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26章 建国祭
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クストの言葉にシェリーは思い出したかのように、カバンから書類が入っている大きめの封筒を取り出し、ヒューレクレトに差し出す。
「これは奴隷にされたエルフ族の一覧です。今王都の中に居ないのであれば、入れないように徹底させてください。しかし第6師団長さん、仕事が早いですね。王都内にエルフ族の奴隷がいるかどうかを早々に調べ上げられるなんて」
やはり、ナヴァル公爵邸の敷地内で転移門の固定が行われたことには相当な危機感を抱いたのだろう。
「ユーフィアに頼めば直にわかった。奴隷の制御石の波長は独特らしいから、その中で高魔力者はいないと言われた」
魔神リブロの加護を得たユーフィアには王都内の魔力感知など容易いことなのだろう。
「だから、転移門で王都内に現れる次元の悪魔は存在しない」
転移門ではと条件をつけたのは勿論名前の由来となっている次元の狭間から突然現れるからだ。そうなれば、武力を行使して倒すしかない。
「そうですね。ですが、第5師団長さんの言葉の意味を考えてください。人とは逸脱した力を使おうとして爆ぜた肉体から悪魔のような異臭がしたと」
「ん?さっきも言ったがその話は初耳だ。ヒューレクレト。これを上に挙げて無視をされたのか?」
険しい表情のクストがヒューレクレトに尋ねる。クストも薄々ながらこのことに対する危機感を感じているようだ。
「無視というか。今はそんなことに構っている場合ではないと言われた。国王陛下にも取り次いでもらおうとしたが、忙しいと言われて断れ……何とかアポイントメントをとって、イスラ・ヴィエント閣下に相談すれば、今が肝心なときだから動けとしか言われず、追い返されてしまったのだ」
イスラ・ヴィエントという御仁も薄々何かを掴んでいるのだろう。討伐戦に参戦せずに静観していたと言われる人物は、もしかしたら初めからその討伐戦が何者かの意図によって作られた戦いだとわかっていたのかもしれない。
しかし、ヒューレクレトはそれなりに動いていたようだ。だが、所詮一師団長の言葉を真剣に取り合ってくれたのは、今では外部の者であるイスラ・ヴィエントという御仁だけだった。
「恐らくその異常な力を得た者たちは、次元の悪魔に成る者たちだと予想できました。これはオリバーにも確認したことで間違いはないと思います。何らかの力を得た者たちが次元の悪魔に成るということです」
「「な!」」
「え?聞いていないけど?」
「それって少し無理がありますよね?」
「今度は人が次元の悪魔に成るって言っているのか?」
「そもそも頭はどこに行ったんだ?」
シェリーの言葉にクストとヒューレクレト以外からも声が上がった。それは事が起こったときに、カイル以外がシェリーの側にいなかったために、他の4人は何も知らず、カイルから距離を取っていたため情報の共有が行われていなかった為に起こった当然の結果だった。
「帝国の者たちの排除は一番に掲げ、行わなければならないことです」
シェリーはそう締めくくった。人が次元の悪魔に成ると聞いても、実際に変化途中を見たグレイとオルクスは多少なりとも理解はできるようだが、他のクストとヒューレクレトは難しいそうな顔をしており、スーウェンとリオンは困惑したような顔をしている。
「嬢ちゃん。あの魔導師長がそう言ったのか?」
クストが【あの魔導師長】と称したのは勿論オリバーのことである。
「そうと言いましたが?」
シェリーは何度も同じことを言わせないで欲しいと言葉にする。だが、クストとヒューレクレトからすれば、その事が大事だったようで、段々焦ったような顔色になってきた。
「おい、祭り本番まで残り1日半だ。時間がないぞ。どうするクスト」
「警備の配置を見直そうにも次元の悪魔となると戦える者は決まってくるからな」
師団長である二人は真剣に考え始めたが、祭りの期間は10日程あり、決して次元の悪魔が現れるとは決まってはいない。しかし、突然次元の悪魔を送り込んできた帝国に絶対という言葉はあり得ず、その対策は打っておかないといけない。
だが、残り1日半で何ができるだろうかということだ。次元の悪魔の核を破壊することのできる存在もまた、ほんの一握りしかいない。
「ユーフィアさんに通信機を作って貰えばいいのでは?」
シェリーがどうすべきか思案している二人に対策案を言った。
そして、ユーフィアに作ってもらったスマホモドキを二人に見せる。
「これはルーちゃん専用に繋がる通信機です。ユーフィアさんなら一定周波数で通信できる物を作れるのではないのでしょうか?これを隊長クラスに持たせて、何かあれば通信機で報告し、師団長さんたちが対応するでいいのではないのですか?」
その言葉に師団長二人は顔を合わせて、二人の声が重なった。
「「通信機という物の詳しい説明を!」」
1日でユーフィアがどれほど量産できるか分からないが、通信機が第5師団と第6師団に導入されることは確定したようだ。
「これは奴隷にされたエルフ族の一覧です。今王都の中に居ないのであれば、入れないように徹底させてください。しかし第6師団長さん、仕事が早いですね。王都内にエルフ族の奴隷がいるかどうかを早々に調べ上げられるなんて」
やはり、ナヴァル公爵邸の敷地内で転移門の固定が行われたことには相当な危機感を抱いたのだろう。
「ユーフィアに頼めば直にわかった。奴隷の制御石の波長は独特らしいから、その中で高魔力者はいないと言われた」
魔神リブロの加護を得たユーフィアには王都内の魔力感知など容易いことなのだろう。
「だから、転移門で王都内に現れる次元の悪魔は存在しない」
転移門ではと条件をつけたのは勿論名前の由来となっている次元の狭間から突然現れるからだ。そうなれば、武力を行使して倒すしかない。
「そうですね。ですが、第5師団長さんの言葉の意味を考えてください。人とは逸脱した力を使おうとして爆ぜた肉体から悪魔のような異臭がしたと」
「ん?さっきも言ったがその話は初耳だ。ヒューレクレト。これを上に挙げて無視をされたのか?」
険しい表情のクストがヒューレクレトに尋ねる。クストも薄々ながらこのことに対する危機感を感じているようだ。
「無視というか。今はそんなことに構っている場合ではないと言われた。国王陛下にも取り次いでもらおうとしたが、忙しいと言われて断れ……何とかアポイントメントをとって、イスラ・ヴィエント閣下に相談すれば、今が肝心なときだから動けとしか言われず、追い返されてしまったのだ」
イスラ・ヴィエントという御仁も薄々何かを掴んでいるのだろう。討伐戦に参戦せずに静観していたと言われる人物は、もしかしたら初めからその討伐戦が何者かの意図によって作られた戦いだとわかっていたのかもしれない。
しかし、ヒューレクレトはそれなりに動いていたようだ。だが、所詮一師団長の言葉を真剣に取り合ってくれたのは、今では外部の者であるイスラ・ヴィエントという御仁だけだった。
「恐らくその異常な力を得た者たちは、次元の悪魔に成る者たちだと予想できました。これはオリバーにも確認したことで間違いはないと思います。何らかの力を得た者たちが次元の悪魔に成るということです」
「「な!」」
「え?聞いていないけど?」
「それって少し無理がありますよね?」
「今度は人が次元の悪魔に成るって言っているのか?」
「そもそも頭はどこに行ったんだ?」
シェリーの言葉にクストとヒューレクレト以外からも声が上がった。それは事が起こったときに、カイル以外がシェリーの側にいなかったために、他の4人は何も知らず、カイルから距離を取っていたため情報の共有が行われていなかった為に起こった当然の結果だった。
「帝国の者たちの排除は一番に掲げ、行わなければならないことです」
シェリーはそう締めくくった。人が次元の悪魔に成ると聞いても、実際に変化途中を見たグレイとオルクスは多少なりとも理解はできるようだが、他のクストとヒューレクレトは難しいそうな顔をしており、スーウェンとリオンは困惑したような顔をしている。
「嬢ちゃん。あの魔導師長がそう言ったのか?」
クストが【あの魔導師長】と称したのは勿論オリバーのことである。
「そうと言いましたが?」
シェリーは何度も同じことを言わせないで欲しいと言葉にする。だが、クストとヒューレクレトからすれば、その事が大事だったようで、段々焦ったような顔色になってきた。
「おい、祭り本番まで残り1日半だ。時間がないぞ。どうするクスト」
「警備の配置を見直そうにも次元の悪魔となると戦える者は決まってくるからな」
師団長である二人は真剣に考え始めたが、祭りの期間は10日程あり、決して次元の悪魔が現れるとは決まってはいない。しかし、突然次元の悪魔を送り込んできた帝国に絶対という言葉はあり得ず、その対策は打っておかないといけない。
だが、残り1日半で何ができるだろうかということだ。次元の悪魔の核を破壊することのできる存在もまた、ほんの一握りしかいない。
「ユーフィアさんに通信機を作って貰えばいいのでは?」
シェリーがどうすべきか思案している二人に対策案を言った。
そして、ユーフィアに作ってもらったスマホモドキを二人に見せる。
「これはルーちゃん専用に繋がる通信機です。ユーフィアさんなら一定周波数で通信できる物を作れるのではないのでしょうか?これを隊長クラスに持たせて、何かあれば通信機で報告し、師団長さんたちが対応するでいいのではないのですか?」
その言葉に師団長二人は顔を合わせて、二人の声が重なった。
「「通信機という物の詳しい説明を!」」
1日でユーフィアがどれほど量産できるか分からないが、通信機が第5師団と第6師団に導入されることは確定したようだ。
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