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30話 絶対助けます!
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クロードだとわかっていたアリアは、
「はいっ、どうぞ」
と言って、入ってくるのをソワソワして待った。
ガチャ
「やあ、トレイル。もう大丈夫?
心配していたけれど、こんなに早く治ったと聞いて、驚いた。
光魔術師の効果は絶大だね!
本当によかったよ」
そう言いながら入ってきたクロードは、
ピンピンしているアリアを見て、
本当に驚いた顔をする。
「はい、もうすっかり大丈夫です!
このようなことで、貴重な時間を潰してしまい
大変申し訳ありませんでした」
しゅんとして言ったアリア扮するトレイルに、
「そんな風に言わないで。
こんなところまで来てもらえて、
それに父にあんなことをされて、
こちらの方こそ本当に申し訳なく思っているんだから」
と、優しく微笑んだ。
神降臨…
そう思ったアリアは、
「こんなところなんて言わないでください!
私ずっと来たかったんですから!」
と思わず興奮気味に言ってしまった。
「ははっ、そんなに思っていてくれるとは、有難いことだ」
と、ニコっとトレイルを見ると、
「じゃあ少しこれからのことについて、
話しても大丈夫そうかな?」
「はい、私も話したかったことがありますし、来てくださって助かりました」
アリアの表情が神妙になったのを見て、クロードは気になった。
「話したいこと?」
「はい。あっ、クロード様の方は
今日の会議で何か進みましたか?」
急に仕事モードになると、
この場合は先に王子からだわ
と元社畜のアリアは、自然にクロードに話を振る。
「いや、それが面目ないことに、進むというほどのことはなかった。
初めて見る聖力や、苗、種など、
それがどんなものか、どのように使えばいいか、今日はそれを教わってきた。
今後はそれをどう活かすか検討するところだ
それを君と相談したくてね」
「ええ、そうですね。
私も少し考えていたのですが…」
と、アリアはトレイル姿で、腕を組んで難しい顔をする。
「光魔術師の人数は限られていますし、
いずれガルティアへ返還しなければならない人材です。
こちらの国でそのような能力を持つ人材が生まれない以上
そこに頼りすぎても仕方ありません。
立て直すまでの、緊急措置と考えるべきでしょう。
そして、その立て直しに与えられた期間は、
内密にガルティアの
聖力の公爵家子息リンドール様より、
10年と言われているはずですね?」
アリアは実は何も聞かされていないが、
日本人元28歳時代に読んだこの世界のことが書かれている小説
『転生令嬢はハッピーエンドを目指します!』
の内容を思い出して、一応間違っていないか、
クロードに確認した。
「ああ、その通りだ。
やはりトレイルはそこまで知っていたか。
…あの時は、本当に私は恥ずかしいことをしてしまったが、
あの公子殿にはこのように手厚く我が国に施しをしてくださって…
頭が上がらないよ、…本当に。
あの子が彼を好きになるのも、…よくわかる。
はぁ…」
たぶん、その小説に出てきた主人公のティアを思い出したんだろう。
クロード様…かわいそう
最推しの辛そうな顔を見て、悲しそうな顔をするアリアに
「ははっ、とるに足らない私のちょっとした初恋の話だよ。
あっさり振られたんだけどね?
仕方ないさ、あの公子相手じゃあ」
強がって冗談ぽくウインクするクロードを見て、
たまらなくなり、涙が滲んでくる。
「…君は男なのに、感情豊かだね?若いからかな?
まぁ、私のことは気にしないで!
さっ、続きを聞かせて?」
クロードは優しく微笑んでトレイルに言った。
そんなクロードを見て、
絶対この王子を助ける!
と、アリアは心を新たに気合いを入れた。
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