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98 地底湖ロズワード
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3日後、私達は緑の森に囲まれた中に突如として現れた砦のような建物の前に立っている。これが地底湖ロズワードの入り口だ。
素材は何でできているかわからないが、滑らかな白い石の外壁で4つの塔が東西南北に物見台として存在している。その四方の物見台に連なる建物が堅牢に存在している。正面には大きな扉があり、そこがこのダンジョンの入り口となるのだ。
「ここが入り口とは、なんとも頑丈なつくりであるな」
シンセイが扉の前で顎を撫でながら、感心している。確かにダンジョンというより、防御拠点として使われていそうな、たたずまいにみえる。そして、その扉も何の金属かはわからないが、扉全体に金属が貼られている。
「モナ。今日が約束の3日目だが、いいのか?」
あれからジュウロウザは私の事を『モナ』と呼ぶようになった。しかし、私はジュウロウザから呼ばれ慣れていないので、呼ばれるたびに心臓がドキドキしてしまう。それもサイザールの街から森の中を移動する間も今も抱えられっぱなしなので、そのドキドキがジュウロウザに伝わらないか心配だ。
「ええ、大丈夫です。キトウさ···ジュウロウザ」
今まで通りキトウと呼ぶと笑っていない笑顔を向けるのはやめて欲しい。怖いよ。
「中に入って北の塔を目指してください」
私がそういうと、頭の上にノアールを乗せたシンセイが扉に手を掛けた。ノアールはシンセイのオプションなのだろうか。雪華藤を食べるとき以外私のところには全く来ない。やはり、ドラゴンは鳥と違って親の刷り込みはないのだろう。
黒いオプションを乗せたシンセイの手によって、重い音をたてながら扉が開いていく。
中は魔道具の光だろうか。明るく、白い石の床を照らしていた。ジュウロウザが足を進め中に入っていき、その後にシンセイも中に入ってきた。という事は当然扉を支える者が居なくなれば、物凄い音を立てて大きな扉が閉まっていく。これ、開くよね。
「階段があるのぅ」
シンセイが白く反射している床に対し、闇を取り込んだようにぽっかりと穴が空いているところを指した。
「そこはダンジョンの入り口なので無視です」
私は北の物見台の様な塔に行くように促した。下に向かっていく階段なんて無視だ。誰がまともに50階層もダンジョンを攻略するか。私に死ねと?
ここに転移装置があるということは、その昔、転移装置を移動手段として常用していたということだ。直通の通路が存在しているに決まっている。
「しかし、古代遺跡と言うには綺麗なものであるな」
シンセイは古代遺跡に入るのが初めてなのか、杖をカツンカツンと付きながら、あちらこちらに視線を向けている。勿論シンセイの魂と言うべき戟は背中に背負っている。
「ここはまだ機能しているようですからね」
まぁ、私も古代遺跡なんて初めて入るけどね。
「ダンジョンが元は観光施設だったとは驚きだな」
ジュウロウザがボソリともらした。
そう、ここは観光施設だった。この情報を得たのは夏の神殿の【世界の書】がある白亜の間だ。夏の神殿で5日の間で調べられる事を調べまくったのだ。しかし、全く時間が足りなかった。
元々は地底湖を観光資源とする観光施設だった···らしい。
ゲームでも神秘的な青さにキラキラエフェクトが追加されて綺麗ではあった。
「ここであるな」
北側の塔の中に入る扉が目の前にあった。
「姫」
シンセイが扉の横にある白い石を指し示した。見た目は壁の白い石と同化してわからないが、よく見ると丸い半球状の石がある事がわかる。
ジュウロウザがそこまで歩いていき、私をその半球状の石の前まで抱きかかえて行った。あの~私、歩けますよ。
はぁ、普通の石の床なのに歩かせてもらえない。
私は半球状の白い石に手を伸ばして触る。
···何も反応しないけど!書いてあったことと違うじゃないか!
『ザー····ザッ···ピッ』
な、何か雑音の後に電子音がした!もしかして、暫く使う者がいなかったからバグってる?
『オナマエヲドウゾ』
抑揚のない音声が聞こえてきた。その問いに私が答える。
「モナ・マーテル」
『ジッジー···ジ·····ピッ。オンシツ・マシツ。カクニンシマシタ。トビラ・ヒラキマス』
おお、マジで開いた。何でゲームの時にわからなかったんだ!私が使えるということは、リアンも使えるという事じゃないか!
そう、この古代遺跡を造った者たちは私の先祖だった。····らしい。エルフ族は世界中を支配していたが、何がきっかけかはわからなかったけれども、一人の人物を残して絶滅したと記されていた。
奇跡の姫ルトゥーナ・マーテル以外全てが死に絶えたと。
何が起こったのか、その辺りのことを調べようとしたけれど、膨大の量の書物の中から見つけ出すことは5日という時間ではできなかった。
しかし、英雄という者が存在したということは、英雄が必要な事態が起こったということが考えられる。今回リアンが勇者となったように。
今、ふと思った。古代遺跡が通常運行可能だということは、もしかして、ガーディアンと戦わなくてもいいんじゃない?
素材は何でできているかわからないが、滑らかな白い石の外壁で4つの塔が東西南北に物見台として存在している。その四方の物見台に連なる建物が堅牢に存在している。正面には大きな扉があり、そこがこのダンジョンの入り口となるのだ。
「ここが入り口とは、なんとも頑丈なつくりであるな」
シンセイが扉の前で顎を撫でながら、感心している。確かにダンジョンというより、防御拠点として使われていそうな、たたずまいにみえる。そして、その扉も何の金属かはわからないが、扉全体に金属が貼られている。
「モナ。今日が約束の3日目だが、いいのか?」
あれからジュウロウザは私の事を『モナ』と呼ぶようになった。しかし、私はジュウロウザから呼ばれ慣れていないので、呼ばれるたびに心臓がドキドキしてしまう。それもサイザールの街から森の中を移動する間も今も抱えられっぱなしなので、そのドキドキがジュウロウザに伝わらないか心配だ。
「ええ、大丈夫です。キトウさ···ジュウロウザ」
今まで通りキトウと呼ぶと笑っていない笑顔を向けるのはやめて欲しい。怖いよ。
「中に入って北の塔を目指してください」
私がそういうと、頭の上にノアールを乗せたシンセイが扉に手を掛けた。ノアールはシンセイのオプションなのだろうか。雪華藤を食べるとき以外私のところには全く来ない。やはり、ドラゴンは鳥と違って親の刷り込みはないのだろう。
黒いオプションを乗せたシンセイの手によって、重い音をたてながら扉が開いていく。
中は魔道具の光だろうか。明るく、白い石の床を照らしていた。ジュウロウザが足を進め中に入っていき、その後にシンセイも中に入ってきた。という事は当然扉を支える者が居なくなれば、物凄い音を立てて大きな扉が閉まっていく。これ、開くよね。
「階段があるのぅ」
シンセイが白く反射している床に対し、闇を取り込んだようにぽっかりと穴が空いているところを指した。
「そこはダンジョンの入り口なので無視です」
私は北の物見台の様な塔に行くように促した。下に向かっていく階段なんて無視だ。誰がまともに50階層もダンジョンを攻略するか。私に死ねと?
ここに転移装置があるということは、その昔、転移装置を移動手段として常用していたということだ。直通の通路が存在しているに決まっている。
「しかし、古代遺跡と言うには綺麗なものであるな」
シンセイは古代遺跡に入るのが初めてなのか、杖をカツンカツンと付きながら、あちらこちらに視線を向けている。勿論シンセイの魂と言うべき戟は背中に背負っている。
「ここはまだ機能しているようですからね」
まぁ、私も古代遺跡なんて初めて入るけどね。
「ダンジョンが元は観光施設だったとは驚きだな」
ジュウロウザがボソリともらした。
そう、ここは観光施設だった。この情報を得たのは夏の神殿の【世界の書】がある白亜の間だ。夏の神殿で5日の間で調べられる事を調べまくったのだ。しかし、全く時間が足りなかった。
元々は地底湖を観光資源とする観光施設だった···らしい。
ゲームでも神秘的な青さにキラキラエフェクトが追加されて綺麗ではあった。
「ここであるな」
北側の塔の中に入る扉が目の前にあった。
「姫」
シンセイが扉の横にある白い石を指し示した。見た目は壁の白い石と同化してわからないが、よく見ると丸い半球状の石がある事がわかる。
ジュウロウザがそこまで歩いていき、私をその半球状の石の前まで抱きかかえて行った。あの~私、歩けますよ。
はぁ、普通の石の床なのに歩かせてもらえない。
私は半球状の白い石に手を伸ばして触る。
···何も反応しないけど!書いてあったことと違うじゃないか!
『ザー····ザッ···ピッ』
な、何か雑音の後に電子音がした!もしかして、暫く使う者がいなかったからバグってる?
『オナマエヲドウゾ』
抑揚のない音声が聞こえてきた。その問いに私が答える。
「モナ・マーテル」
『ジッジー···ジ·····ピッ。オンシツ・マシツ。カクニンシマシタ。トビラ・ヒラキマス』
おお、マジで開いた。何でゲームの時にわからなかったんだ!私が使えるということは、リアンも使えるという事じゃないか!
そう、この古代遺跡を造った者たちは私の先祖だった。····らしい。エルフ族は世界中を支配していたが、何がきっかけかはわからなかったけれども、一人の人物を残して絶滅したと記されていた。
奇跡の姫ルトゥーナ・マーテル以外全てが死に絶えたと。
何が起こったのか、その辺りのことを調べようとしたけれど、膨大の量の書物の中から見つけ出すことは5日という時間ではできなかった。
しかし、英雄という者が存在したということは、英雄が必要な事態が起こったということが考えられる。今回リアンが勇者となったように。
今、ふと思った。古代遺跡が通常運行可能だということは、もしかして、ガーディアンと戦わなくてもいいんじゃない?
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