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25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた
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しおりを挟む「ですから、私は必要ないと····」
シェリーは首を横に振って、魔眼を使うことを拒否する言葉にしていると、頭を下げるリオンを目にしてシェリーは言葉を止めてしまった。
「お願いしたい」
今まで頭を下げる立ち場でなかったリオンがシェリーに対して頭を下げて頼み込んだのだ。
「俺に魔眼を使って欲しい」
と。その言葉にシェリーはため息を吐く。そこまで、頼み込むことなのだろうかと。
「ラースの魔眼には個人差があります。私の魔眼は大公に立つミゲルロディア閣下と同じぐらいだと評価されました。この意味がわかりますか?」
シェリーは頭を下げ続けているリオンに問う。大公に立てる程の魔眼を持っている。その意味はラース公国の全国民を操り、国を守るための神兵に仕立て上げることができると言っているのだ。
「下手をすると死にますよ?」
ただ操るだけというのにシェリーは脅すような言葉を口にした。しかし、シェリー自身は何度か魔眼を使用している。猛将プラエフェクト将軍は勿論のこと、アフィーリア避けとして炎王に、そして、訓練としてカイルにも使用している。
しかし、この3人には共通点がある。そう、3人共レベル200超えの超越者であるということだ。
「それでも構わない」
リオンはシェリーの脅しの言葉に屈せず、それでも使って欲しいと言葉にした。リオンはシェリーの言葉をどこまで本気で捉えているのだろうか。操られるぐらいで死ぬとは思っていないのかもしれない。いや、番であるシェリーからの言葉だ。そして、番であるシェリーから与えられる死であれば、喜んで受け入れてしまえるのかもしれない。
「はぁ」
ただ、シェリーからは了承の返事の代わりに、ため息がこぼれた。そして、腰にある鞄から赤いブローチの様な物を取り出す。それは赤い魔石に金色の装飾が施され、魔石の中にはラース公国の紋章が浮かび上がったものだった。
それにシェリーの魔力を流すと魔石が仄かに光り出した。
『シェリーミディア様どうかされましたか?』
その赤いブローチから声が聞こえてきた。遠く離れたラース公国にいる魔眼の使用を管理していクルバの声だろう。
「次元の悪魔の出現のため魔眼を使用します」
『あの?毎回言わせていただきますが、最近使いすぎではありませんか?』
「····訓練ということで」
シェリーは自分が使いたいと言っているわけではないと、どことなく匂わす言葉を言った。そう、カイルに頼まれ魔眼の抵抗性を上げるための訓練と同じ言い訳をしたのだ。
『そうですか。この事は大公閣下に報告させてもらいますよ。それにしてもギラン共和国にも次元の悪魔が出現したのですか』
恐らくあの壁一面にある大陸の地図上でシェリーの位置を把握しての言葉なのだろう。管理者であるクルバからはシェリーがどこにいるなど、ひと目でわかってしまうのだから。
クルバの報告するという発言にシェリーは思わず聞いてしまった。
「ミゲルロディア大公閣下は何事もなく、お過ごしなのでしょうか?」
シェリー自身がミゲルロディアに大公の座に戻ってくれるように頼んだものの、魔人である彼は何事もなく過ごしているのか、内心半信半疑だったのだ。
『ええ、シェリーミディア様には感謝を。まるで以前のヴァンジェオ城に戻ったようです』
クルバの言葉にシェリーの胸の支えがとれたように、ふわりと笑みを浮かべた。アリスの言葉を信じないわけではなかったけれど、間違った選択肢ではなかったと。
「それは、よかっ····カイルさん、返してください」
リオンは未だに頭をシェリーに向けて下げていたので気が付かなかったが、カイルはシェリーの笑みを目にして思わず、赤いブローチを取り上げたのだ。そう、シェリーの笑みを引き出したここには居ないクルバに嫉妬して、シェリーの魔力で起動している魔道具をシェリーから取り上げたのだ。
取り上げた赤いブローチは直ぐにシェリーの手元に戻ってきたが、カイルから返されたブローチは通信機能は既に途切れており、クルバの声は聞こえることはなかった。赤いブローチを鞄にしまい、シェリーはリオンに声をかける。
「リオンさん。私が魔眼を使ったことで起こる不調を全て治せるわけではないと、理解してください。はっきり言ってリオンさんは魔眼に耐えるように訓練をしていません。それに加え体が耐えきれるレベルには達していません」
レベル100を超えているリオンに対して、それでもレベルが足りないとシェリーは言った。
「ただ、頼りにするであれば、神の加護の一点のみ。それでも私に魔眼を使うように強要をしますか?」
強要。リアンはシェリーに頼んでいる立ち場であるので、強要しているわけではない。しかし、魔眼を使いたくないシェリーからすれば、強要されていることと同じだった。
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