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21章 聖女と魔女とエルフ
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夕食の準備をしていると、玄関からノックをする音が鳴響いてきた。シェリーは手を止め出ようとすれば、グレイが廊下に出ていく姿が見えた。どうやら、訪問者の対応をしてくれるようだ。
チラリとダイニングを見渡すと、スーウェンとリオンが何か話し込んでおり、オルクスは床で寝そべっていた。カイルと手合わせした後、回復したスーウェンに慣れない魔力の扱い方を教えられ、疲れたのだろう。
魔力の扱い方は小さな時に基礎を教え込まれるのだが、いきなり膨大な魔力の制御には精神的に負担がかかったと思われた。
「シェリー、伯母が来ているんだが」
訪問者の対応に玄関に行っていたグレイがダイニングに入ってきた。
「マリアさんですか?手紙の返事でしょうか?」
今朝、第6師団長に渡したユーフィア宛の手紙の返事が返って来たのだろうと、シェリーは言うが、グレイは首を横に振り。
「青狼の師団長さんと奥方が来ているんだ」
「・・・・」
シェリーはイラッとした。以前の訪問時に前もって連絡をして欲しいと言ったはずだが、どうしてあの手紙で今日の訪問に繋がるのか、シェリーはさっぱり理解出来ない。
「そうですか」
シェリーは玄関に向かおうとすると、後ろからカイルに声を掛けられた。
「シェリーちょっと待って」
「なんですか?」
「応接室じゃなくて、この隣の部屋に通してもらえるかな?」
隣の部屋というと、リビングになってしまう。あの師団長はあれでも公爵家の当主だ。そんな人物をリビングに通すなんてできるはずはない。
シェリーは何を考えているんだという視線をカイルに向ける。
「シェリー。祝福が思ったより強いよね。オルクスがあんな感じだし、隣の部屋の方がいいと思うんだけど」
そう言ってカイルは床に寝そべっているオルクスに視線を向ける。視線を向けられたオルクスは目を開けたあと再び目を瞑る。動く気は無いようだ。
ああ、確かに今朝は変な対応をされた。
今回の話はすぐに終わる事なのでいいかと思いシェリーが再び玄関に向かおうとすれば、グレイが出ていった後だった。シェリーが他の人と接触するの極力減らしたいのだろうか。祝福の所為で行動を制限されるのは嫌なものだ。
グレイが隣のリビングに案内し、シェリーは茶菓子を用意して、向かう。そして、クストとユーフィアを目の前にして早々に文句を言った。
「事前に連絡をくださいと、以前申しませんでしたか?」
そう言いながら、お茶と菓子を二人の前に置く。そんなシェリーにクストは鋭い視線を向け。
「嬢ちゃんがユーフィアに来いと言ったのだろ!文句を言うのはおかしいだろ」
そんな事を言うクストにシェリーはため息を吐く。
「はぁ。手紙には『4日後に薬の事で話し合いの場が持てそうです。その事で事前に決めておきたいことがあるので、それまでにお時間をいただけませんか』という内容です。今日、訪ねて来てくださいとは書いていません」
クストに睨まれながら、シェリーは二人の向かい側に座る。その両脇にカイルとグレイが座った。
「え?あ・・・あの。もしかして、シェリーさん?クストどういう事?」
黒髪で容姿も変わってしまったシェリーにユーフィアは戸惑いを見せている。シェリーに見えないシェリーと普通に話している自分の番であるクストにユーフィアは尋ねる。
「ユーフィアが気にすることじゃない」
クストはシェリーの対応とは真逆で、番であるユーフィアに対してはニコリと笑って答える。その背後の尻尾はブンブンと振られいた。
「え?普通は気にするでしょう」
そんなクストにユーフィアは普通に答える。目の前のシェリーはあまりにも違いすぎると。
「ルークを見たらわかるだろ。片親しか血が繋がっていなくても勇者と聖女の子だ。あの容姿の方がありえない」
「ええええ!あの関西弁の勇者と聖女様の子だったの!」
ユーフィアは衝撃な事実を知ってしまったかのように目を見開き、両手で口を押さえシェリーを見ていた。
関西弁の勇者・・・ユーフィアは以前、あのナオフミと会った事があると言っていた。
「あの聖女様が大好き過ぎる勇者の?」
「ああ」
「聖女様を撮るのに写真機が欲しくてドラゴンの首を持ってきた勇者の?」
「ああ」
「聖女様にコスプレさせている勇者の?」
「こすぷれ?」
バキッと音がしてシェリーは思わず手元に視線を向けると、先程茶菓子を運んできたトレイが真っ二つに割れていた。
血の繋がりを絶対に認めたくないクソ勇者の話を、それも個人の趣味趣向を、第三者から聞かされて思わず力が入り過ぎたみたいだ。
「ユーフィアさん、私の前でクソ勇者の話はしないでいただけます?ブチ殺したくなるので」
リビングにシェリーの低い声が響いた。
チラリとダイニングを見渡すと、スーウェンとリオンが何か話し込んでおり、オルクスは床で寝そべっていた。カイルと手合わせした後、回復したスーウェンに慣れない魔力の扱い方を教えられ、疲れたのだろう。
魔力の扱い方は小さな時に基礎を教え込まれるのだが、いきなり膨大な魔力の制御には精神的に負担がかかったと思われた。
「シェリー、伯母が来ているんだが」
訪問者の対応に玄関に行っていたグレイがダイニングに入ってきた。
「マリアさんですか?手紙の返事でしょうか?」
今朝、第6師団長に渡したユーフィア宛の手紙の返事が返って来たのだろうと、シェリーは言うが、グレイは首を横に振り。
「青狼の師団長さんと奥方が来ているんだ」
「・・・・」
シェリーはイラッとした。以前の訪問時に前もって連絡をして欲しいと言ったはずだが、どうしてあの手紙で今日の訪問に繋がるのか、シェリーはさっぱり理解出来ない。
「そうですか」
シェリーは玄関に向かおうとすると、後ろからカイルに声を掛けられた。
「シェリーちょっと待って」
「なんですか?」
「応接室じゃなくて、この隣の部屋に通してもらえるかな?」
隣の部屋というと、リビングになってしまう。あの師団長はあれでも公爵家の当主だ。そんな人物をリビングに通すなんてできるはずはない。
シェリーは何を考えているんだという視線をカイルに向ける。
「シェリー。祝福が思ったより強いよね。オルクスがあんな感じだし、隣の部屋の方がいいと思うんだけど」
そう言ってカイルは床に寝そべっているオルクスに視線を向ける。視線を向けられたオルクスは目を開けたあと再び目を瞑る。動く気は無いようだ。
ああ、確かに今朝は変な対応をされた。
今回の話はすぐに終わる事なのでいいかと思いシェリーが再び玄関に向かおうとすれば、グレイが出ていった後だった。シェリーが他の人と接触するの極力減らしたいのだろうか。祝福の所為で行動を制限されるのは嫌なものだ。
グレイが隣のリビングに案内し、シェリーは茶菓子を用意して、向かう。そして、クストとユーフィアを目の前にして早々に文句を言った。
「事前に連絡をくださいと、以前申しませんでしたか?」
そう言いながら、お茶と菓子を二人の前に置く。そんなシェリーにクストは鋭い視線を向け。
「嬢ちゃんがユーフィアに来いと言ったのだろ!文句を言うのはおかしいだろ」
そんな事を言うクストにシェリーはため息を吐く。
「はぁ。手紙には『4日後に薬の事で話し合いの場が持てそうです。その事で事前に決めておきたいことがあるので、それまでにお時間をいただけませんか』という内容です。今日、訪ねて来てくださいとは書いていません」
クストに睨まれながら、シェリーは二人の向かい側に座る。その両脇にカイルとグレイが座った。
「え?あ・・・あの。もしかして、シェリーさん?クストどういう事?」
黒髪で容姿も変わってしまったシェリーにユーフィアは戸惑いを見せている。シェリーに見えないシェリーと普通に話している自分の番であるクストにユーフィアは尋ねる。
「ユーフィアが気にすることじゃない」
クストはシェリーの対応とは真逆で、番であるユーフィアに対してはニコリと笑って答える。その背後の尻尾はブンブンと振られいた。
「え?普通は気にするでしょう」
そんなクストにユーフィアは普通に答える。目の前のシェリーはあまりにも違いすぎると。
「ルークを見たらわかるだろ。片親しか血が繋がっていなくても勇者と聖女の子だ。あの容姿の方がありえない」
「ええええ!あの関西弁の勇者と聖女様の子だったの!」
ユーフィアは衝撃な事実を知ってしまったかのように目を見開き、両手で口を押さえシェリーを見ていた。
関西弁の勇者・・・ユーフィアは以前、あのナオフミと会った事があると言っていた。
「あの聖女様が大好き過ぎる勇者の?」
「ああ」
「聖女様を撮るのに写真機が欲しくてドラゴンの首を持ってきた勇者の?」
「ああ」
「聖女様にコスプレさせている勇者の?」
「こすぷれ?」
バキッと音がしてシェリーは思わず手元に視線を向けると、先程茶菓子を運んできたトレイが真っ二つに割れていた。
血の繋がりを絶対に認めたくないクソ勇者の話を、それも個人の趣味趣向を、第三者から聞かされて思わず力が入り過ぎたみたいだ。
「ユーフィアさん、私の前でクソ勇者の話はしないでいただけます?ブチ殺したくなるので」
リビングにシェリーの低い声が響いた。
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