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24章-2 魔の大陸-魔人が治める国
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魔人ラフテリアと聖剣ロビンは手を繋いで歩いていた。その後ろを微笑みを浮かべて付き従う魔人マリートゥヴァ。
西の町まで案内してくれているのだが、後ろから見るとただの二人のデートに付き合わされているように見えるなとシェリーは思っていた。
しかし、きっと4千年前はこのように二人は旅をしていたのだろう。世界を浄化するために白き神から神言と聖女の力を授かったラフテリア。その聖女を番として、聖剣として、守るために力を授かったロビン。
人の欲望と言うものに飲まれなければ、きっと彼女たちは世界の浄化を成し遂げただろう。
「しかし、こんなに無防備に歩いていても魔物の気配は感じないな」
ふと、オルクスが周りを見渡しながら、不思議そうに言った。かれこれ半刻は歩いているが、全く魔物とは遭遇していない。
しかし、シェリーは呆れるような視線をオルクスに向ける。
「はぁ。ここはラフテリア様が支配する大陸です。魔物なんているはず無いです」
シェリーはこの大陸に魔物がいないと言い切った。そこにラフテリアが関係するのか。
「魔物がいない?」
グレイが驚いたように声を上げた。どこの国も魔物の脅威に脅かされている。村が一つ無くなってしまうこともあるのだ。
「魔物なんていなよ。だって神様と約束したんだから」
グレイの言葉にラフテリアが後ろを振り向いて答えた。しかし、直ぐにロビンとの散歩を楽しむために前を向く。これ以上答える気はないようだ。神様との約束それが答えの全てだと言わんばかりに。
「先程から、彼女は神との約束にこだわりがあるようだね」
ここに来てから何度か耳にする言葉だ。カイルがシェリーに尋ねる。シェリーはラフテリアを牽制するために神の名を出したのだ。何か知っているのだろう。
「力を授かった時に言われたそうですよ。世界を浄化することを。まぁ、それが聖女の役目ですから、ラフテリア様はこの大陸全土を浄化した。それだけです」
それだけ。シェリーはそう言うが、シェリーたちが住んでいる大陸を聖女であるシェリーが浄化出来ているかと問われれば、悪心の塊を浄化するのみで、全てを浄化するなんて、到底無理なのだ。
「大陸全土を浄化したから、魔物が存在しないということですか?しかし、それは本当に可能なのでしょうか?大陸全土の浄化など」
スーウェンがもっともな事を口にする。元々は人の悪の心が世界に影響を及ぼしているのだ。可能か不可能かと問われれば不可能と返答するのが正しいだろう。
しかし、ラフテリアはそれを行ったのだ。
「可能ですよ。元々の元凶である人を滅ぼせば」
そう、元はと言えば人が招き起こしたことなのだ。短絡的な考えではあるが、根源である人を失えば解決してしまう。この世界に及ぼしている悪影響の全てが。
「人を滅ぼすだと!それはあまりにも····」
あまりにも身勝手すぎる。リオンは最後まで言葉を口にはしなかった。
その滅ぼした張本人が前方におり、その隣にいるロビンから殺気を帯びた視線を受けたのだ。
「ですから、この大陸には人が存在しません。人の闇の心が魔物を生み出し、世界に歪みを生み出しました。なら、人を滅ぼせが全てが解決するのです」
そう、人と呼ばれる種族が世界に悪影響を及ぼしているのなら、人を滅ぼせばいい。人を取るか世界を取るか。
ラフテリアは世界を取ったのだ。
己を唆し、聖女である役目を阻害し、己の番まで殺した人という者たちなど、必要ないと。
この世界には己とロビンだけが居ればいいと。
「本当に人という生き物は愚かでございます」
シェリーの言葉を同意する言葉が、シェリーの横から聞こえてきた。魔人マリートゥヴァだ。いつの間にかシェリーの横で歩いていた。
「己の欲に翻弄され、過ちに気づかない愚かな生き物。この世界には不要なモノ。私もその昔は愚かでありましたが、今はこの世界の平穏のために、聖女様のために尽くす身であります」
魔人マリートゥヴァはにこやかに笑った。今の有り様が、満足する形だと言わんばかりに。
「ですが、神々はそれを良しとなさらなかった。わたくしが死を、聖女様が生を、与え続けた者たちは死のない生き物に神々が変えてしまわれた。ですから、わたくし達はこの大陸の平穏のみを維持しているのですよ」
ラフテリアは転移で移動できるにも関わらず、この魔の大陸と同じ様にシェリーたちが住む大陸を浄化しなかった理由は神々からの手出しがあったためだ。
神との約束。
ラフテリアを動かす唯一の言葉だ。ラフテリアの後悔であり、ラフテリアが果たす事ができなかった約束だ。
西の町まで案内してくれているのだが、後ろから見るとただの二人のデートに付き合わされているように見えるなとシェリーは思っていた。
しかし、きっと4千年前はこのように二人は旅をしていたのだろう。世界を浄化するために白き神から神言と聖女の力を授かったラフテリア。その聖女を番として、聖剣として、守るために力を授かったロビン。
人の欲望と言うものに飲まれなければ、きっと彼女たちは世界の浄化を成し遂げただろう。
「しかし、こんなに無防備に歩いていても魔物の気配は感じないな」
ふと、オルクスが周りを見渡しながら、不思議そうに言った。かれこれ半刻は歩いているが、全く魔物とは遭遇していない。
しかし、シェリーは呆れるような視線をオルクスに向ける。
「はぁ。ここはラフテリア様が支配する大陸です。魔物なんているはず無いです」
シェリーはこの大陸に魔物がいないと言い切った。そこにラフテリアが関係するのか。
「魔物がいない?」
グレイが驚いたように声を上げた。どこの国も魔物の脅威に脅かされている。村が一つ無くなってしまうこともあるのだ。
「魔物なんていなよ。だって神様と約束したんだから」
グレイの言葉にラフテリアが後ろを振り向いて答えた。しかし、直ぐにロビンとの散歩を楽しむために前を向く。これ以上答える気はないようだ。神様との約束それが答えの全てだと言わんばかりに。
「先程から、彼女は神との約束にこだわりがあるようだね」
ここに来てから何度か耳にする言葉だ。カイルがシェリーに尋ねる。シェリーはラフテリアを牽制するために神の名を出したのだ。何か知っているのだろう。
「力を授かった時に言われたそうですよ。世界を浄化することを。まぁ、それが聖女の役目ですから、ラフテリア様はこの大陸全土を浄化した。それだけです」
それだけ。シェリーはそう言うが、シェリーたちが住んでいる大陸を聖女であるシェリーが浄化出来ているかと問われれば、悪心の塊を浄化するのみで、全てを浄化するなんて、到底無理なのだ。
「大陸全土を浄化したから、魔物が存在しないということですか?しかし、それは本当に可能なのでしょうか?大陸全土の浄化など」
スーウェンがもっともな事を口にする。元々は人の悪の心が世界に影響を及ぼしているのだ。可能か不可能かと問われれば不可能と返答するのが正しいだろう。
しかし、ラフテリアはそれを行ったのだ。
「可能ですよ。元々の元凶である人を滅ぼせば」
そう、元はと言えば人が招き起こしたことなのだ。短絡的な考えではあるが、根源である人を失えば解決してしまう。この世界に及ぼしている悪影響の全てが。
「人を滅ぼすだと!それはあまりにも····」
あまりにも身勝手すぎる。リオンは最後まで言葉を口にはしなかった。
その滅ぼした張本人が前方におり、その隣にいるロビンから殺気を帯びた視線を受けたのだ。
「ですから、この大陸には人が存在しません。人の闇の心が魔物を生み出し、世界に歪みを生み出しました。なら、人を滅ぼせが全てが解決するのです」
そう、人と呼ばれる種族が世界に悪影響を及ぼしているのなら、人を滅ぼせばいい。人を取るか世界を取るか。
ラフテリアは世界を取ったのだ。
己を唆し、聖女である役目を阻害し、己の番まで殺した人という者たちなど、必要ないと。
この世界には己とロビンだけが居ればいいと。
「本当に人という生き物は愚かでございます」
シェリーの言葉を同意する言葉が、シェリーの横から聞こえてきた。魔人マリートゥヴァだ。いつの間にかシェリーの横で歩いていた。
「己の欲に翻弄され、過ちに気づかない愚かな生き物。この世界には不要なモノ。私もその昔は愚かでありましたが、今はこの世界の平穏のために、聖女様のために尽くす身であります」
魔人マリートゥヴァはにこやかに笑った。今の有り様が、満足する形だと言わんばかりに。
「ですが、神々はそれを良しとなさらなかった。わたくしが死を、聖女様が生を、与え続けた者たちは死のない生き物に神々が変えてしまわれた。ですから、わたくし達はこの大陸の平穏のみを維持しているのですよ」
ラフテリアは転移で移動できるにも関わらず、この魔の大陸と同じ様にシェリーたちが住む大陸を浄化しなかった理由は神々からの手出しがあったためだ。
神との約束。
ラフテリアを動かす唯一の言葉だ。ラフテリアの後悔であり、ラフテリアが果たす事ができなかった約束だ。
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