勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

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19 姫様の願い(十郎左 Side)

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 モナ殿が眠ってしまった。何を切実に訴えて来たのかと思えば、本当に切実なことだった。この馬車で体力が消耗してしまうなんて、本当に子供並なんだな。幼い妹と遠出したときの事を思い出してしまった。移動するときは気を使った記憶がある。桜子はどうしているだろうか。

 モナ殿の頭が落ちて来てきたので、抱え直す。そのときにフードが外れてしまった。淡い金色の髪がこぼれ落ちる。

 初めて見た時は妖精という者がいるとすれば、このような姿なのだろうかと思った程だ。
 風になびく髪が光を反射して煌めいており、淡い緑から金色に変化した瞳が俺を捉えた瞬間、ゾワリと肌が粟立った。
 すべてを見通すようなその瞳から目が離せなくなった。そして、近づいてきたと思ったら腕を掴んできて『ステータスを見ろ』と言われ、何を言っているのか理解できなかった。
 なんだかわからないが、ステータスを見れば、今までマイナス値になる一方だったLUKの数値が減っていた。いや、0値の方に上昇していると言った方がいいのか。

 俺の目の前にいる彼女にどういうことか聞こうと思わず手を出せば、逃げられてしまった。
 それに、先程まで村を案内してくれていたルード殿にまで牽制されてしまった。それも『ひな鳥』のように扱いうように言われたので、妹と同じようにすれば、文句を言われてしまった。うーん。病弱だった妹なら喜んだのにな。

 それからの村で過ごした数日は信じられない程、穏やかな日々だった。モナ殿には色々言われてしまったが。

 プルム村に来て、この辺りでは食べたことがなかった米があることも驚いたが、まさか和国の食べ物が食べれるとは思わなかった。

 そして、村の人達と農作業をする。こんな事は考えられなかった。
 一所に居続ければ、魔物の大群に町や村が襲われてしまうので、長居はできなかった。
 俺が通った街道は後日問題が出てくるとわかり、人が多く通る道は使えなかった。例えば街道沿いは、道が土砂崩れで塞がれたり、崩落して使えなくなったと噂で聞くこともあった。

 それが、2日も何事もなく農作業をして、皆から感謝の言葉をもらえた。疫病神だとか邪神の化身だとか言われた俺がだ。
 心がとても温かくなった。何事もない事がここまで幸せな事だと思わされた。


「ジューローザさん。モナねぇちゃん知らない?」

 村の人達と話をしていると、ルード殿からそう声を掛けられた。隣には心配そうな顔をしたソフィー殿もいる。

「モナちゃん?村長さんと話しているの見たわよ」

 俺に話しかけていた女性が答えた。

「あら?でも村長さんの所には居ないわね」

「本当ね。姫様への感謝のお祭りなのにね」

「リアンくんに連れ回されなくなったから、帰ったのかもしれないわね」

 女性たちは口々にそう言って、離れていった。帰ったのか?ふと気になってステータスを見ると······元に戻っている。

「ルード殿。俺も一緒にモナ殿を探していいか?」

 探した結果モナ殿は家に戻っていた。それも俺を見た瞬間に慌てて来て、『なぜ、元に戻っているのか』と問われてしまった。それは俺の方が知りたい。

 そして、この村の不思議に思っていた事を教えてもらった。なぜ、この村には女性が多いのか。それも皆が美人なのだ。

 それが、英雄とエルフの姫の子孫だとすれば、今では存在しないと言われているエルフの血がこの村で残されているのだろう。


 一番衝撃を受けたのが、この村に入る事のできる条件だ。いや、内心薄々は気がついてはいた。俺はあの国を追い出されたのだろうと。ただ、薬草を持って帰れば受け入れられるのではないかと、期待する心もあった。
 帰る場所がない者しか、外の者が入る事ができない村。そこまでして、過去の人物を守りたいのかと思えばそうではなかった。

「もしかして、この村はモナ殿の為に動いている?」

 その言葉に幼い二人は笑った。収穫祭の時気になる言葉があったのだ。『姫様に感謝』だとか、『姫様の祭り』だと『今日も姫様が元気で良かった』だとか。姫様と呼ばれる者がここに居るかのように村の人が言っていたのだ。

「姫様が心穏やかに過ごすことがこの村のためなんだよ」

「奇跡の姫様の願いは村の人が叶えてあげるのが決まりなんだ」

 幼い二人がそう言って笑っている。

「お陰で、リアン兄さんは振り回されていたけどね。村の言い伝えじゃ奇跡の力を持った姫君は幼子並の体力しかないから、おとなしいはずなんだけど、クスクス」

「でもおねぇちゃんはアレがしたいこれがしたいって、興味が尽きないの。隣町に行きたいっておねぇちゃんが言い出した時は村中が騒然となったらしいよ」

 幼子の体力か。確かにあのステータスならうなずける。

「それでね。ジューローザさん。この村にもう少しいない?」

 そう、ルード殿が聞いてきた。この村にいたいかいたくないかと問われれば、この村に居たい。しかし、肝心のモナ殿に出ていけと言われているのだ。 

「おねぇちゃんの護衛をお願いできないかな?本当はリアンにぃちゃんのお役目なんだけど、魔王っていうのを退治するのに連れて行かれちゃったし」

「僕でもいいのだけど、12歳にならないと村の外に出たらいけないって村の決まりがあるんだ。だから、ジューローザさんにお願いできないかな?きっとジューローザさんがこの村に来たのも何かの縁だと思うんだ」

 俺はまだこの村にいてもいいのだろうか。
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