勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

文字の大きさ
106 / 121

106 モナである私と彼女

しおりを挟む
 扉が内側から開く。ギギギギという蝶番が軋む音が耳によく響く。

 ど、どういうこと!ここには鍵がないと入れないはず!私は闇待月なんて持っていない!
 なら、どうして開いた!

 常闇の君がその開いた扉の隙間から中に入っていく。

 だ、誰が開けた!元々鍵が掛かっていなかったというオチか!
 そ、それはそれで恐ろしい!

 扉が完全に開いた。その先は真っ暗で何も見えない。

「プゥ~」

 ノアールの怯えた鳴き声が聞こえる。私はあそこに招かれているのだろう。ここに来てばぁちゃんの言葉が降ってきたのだ。

『モナ。神はいつもモナの事を見ておる。忘れるでない』

 きっと鍵を開けたのは封じた神なのだろう。ノアールから私は降りる。

「プッ!」

「ノアール。ここで待っていてくれるかな?私は呼ばれているみたいだから」

 ノアールは必死に首を横に振って私の横にピタリと寄ってきた。これは何が何でも一緒に行くと言うことだろうか。こんなに震えているのに、無理しなくてもいいのに。 

 ノアールが離れる様子がないので、そのまま私は扉の先の光が届かない暗闇に入ることにした。はぁ、待っていてくれていいのに。


 中は何も見えない程真っ暗な闇に包まれている。だけど、どこに行けばいいのかはわかる。ただ、まっすぐに進めばいい。


 私は暗闇の中で足を止める。ここが目的地?

 ぽっと明かりが一つ灯った。もう一つ。もう一つと私を囲むように火の明かりが灯っていく。

 そして、私の前には先程の常闇の君が立っていた。いや、恐らく本体だ。ゲームでは醜悪な物体X的な姿だったが、これが本来の姿なのだろう。

「こんにちは」

 取り敢えず話しかけてみる。

 ·····

 返答がない!何しにここに呼んだんだ!用があるならさっさと言え!と、いうために私は口を開く。

「エルドラードは意地悪ね」

 は?いや。私はそんなことを言いたいわけじゃない!

「貴方をこんな所に封じ込めてしまうなんて」

 なに?この感情は?悲しみ、絶望、喜び、愛おしい。コレは私の感情では無い!誰だ!

「ふふふ。あまり怒らないで、少しだけ私に時間をちょうだいね。モナ

 私でない私がそう言った。意味がわからないが、少し黙っておこう。

「ありがとう。ここにいる私は欠片でしかないから、何もできないわ。そう、何も」

 悲しみの感情が伝わってきた。何もできないか。

「貴方に謝りたかったの。ただ、その一言を言うために随分時間が掛かってしまったわ。何度も何度も転生するけれど、欠片である私は貴方の居場所すらわからず、一言を言うことが叶わなかったの。ごめんなさい。私が愚かだったわ」

 愚かと私は言った。目の前の常闇の君に向かって。ただ、その謝られた常闇の君は微動だにせず、私を見ている。

モナに感謝を。私にはこの場所がわからなかった。私ではここに来ることは適わなかった。ふふふ。これで、私のうれいもなくなったわ。私の意思も世界の一部に還ることになるわね」

 ん?私が世界の一部に還る?じゃ、私は?

「ああ、大丈夫。モナモナの未来を歩めばいいわ。それに私は必要ないでしょ?」

 その言葉に常闇の君が動いた。私の腕を掴んだ。そして、私を突き放す。
 私の中から何かがズルリと抜けた気がした。

 私はそのまま外の方に体が引っ張られていく。そして、私の目には常闇の君に抱かれている私が映った。

 ああ、なんだ常闇の君も彼女のことが好きだったんじゃないか。
 転生を繰り返す程、常闇の君が好きだった彼女。謝りたかったと言っていても、心の中は会いたかった。愛おしい。側にいたい。という感情に満たされていた。
 常闇の君もさまよって、彼女のことを探していたのだろう。

 この世界を創造した神。ルギアとクレア。その名が刻まれたものは夏の神殿の【世界の書】しか存在しない。

 【世界の書】それは世界の成り立ちを記されたもの。
 創造主ルギア神と女神クレア神が世界を創り上げたことから記されていた。平和が世界を満たしていたが、ある時世界に亀裂が走り闇が溢れ出してきた。
 創造主ルギア神は世界の溢れた闇を己の内側に取り込み、闇に支配され、世界を壊し始めた。その闇に支配されたルギア神を主神エルドラードが封じ、女神クレアが亀裂を修復するために世界の一部となった。
 そう【世界の書】には記されていた。
 最後に“ルギア神を封じるために同じく名も封じることとした。この書以外の全てを破棄する”と。


 私とノアールは金の扉から放り出された。そして、再びガシャンと鍵がかかる音が重く響く。

 はぁ。とため息が出やた。なんで私の中に女神なんかがいるんだ!
 あり得ないだろ!

 パンパンパンパンパン

 何?近くで手を叩かれる音が聞こえる。私とノアールしか居ないはずの封印の間の前でだ。

 首を音がするほうに向ける。
 そこには、私と同じミルクティー色の髪に常闇の君と同じ金色の目をした人物が立っていた。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

処理中です...