
しばらくの間探し続けていると、先代王の告白状が見つかった。
神聖な王家の血を騙る罪に苛まれた彼が、事実として残すために書いたものだ。
兄弟丼ルートではクコリとザフィルがこれを見つけたことで、奴の無実が証明されて俺が破滅に追いやられたんだっけか。
焼き尽くしたい気持ちは山々だが、これも後から必要になる。
もらっておこう。
(……っ!!これは!!!)
とある二枚の便箋が見つかった。
間違いない、先先代王と先代王が書いたものだ。
ちゃんと王の印まである。
(何が書いてあるんだ…?)
俺は便箋の中身を読み、勝利の確信を得る。
「何か役に立つものは見つかったかしら?」
「はい。これらさえあれば、俺と兄が手を取り合う未来が、きっと掴めるでしょう。」
ゲットした証拠を見せると、不安そうな面持ちだった伯母上がぱあっと明るくなる。
「良かった……どうか先先代の国王陛下や弟を信じて頑張ってね。私には何も出来ないけど、此処で貴方の無事を祈っているわ。」
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