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26章 建国祭
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イスラ・ヴィエントはクロードの事を化け物と称したが、それは逸脱した異形の者よいう意味合いではなく、憧れというニュアンスの響きがあった。
「わしの立場上勝手なことは許されなかったが、珍しい黒狼ということで、数年だけは共にいることを許されたのじゃ。アヤツの話は本当に興味深かった」
黒髪の老人は昔を懐かしむように赤い瞳を細めて話す。
「異界とはどのようなところなのかのぅ」
いや、シェリーを見定めるように見ていた。異界という言葉にカイルが反応し、思わずシェリーの手を握る。
「想像し難いと思っておったら、ギラン共和国がその姿を模していると聞き、アヤツと共に行けば、その押し迫るような圧迫感のある街並み、いやはやなんとも言葉にしがたい世界じゃな」
いったい何を言いたいのだろうか。異界に興味があるという話ではないだろう。
「水龍アマツ。古の英雄が作りたかった国とはどういうものだったのだろうかのぅ。エン・グラシアール。第一線は退いているもののその影響力は健在じゃ。時々この国にも訪れているようじゃが、あれ程の御仁が数年前から頻繁に訪れる理由はなんじゃろなぁ」
イスラ・ヴィエントは何かに気づいているのかもしれない。長きに渡って世界が変革者をこの世界に招いていることを。
「そして、シェリー・カークスにユーフィア・ナヴァル。アヤツが死んでこの国は停滞した。だが、ソナタ達がこの国に来て再び動き出した。これはなんじゃろうなぁ」
ピンポイントに変革者を言い当ててきた。それもクロードが居なくなった国はそれまでと違っていたかのように言った。
「第0師団。これはマルス帝国、ラース公国、グローリア国を危険視して作ったものじゃ。これは大いに機能した。人族が多い国に潜り込むのは人族の兵士が理に適っておる。一番危険視したのは勿論グローリア国じゃ。あの国民性は恐ろしいものを感じた。神の力を複数持つ者たちをだ。グローリア国が本気で攻めてくれば、帝国も共和国も王国も食いつぶされただろう。これで生き残るのはモルテとラースだけじゃな」
クロードは第0師団を帝国の監視のためと言っていたが、それは仕事の一つであったようだ。それはそうだろう。師団と言えば、1万規模だ。その人数を帝国一国の為に使うには少々規模が多すぎるのだ。
しかし、魔導王国グローリアも敵わないと評価される不死の王が王であるモルテ国と神の目を持つラース公国はイスラ・ヴィエントの中ではどのように見えているのだろう。
「百獣は国内とギラン共和国の情報収集が目的で作られたのじゃ。これも大いに機能した。もし、今も百獣が存在しておれば、帝国にいいように国民を利用されることはなかったであろう」
クロードが采配した周辺国と国内に対する情報収集する組織は完璧だったようだ。情報をどれだけ正確に素早く集められるかが、この強国が連なる大陸北部で生き残る手段だと考えたのだろう。
だが、ここにシャーレン精霊王国とこの国の南に位置するヴィリス国に対しては何も対策はされていない。
「ヴィリス国に対しての対策はなされなかったのですね」
シェリーはこのシーラン王国の南に隣接する国の名を上げた。この国の名だけを上げたのは勿論、1000年前に呪いを受けた王と同じく1000年前に魔導王に叩き潰されたエルフ神聖王国の残骸は敵視するまでもなかったということなのだろう。
ただ、シェリーはヴィリス国を敵視していない理由はわかていた、だがヴィリス国出身であるイスラ・ヴィエントの口から聞きたかったのだ。
ヴィリス国の在り方を。
するとイスラ・ヴィエントはシェリーの言葉がさもおかしいと言わんばかりに声を上げて笑う。
「ヴィリス国であるか。クロードからは何か聞いておるかのぅ」
「ヴィリス国が動くのであれば仕方がないと」
シェリーは以前クロードが言っていた言葉を言った。
「そうじゃ、仕方がない。祖国ヴィリス国は依頼されればどのような要人でも暗殺を行うシュピンネ族の生業じゃ。だが、依頼されなければ影のように身を潜めて生きる者たちじゃ。敵視すればその依頼主ごと葬る国民性であるが故に関わらないことが一番良いのじゃ」
ヴィリス国は国を上げて暗殺業を生業とする種族だった。だから関わらないことが一番いいし、敵視するなんて以ての外なのだ。
「では、私がイスラ様に仕事を頼む事はできますか?」
シェリーの一言にシェリーのツガイたちが動揺する。まさかシェリーから暗殺の仕事を依頼したいと目の前の老人に言うとは思いもよらなかったからだ。
「否。わしは現役を引退した老害じゃ。顧問ぐらいが丁度よい。それで、わしの質問には答えてくれんのか?聖女シェリーよ」
「わしの立場上勝手なことは許されなかったが、珍しい黒狼ということで、数年だけは共にいることを許されたのじゃ。アヤツの話は本当に興味深かった」
黒髪の老人は昔を懐かしむように赤い瞳を細めて話す。
「異界とはどのようなところなのかのぅ」
いや、シェリーを見定めるように見ていた。異界という言葉にカイルが反応し、思わずシェリーの手を握る。
「想像し難いと思っておったら、ギラン共和国がその姿を模していると聞き、アヤツと共に行けば、その押し迫るような圧迫感のある街並み、いやはやなんとも言葉にしがたい世界じゃな」
いったい何を言いたいのだろうか。異界に興味があるという話ではないだろう。
「水龍アマツ。古の英雄が作りたかった国とはどういうものだったのだろうかのぅ。エン・グラシアール。第一線は退いているもののその影響力は健在じゃ。時々この国にも訪れているようじゃが、あれ程の御仁が数年前から頻繁に訪れる理由はなんじゃろなぁ」
イスラ・ヴィエントは何かに気づいているのかもしれない。長きに渡って世界が変革者をこの世界に招いていることを。
「そして、シェリー・カークスにユーフィア・ナヴァル。アヤツが死んでこの国は停滞した。だが、ソナタ達がこの国に来て再び動き出した。これはなんじゃろうなぁ」
ピンポイントに変革者を言い当ててきた。それもクロードが居なくなった国はそれまでと違っていたかのように言った。
「第0師団。これはマルス帝国、ラース公国、グローリア国を危険視して作ったものじゃ。これは大いに機能した。人族が多い国に潜り込むのは人族の兵士が理に適っておる。一番危険視したのは勿論グローリア国じゃ。あの国民性は恐ろしいものを感じた。神の力を複数持つ者たちをだ。グローリア国が本気で攻めてくれば、帝国も共和国も王国も食いつぶされただろう。これで生き残るのはモルテとラースだけじゃな」
クロードは第0師団を帝国の監視のためと言っていたが、それは仕事の一つであったようだ。それはそうだろう。師団と言えば、1万規模だ。その人数を帝国一国の為に使うには少々規模が多すぎるのだ。
しかし、魔導王国グローリアも敵わないと評価される不死の王が王であるモルテ国と神の目を持つラース公国はイスラ・ヴィエントの中ではどのように見えているのだろう。
「百獣は国内とギラン共和国の情報収集が目的で作られたのじゃ。これも大いに機能した。もし、今も百獣が存在しておれば、帝国にいいように国民を利用されることはなかったであろう」
クロードが采配した周辺国と国内に対する情報収集する組織は完璧だったようだ。情報をどれだけ正確に素早く集められるかが、この強国が連なる大陸北部で生き残る手段だと考えたのだろう。
だが、ここにシャーレン精霊王国とこの国の南に位置するヴィリス国に対しては何も対策はされていない。
「ヴィリス国に対しての対策はなされなかったのですね」
シェリーはこのシーラン王国の南に隣接する国の名を上げた。この国の名だけを上げたのは勿論、1000年前に呪いを受けた王と同じく1000年前に魔導王に叩き潰されたエルフ神聖王国の残骸は敵視するまでもなかったということなのだろう。
ただ、シェリーはヴィリス国を敵視していない理由はわかていた、だがヴィリス国出身であるイスラ・ヴィエントの口から聞きたかったのだ。
ヴィリス国の在り方を。
するとイスラ・ヴィエントはシェリーの言葉がさもおかしいと言わんばかりに声を上げて笑う。
「ヴィリス国であるか。クロードからは何か聞いておるかのぅ」
「ヴィリス国が動くのであれば仕方がないと」
シェリーは以前クロードが言っていた言葉を言った。
「そうじゃ、仕方がない。祖国ヴィリス国は依頼されればどのような要人でも暗殺を行うシュピンネ族の生業じゃ。だが、依頼されなければ影のように身を潜めて生きる者たちじゃ。敵視すればその依頼主ごと葬る国民性であるが故に関わらないことが一番良いのじゃ」
ヴィリス国は国を上げて暗殺業を生業とする種族だった。だから関わらないことが一番いいし、敵視するなんて以ての外なのだ。
「では、私がイスラ様に仕事を頼む事はできますか?」
シェリーの一言にシェリーのツガイたちが動揺する。まさかシェリーから暗殺の仕事を依頼したいと目の前の老人に言うとは思いもよらなかったからだ。
「否。わしは現役を引退した老害じゃ。顧問ぐらいが丁度よい。それで、わしの質問には答えてくれんのか?聖女シェリーよ」
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