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64話 エレナの魔法

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またしくじったと、フェリスは自分の不甲斐なさを呪った。

カトリーナを見ると、口の端を歪ませながら、ニヤリと笑ってこちらを見ていた。

フェリスは今のアークをエレナに見せたくなくて、食堂にアークを置いたまま、エレナとマーガレットのところに戻った。

「エレナ、マーガレット、2人に話したいことがある。申し訳ないが、ちょっとついて来て欲しい」

そう言ってフェリスは2人を連れて、
マーガレットの寮の部屋へ入らせて貰った。

「…フェリス…もしかして、アーク様は…」

フェリスの表情から異変に気づいたエレナは、話しにくそうにするフェリスを気遣って、自分から口を開いた。

フェリスは申し訳なさそうに、小さく頷いた。

「…間に合わなかった…」

エレナはそれを聞いた途端、火がついたように、わっと泣き出した。

マーガレットもどうしたものか焦りながら、ひとまずエレナの背中を撫でる。

「…今までの経緯からも、こうなってはもう兄上の気持ちは戻らない。

しかし、今回カトリーナが原因だとわかっている。

あの女なら戻せるのかもしれない…

僕にはあの女の目は無効だ。
どうにかできないか、やってみるよ」

「ちょ、ちょっと待って!フェリス!」

マーガレットが慌ててフェリスを止めた。

「どうしたの?マーガレット?」

「フェリス、今無効って言ったわよね?」

「ああ、…言ったけど?」

「それよ‼︎それがあるじゃない‼︎」

マーガレットはフェリスを掴んでがくがく揺さぶった。

「マ、マーガレット⁈ちょっ、やめて」

「あ、ああ、ごめんなさい!」

マーガレットはフェリスを離すと、2人を交互に見た。

「エレナ!あなたならきっとアーク殿下を、いいえ、生徒たち全員を元に戻せるわ!」

「え?」

エレナは涙を拭きながらマーガレットを見てきょとんとする。

「新しい魔法よ‼︎あなたの‼︎無効の魔法‼︎」

「ああ‼︎確かに‼︎それがあったか!
あれは全ての魔法を無効にする能力!

やってみる価値は…あるな!」

マーガレットとフェリスの目は輝き始めた。

しかし、エレナはまだ浮かない顔をしている。

「でも…私、その魔法の出し方がわからないのよ?あの時も偶然出ただけで、出そうとして出したわけじゃないし…」

「エレナ!あの時のことよく思い出して!
それを再現するのよ!やれることはやらなくちゃ!」

マーガレットはエレナの肩を掴んで励ました。

「そ、そうね!」

エレナはマーガレットの言う通りだと思って、自分を奮い立たせた。

「…今はそれしか方法がないなら、やってみるしかない。ひとまず兄上のところへ戻ろう」

フェリスの言葉に2人は納得して、さっきの食堂へ戻った。
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