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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 武神アルマが消えた室内で、唯一動けたのは武神アルマと対話をしていたシェリーだけだった。そのシェリーはルークの夕食を配膳し終われば、再びキッチンの方に姿を消して行った。

 なんとも言えない空気が室内に満ちている。今回のことは神から直接、叱咤されたのだ。

 それも武神アルマということは剣神レピダと同様に、それなりに力のある神がわざわざ出てきて神言してきた。そして、力を望む者にとっては剣神レピダと同じぐらい加護を得たい神からの言葉だ。

 炎王は内心本気で神が顕れるとは思っていなかった。光の神ルーチェですら、巫女と呼ばれし者によって呼びかけなければ、この下界には顕れることはない。
 だから、オルクスに対して加護を得ることは簡単にはいかないものだということを、わかってもらうためのパフォーマンスだったと言ってよかった。

 だが、蓋を開けれ見れば、名のある神が直接顕れ苦言を呈してきたのだ。これはかなりキツイものがあるだろう。そう思い炎王はオルクスに視線を向ければ、うつむいており、その表情は窺いしれない。


 その異様な空間を裂くように突如として転移の陣が現れた。そして、転移の陣から出てきたのは、今までシェリーに調べるように言われて数日居なかったスーウェンだった。

「遅くなって、申し訳ございま……何をしているのですか?」

 転移で現れた早々にグレイとオルクスとリオンが床に跪いた姿が目に入ったのだ。それは何をしているか聞きたくもある。

 そして、その異様な空気の空間に更に入ってくる者がいた。

 廊下側の扉が開き、シェリーに言われたとおりに着替えてきたルークがダイニングに入ってきたのだった。

「エンさん!この剣の使い方を教えて欲しいのだけど……」

 ルークは炎王から祝いとしてもらった剣がどうすれば火をまとうのか教えてもらうために、炎王から貰った剣を持って来ていたが、場の空気がおかしいことに気が付き言いどもってしまう。

「ルーちゃん、先に夕食にしようね」

 ルークがダイニングに入ってきたことで、シェリーは場の空気が悪いことなど気にせずに、ルークに食事を勧める。そこに戻ってきたばかりのスーウェンが声をかけた。

「ただいま戻ってきたのですが、何かあったのですか?」

 あまりにもの異様な空気に違和感をかんじたのだろう。

「後でオルクスさんに聞けば良いと思います。それでスーウェンさんは夕食は必要ですか?」

 シェリーはスーウェンの質問には答えず、夕食が必要かどうかを尋ねた。シェリーにとってはこの場の空気が悪いのは彼らの所為であって、シェリーが悪いわけではない。
 そして、現実問題としてルークとオリバーとシェリー、そしてツガイである3人分しか用意していなかったのに、夕食の時間を狙ったかのように訪問してきた炎王とリオン、次いでスーウェンまで戻ってきたのだ。夕食を追加して作らないといけない。

 ちなみにこの場に一切姿をみせていないカイルは勿論シェリーの手伝いとしてキッチンにこもっている。

「ここ数日まともに食事をとっていなかったので、いただきたいです。それから、言われていた連れて行かれた者たちのリストを作成してきましたのですが、どうしましょうか?」

 そう、スーウェンはシェリーに言われて、エルフ族の中で赤い薬によりその身と引き換えに奴隷に落ちたものを把握してくるように頼んでいたのだ。

「今、渡されても困りますので、後で受け取ります」

 シェリーはまだやることがあると言わんばかりに、踵を返そうとするが、そのシェリーをスーウェンが引き止める。

「あの……頼まれた事をやり遂げたので、ご主人様に……褒めて……いただけたら……嬉しく思うのですが」

 美人と言っても過言ではないスーウェンが頬を赤らめ遠慮がちにシェリーに褒めてくれるように願い出た。

 確かに今回のことはシェリーからスーウェンに頼んだことだ。だから、依頼をした者として対価を求められるのは当然のこと。しかし、そのことに不快感を顕にした者がいた。正確には者たちだ。
 スーウェンの言葉に顔を上げ、睨みつけるように視線を投げかけるグレイとオルクスとリオン。

 シェリーはというと、褒めてもらいたいと言われ首を傾げている。褒めると言われても、人を褒めるという行動をしたことがあるのはルークだけで、あとは記憶の彼方にある我が子を褒める佐々木の姿だ。
 だからだろう。シェリーは渋々スーウェンに声をかける。

「スーウェンさん。ありがとうございました。とても助かります」

 と言って、スーウェンの頭をよしよしと撫でたのだ。これは幼子を褒めるときの動作であり、成人した男性を褒める動作ではない。
 このことに一番に反応したのが、オルクスだ。以前シェリーが騎獣の頭を撫でている姿をみてから、撫でて欲しいと言い続け一度だけその願いが叶ったことはあるが、それだけだったのだ。

「シェリー。俺も撫で欲しい!」

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