初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)

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「見てくださいまし、このドレス!今日という日のために奮発して買いましたの!」
「まあ、素敵…でもそれだけ華美なドレスだと、主役の御二方よりも目立ってしまうのではなくて?」
「まあ、ご冗談を。どのような方が来られたって、あの御二方が霞むなんてことはあり得ませんわ。」

 パーティー会場である王城。
 今夜は王太子のタイシ様とブライデン公爵令息の生誕祭だ。
 御二方は母親同士が大の仲良しで、同じ日時に同じ場所で生まれて以降のお付き合いがある親友らしい。
 だからこうして、王太子殿下のみならずあの方の生誕も祝われて、パーティーが開かれている。

(……やっぱり、すごい人だかり…)

 本音を言えば参加したくなかったけれど、貴族の末席として参加した私は、早くもたくさんの人に気力を削がれている。

「あらぁ、ロイヒン男爵令嬢。ブライデン公爵令息に拒まれた心の傷はもう癒えまして?」
「あら、ご機嫌うるわしいようで何よりです。」

 すれ違いざまに投げかけられる学生らしき令嬢たちの皮肉をかわしながら、私はフーディラス公爵令嬢とアーク子爵令息を探す。
 けれどもやはりおふたりは、私と違って幅広い交流をお持ちのようで、大勢の人に囲まれて忙しなく対応している。

(はぁ…まあ当然よね。)

 私の友人は何の階級も持たない子や、貴族としての生き方に疲れてしまった子ばかり。
 間違ってもこんなパーティーに足を運んだりはしない。
 お父様とお母様も、今は気まずくて会えそうにない。

(仕方ないわ。どこか適当なところで時間を潰して…)
「やあ、ロイヒン男爵令嬢。」

 背後から聞こえた声に、背筋が凍りつく。
 おそるおそる振り返ると、そこには…

「…ブライデン公爵令息?」
「今宵は僕の生誕を祝いに来てくれてありがとう。もうすぐ開幕のダンスが始まるよ、一緒に踊ろう。」

 体温がみるみる内に下がっていく。
 呼吸が浅く早くなっていく。
 いったい何を考えているの?
 私に何をするつもりなの?

「大変恐縮ですが…ブライデン公爵令息は、あまりわたくしとは関わり合いにならない方がよろしいかと。皆様の好奇の視線が貴方様に注がれるのは、心苦しいのです。」

 パニックになりそうになったけれど、貴族令嬢としての誇りを胸に、努めて恭しくそう返した。
 けれど…

「そんなこと、君が気にしなくていいんだよ。見たい奴がいるのなら見せてやればいい。ダンスとは本来そういうものだろう?」

 頭が真っ白になりそうになる。
 さっきからこの方はいったい、何を言ってるの?

「すぐ後ろでお待ちしている御令嬢がたを、お誘いしてはいかがでしょう?貴方様からのお誘いを、心待ちにしていることでしょう。」
「僕は君と踊りたいと言ってるんだ!」

 手首を引っ掴まれそうになったところを、すんでのところで避ける。

(いやっ!!!)

 もう耐えられない。
 私は踵を返して走り、その場から逃げだした。

「アリサ!!」

 すぐ後ろからブライデン公爵令息の大声とドタバタとした足音が響く。
 恐らく逃げる私を捕まえて、無理矢理にでもダンスをするつもりなのだろう。

(そんなの、絶対に嫌!!)

 私は必死で逃げるけれど、ヒールを履いた女の足ということもあり、ジリジリと距離を詰められる。

(もうダメ…誰か助けて!)

 心の中で叫んだ直後、曲がり角で伸びた手に腕を引かれる。

「きゃっ。」

 そのまま人ごみの中にまで引き摺り込まれた。

(いったい誰?)
「どこだ!!アリサ!!」

 困惑したけれど、ブライデン公爵令息の怒鳴るような声に身が竦む。
 けれど…

「大丈夫、怖くないですから。」

 震える手を、包み込むように握られる。
 血の気が引ききって冷えた手に、じんわりと温かみが伝わる。

(あ…)

 気付けば震えはおさまり、ブライデン公爵令息の声は聞こえなくなった。

「ありがとうございます。」

 見上げると、私を掴んだ手の主はアーク子爵令息だった。
 恐らく騒ぎを聞きつけて、あの後助けに来てくださったのだろう。

「…あら、開幕のダンスの音楽が。」
「良かったら一緒に踊りませんか?」

 私たちは開幕のダンスを楽しんだ。
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