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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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シェリーは2日掛けて、国境の都市モルディールが遠目で見えるところまで来た。そう、遠目。上空からモルディールに向かおうとしていたところで、突然シェリーが騎獣であるアマネに声を掛けた。
「アマネ。下に降りて」
いつもなら、街の入口まで騎獣で向かい、そこから徒歩で街の中に入るのだが、今回は街が遠目で目視できる距離で騎獣から降りようとしているのだ。
「シェリー。どうかしたの?」
シェリーの突然の行動にカイルが疑問に思い、声を掛ける。声を掛けられたシェリーはというと、視線を斜め上の空間をせわしなく動かして何かを見ている。
「街の中がおかしいのです」
そう、シェリーはマップ機能を起動していた。そこで、ニールから受けた依頼で、モルディールのギルドマスターと連絡を取るようにと言われ、名前を教えてもらっていたのだ。
『カーラ・シャルール』
女性のギルドマスターと聞いていたので、マップ機能で検索をしたのだ。いつもならその場に赤いピンがマップ上に落ちるのだが、今回は灰色のピンが落ちたのだ。
死亡していれば、そもそもこの世界に存在しないので、ピンは落ちない。
だから、シェリーは『モルディールに存在する人』で検索してみると、遠目に見える街の人口ではあり得ない程の灰色のピンでマップが埋め尽くされたのだ。その中でも赤いピンは見受けられるが、それがわからないほどに灰色で埋め尽くされたのだ。
シェリーは地面に降り立ち、街の方に視線を向ける。しかし、目で見る限りでは何も問題がないように思える。
「ニールさんは連絡が取れないと言っていましたが、本当にそれしか情報はないのでしょうか?」
「シェリー?何がおかしのかな?俺には普通の街にしかみえないけど?」
シェリーのぽそりと独り言のような質問にカイルが何がおかしいのかと聞く。そのカイルの言葉にシェリーはカイルを仰ぎ見る。
「何か知っているのですか?」
いつもなら、知らないのなら知らないと答えるカイルから逆に質問されたことにシェリーは疑問を覚え、不信感をまとわした視線を向ける。
そんな疑われている視線を向けられているカイルはニコリと笑い答えた。
「シェリーも一緒に聞いていたよね。シェリーはルークのことで頭がいっぱいだったみたいだけど、ニールは言っていたよ?」
確かにニールから依頼を受けて欲しいと言われていたとき、シェリーはルークが帰ってくるからと聞く耳を持っていなかった。
「1ヶ月前にモルディールの近くに出現したゴブリンの集落の討伐に行った者達が未だに帰ってこないと、2週間前にCランクの者を送ったけど、その者たちも戻って来ないって。第7師団も動いたらしいけど、その師団の者たちも行方がわからないと。エミリオ第7師団長も行方知れずだとね」
「·····」
シェリーは頭に手を当てて思い出してみるも、全く記憶がない。ルークが帰ってくるということがシェリーにとって最大限に優先しなければならないことだったからだ。
カイルの話からすると、街の住人と討伐に行った冒険者、それに第7師団のいくつかの部隊が行方がわからないということになる。もし、それが灰色のピンだとするとこの街の中を埋め尽くす数にもうなずける。
「はぁ、状況はわかりませんが」
シェリーは覚えていなかったことは仕方がないと、シェリーが見た状況をカイルに説明をしだした。
「おそらく街の人も行方不明の冒険者も第7師団の人たちも街の中にいます。ただ、普通の状態ではなさそうです。あと、5人程でしょうか。普通の人が一箇所に居ます」
「5人?たった5人で街を?いや、できなくもないが、師団の半分を相手に?これは本当に普通じゃないな」
カイルの言葉にシェリーは目を見開く。師団の半分っということは、国は本腰を入れて調査に入ろうとして失敗したのだと。
そこまでシェリーは考えて思ってしまった。これは国の尻ぬぐいなのではと。
大規模に軍が動いたのだ。国が知らないということではなく、第7師団の半分の消息が不明となり、次に送り込むことをためらったのだ。
そして、この国にいるSランクの冒険者であるカイルと何かと問題を起こすシェリーを向かわせようとしたのだろうと
となると····。
「カイルさん、帰っていいですか?」
突然シェリーの帰る宣言が出た。遠出をすると口癖のように家に帰るというシェリーに慣れているカイルも流石にこのタイミングは早すぎるのではと感じた。
「シェリーどうしたのかな?忘れ物?」
「ええ、クソ狐をぶん殴りに行こうと思いまして」
この言葉にカイルはシェリーがここに行くように仕向けさせられたことに気がついたことを理解してしまった。頭の回るシェリーのことだ、いつかは気がつくだろうと思っていたが、案外早かったらしい。
そこで、カイルは懐から出した一枚の手紙を無言でシェリーに差し出す。
手紙を受け取ったシェリーは不審げに受け取り中身を開けて読む。
「カイルさん。さっさと終わらしましょう」
シェリーの態度が一変し、手紙を大事そうに鞄にしまい。街に向かって歩き出した。
これもニールのシェリー対策だった。シェリーがごねだしたらルークの手紙を渡すようにと。
ニールは用意周到だった。伊達に長年シェリーに依頼を受けさせていない。シェリーのブラコン対策は万全だった。
「アマネ。下に降りて」
いつもなら、街の入口まで騎獣で向かい、そこから徒歩で街の中に入るのだが、今回は街が遠目で目視できる距離で騎獣から降りようとしているのだ。
「シェリー。どうかしたの?」
シェリーの突然の行動にカイルが疑問に思い、声を掛ける。声を掛けられたシェリーはというと、視線を斜め上の空間をせわしなく動かして何かを見ている。
「街の中がおかしいのです」
そう、シェリーはマップ機能を起動していた。そこで、ニールから受けた依頼で、モルディールのギルドマスターと連絡を取るようにと言われ、名前を教えてもらっていたのだ。
『カーラ・シャルール』
女性のギルドマスターと聞いていたので、マップ機能で検索をしたのだ。いつもならその場に赤いピンがマップ上に落ちるのだが、今回は灰色のピンが落ちたのだ。
死亡していれば、そもそもこの世界に存在しないので、ピンは落ちない。
だから、シェリーは『モルディールに存在する人』で検索してみると、遠目に見える街の人口ではあり得ない程の灰色のピンでマップが埋め尽くされたのだ。その中でも赤いピンは見受けられるが、それがわからないほどに灰色で埋め尽くされたのだ。
シェリーは地面に降り立ち、街の方に視線を向ける。しかし、目で見る限りでは何も問題がないように思える。
「ニールさんは連絡が取れないと言っていましたが、本当にそれしか情報はないのでしょうか?」
「シェリー?何がおかしのかな?俺には普通の街にしかみえないけど?」
シェリーのぽそりと独り言のような質問にカイルが何がおかしいのかと聞く。そのカイルの言葉にシェリーはカイルを仰ぎ見る。
「何か知っているのですか?」
いつもなら、知らないのなら知らないと答えるカイルから逆に質問されたことにシェリーは疑問を覚え、不信感をまとわした視線を向ける。
そんな疑われている視線を向けられているカイルはニコリと笑い答えた。
「シェリーも一緒に聞いていたよね。シェリーはルークのことで頭がいっぱいだったみたいだけど、ニールは言っていたよ?」
確かにニールから依頼を受けて欲しいと言われていたとき、シェリーはルークが帰ってくるからと聞く耳を持っていなかった。
「1ヶ月前にモルディールの近くに出現したゴブリンの集落の討伐に行った者達が未だに帰ってこないと、2週間前にCランクの者を送ったけど、その者たちも戻って来ないって。第7師団も動いたらしいけど、その師団の者たちも行方がわからないと。エミリオ第7師団長も行方知れずだとね」
「·····」
シェリーは頭に手を当てて思い出してみるも、全く記憶がない。ルークが帰ってくるということがシェリーにとって最大限に優先しなければならないことだったからだ。
カイルの話からすると、街の住人と討伐に行った冒険者、それに第7師団のいくつかの部隊が行方がわからないということになる。もし、それが灰色のピンだとするとこの街の中を埋め尽くす数にもうなずける。
「はぁ、状況はわかりませんが」
シェリーは覚えていなかったことは仕方がないと、シェリーが見た状況をカイルに説明をしだした。
「おそらく街の人も行方不明の冒険者も第7師団の人たちも街の中にいます。ただ、普通の状態ではなさそうです。あと、5人程でしょうか。普通の人が一箇所に居ます」
「5人?たった5人で街を?いや、できなくもないが、師団の半分を相手に?これは本当に普通じゃないな」
カイルの言葉にシェリーは目を見開く。師団の半分っということは、国は本腰を入れて調査に入ろうとして失敗したのだと。
そこまでシェリーは考えて思ってしまった。これは国の尻ぬぐいなのではと。
大規模に軍が動いたのだ。国が知らないということではなく、第7師団の半分の消息が不明となり、次に送り込むことをためらったのだ。
そして、この国にいるSランクの冒険者であるカイルと何かと問題を起こすシェリーを向かわせようとしたのだろうと
となると····。
「カイルさん、帰っていいですか?」
突然シェリーの帰る宣言が出た。遠出をすると口癖のように家に帰るというシェリーに慣れているカイルも流石にこのタイミングは早すぎるのではと感じた。
「シェリーどうしたのかな?忘れ物?」
「ええ、クソ狐をぶん殴りに行こうと思いまして」
この言葉にカイルはシェリーがここに行くように仕向けさせられたことに気がついたことを理解してしまった。頭の回るシェリーのことだ、いつかは気がつくだろうと思っていたが、案外早かったらしい。
そこで、カイルは懐から出した一枚の手紙を無言でシェリーに差し出す。
手紙を受け取ったシェリーは不審げに受け取り中身を開けて読む。
「カイルさん。さっさと終わらしましょう」
シェリーの態度が一変し、手紙を大事そうに鞄にしまい。街に向かって歩き出した。
これもニールのシェリー対策だった。シェリーがごねだしたらルークの手紙を渡すようにと。
ニールは用意周到だった。伊達に長年シェリーに依頼を受けさせていない。シェリーのブラコン対策は万全だった。
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