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26章 建国祭
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「見つけた!」
一番最初に駆け出したオルクスは公都の街の中を駆け抜け、一直線に走ってきたところに、4メル級の黒い巨体を発見したのだ。偶然のように思える行動だが、獣人としての本能が敵を見出していた。
その巨体に近づくために更に速度を上げるオルクス。雷電をまといながら、青い鞘から鈍色の大剣を抜き、黒い巨体に叩きつける。しかし、赤い血管のような紋様が浮き出た太い腕に阻まれ、オルクスの刃は巨体の肉体には届くことは無く、弾かれてしまった。
弾かれてしまったオルクスは体勢を整えながら地面に着地し、再び大剣を振るい次元の悪魔の片腕を叩き切る。そして、右腕を引き、突きの構えを取り、その右腕を勢いをつけて、巨体の中央を突き刺すように、剣を放った。
「捉えた!」
オルクスは第6師団の詰め所にグレイと共に通い、次元の悪魔との戦い方を教えてもらっていたのだ。そう、次元の悪魔の核を貫き破壊する技を。
技を放った瞬間。オルクスは見てしまった。巨体の腹部の中央に開眼した血のように真っ赤な一つの眼球を。
そしてオルクスは力なく地面の上に倒れていった。
その姿を駆けつけてきたリオンが遠目で見ていた。ただ、オルクスが何で倒れたのか理解できなかった。遠目ではオルクスの倍はありそうな次元の悪魔に攻撃されたようにも見えず、ただオルクスが崩れ落ちたのだ。
しかし、リオンが取る行動は変わらない。己の力を解放すべく、一つ息を吐き己の枷を一つ外す。
黒かった髪は一瞬で白くなり、白かった二本の角は赤く染まっていった。
リオンは刀を抜き、青く澄んだ刀身を標的に向けて構える。眼の前にある標的を殺す。これがリオンがすべきこと。
鬼化したリオンは標的に向かって刀を振り下ろす。だが、その刀は鈍く光る金属によって阻まれてしまった。
その金属の塊が己に向かって振り下されるが、構わず相手の首を斬るために、横に一線に振るうも、お相手は身を屈め青い刀身を避ける。
身を屈めた相手は己の背後に素早く回り込み、逆に己の首を狙うように鈍色に光る金属が迫ってくる。リオンはそれが鬱陶しいと左手に青い炎をまとわせ、鈍色の金属を叩き折ろうとするも、弾き返すだけに留まった。
「チッ!」
相手がチョロチョロと動くことにイライラが募ってきたのかリオンから舌打ちが聞こえてくる。
「さっさと死ね!」
相手に中々己の刀が通らないことに、苛ついてきたリオンはもう一段回、己の力を解放しようと右手を……リオンは己の右手を見て驚くように目を見開いた。右手には蔦のような物が絡みつき身動きがとれないようになっていたのだ。
このままでは、ヤられるのは己の方だと、鈍色の金属を持った者に視線を向けるとそのモノも蔦のような物に全身を絡め取られ、身動きがとれないようになっていた。
そして、ふと思ったのだ。オルクスのヤツは蔦に巻かれて何をしているのだと。
「グレイ。この二人はどうすればいいのでしょう?」
遠くの方からスーウェンの声が聞こえてきた。ただ、グレイに話しかけているようだが、スーウェンもグレイの姿もリオンからは確認出来ない。いや、リオンも全身を蔦に動きを封じられ、首を回すこともできない状況になっていた。
「わふっ」
何やら動物の鳴き声のような音がリオンの耳を掠め、視線だけでその音をたどれば、赤い獣が地面に横たわった黒い巨体の上に立っている。
そして、その赤い獣が巨体から地面に降り立とうとした時に姿が変化して、見慣れた赤髪の金狼獣人へと姿が変わったのだった。
「グレイ」
思わずリオンはその人物の名前を呼ぶ。グレイが乗っていたものはどう見ても、標的にしていた次元の悪魔にしか見えない。
ならば、己が殺そうとしていたモノは何だったのか。
確認せずともわかりきったこと。それは己と同じ様に蔦に絡められているオルクスだとリオンは認識した。
そうリオンとオルクスは次元の悪魔の魔眼に操られ殺し合いをさせられていたのだ。そもそも次元の悪魔を相手にしているのであれば、おかしなことに気が付かなければならなかったのだ。
次元の悪魔に武器を持つ個体は存在していない。次元の悪魔に首などそもそも存在していない。そして、遠目から見ても4メルはありそうな次元の悪魔だと認識したにも関わらず、人と戦うように戦っていたことにすら気がついていなかったのだ。
己が操られていることにすら気がついていない。これが魔眼の恐ろしさであった。
「あー。スーウェン。これ外してくれないか?」
リオンと同じく次元の悪魔の魔眼から解放されたオルクスがスーウェンに蔦を解いてほしいという。だが、スーウェンの視線はグレイを見るばかりで、オルクスの声が聞こえていないかのように無視をしている。
「あのな。オルクスに、リオン。魔眼に抵抗する術を持っていないお前たちが先行してどうする。相手が魔眼持ちかどうか確認する能力がないのなら、ちゃんとシェリーの指示に従え!」
一番年下であり一番弱いグレイからオルクスとリオンは説教されるのであった。
一番最初に駆け出したオルクスは公都の街の中を駆け抜け、一直線に走ってきたところに、4メル級の黒い巨体を発見したのだ。偶然のように思える行動だが、獣人としての本能が敵を見出していた。
その巨体に近づくために更に速度を上げるオルクス。雷電をまといながら、青い鞘から鈍色の大剣を抜き、黒い巨体に叩きつける。しかし、赤い血管のような紋様が浮き出た太い腕に阻まれ、オルクスの刃は巨体の肉体には届くことは無く、弾かれてしまった。
弾かれてしまったオルクスは体勢を整えながら地面に着地し、再び大剣を振るい次元の悪魔の片腕を叩き切る。そして、右腕を引き、突きの構えを取り、その右腕を勢いをつけて、巨体の中央を突き刺すように、剣を放った。
「捉えた!」
オルクスは第6師団の詰め所にグレイと共に通い、次元の悪魔との戦い方を教えてもらっていたのだ。そう、次元の悪魔の核を貫き破壊する技を。
技を放った瞬間。オルクスは見てしまった。巨体の腹部の中央に開眼した血のように真っ赤な一つの眼球を。
そしてオルクスは力なく地面の上に倒れていった。
その姿を駆けつけてきたリオンが遠目で見ていた。ただ、オルクスが何で倒れたのか理解できなかった。遠目ではオルクスの倍はありそうな次元の悪魔に攻撃されたようにも見えず、ただオルクスが崩れ落ちたのだ。
しかし、リオンが取る行動は変わらない。己の力を解放すべく、一つ息を吐き己の枷を一つ外す。
黒かった髪は一瞬で白くなり、白かった二本の角は赤く染まっていった。
リオンは刀を抜き、青く澄んだ刀身を標的に向けて構える。眼の前にある標的を殺す。これがリオンがすべきこと。
鬼化したリオンは標的に向かって刀を振り下ろす。だが、その刀は鈍く光る金属によって阻まれてしまった。
その金属の塊が己に向かって振り下されるが、構わず相手の首を斬るために、横に一線に振るうも、お相手は身を屈め青い刀身を避ける。
身を屈めた相手は己の背後に素早く回り込み、逆に己の首を狙うように鈍色に光る金属が迫ってくる。リオンはそれが鬱陶しいと左手に青い炎をまとわせ、鈍色の金属を叩き折ろうとするも、弾き返すだけに留まった。
「チッ!」
相手がチョロチョロと動くことにイライラが募ってきたのかリオンから舌打ちが聞こえてくる。
「さっさと死ね!」
相手に中々己の刀が通らないことに、苛ついてきたリオンはもう一段回、己の力を解放しようと右手を……リオンは己の右手を見て驚くように目を見開いた。右手には蔦のような物が絡みつき身動きがとれないようになっていたのだ。
このままでは、ヤられるのは己の方だと、鈍色の金属を持った者に視線を向けるとそのモノも蔦のような物に全身を絡め取られ、身動きがとれないようになっていた。
そして、ふと思ったのだ。オルクスのヤツは蔦に巻かれて何をしているのだと。
「グレイ。この二人はどうすればいいのでしょう?」
遠くの方からスーウェンの声が聞こえてきた。ただ、グレイに話しかけているようだが、スーウェンもグレイの姿もリオンからは確認出来ない。いや、リオンも全身を蔦に動きを封じられ、首を回すこともできない状況になっていた。
「わふっ」
何やら動物の鳴き声のような音がリオンの耳を掠め、視線だけでその音をたどれば、赤い獣が地面に横たわった黒い巨体の上に立っている。
そして、その赤い獣が巨体から地面に降り立とうとした時に姿が変化して、見慣れた赤髪の金狼獣人へと姿が変わったのだった。
「グレイ」
思わずリオンはその人物の名前を呼ぶ。グレイが乗っていたものはどう見ても、標的にしていた次元の悪魔にしか見えない。
ならば、己が殺そうとしていたモノは何だったのか。
確認せずともわかりきったこと。それは己と同じ様に蔦に絡められているオルクスだとリオンは認識した。
そうリオンとオルクスは次元の悪魔の魔眼に操られ殺し合いをさせられていたのだ。そもそも次元の悪魔を相手にしているのであれば、おかしなことに気が付かなければならなかったのだ。
次元の悪魔に武器を持つ個体は存在していない。次元の悪魔に首などそもそも存在していない。そして、遠目から見ても4メルはありそうな次元の悪魔だと認識したにも関わらず、人と戦うように戦っていたことにすら気がついていなかったのだ。
己が操られていることにすら気がついていない。これが魔眼の恐ろしさであった。
「あー。スーウェン。これ外してくれないか?」
リオンと同じく次元の悪魔の魔眼から解放されたオルクスがスーウェンに蔦を解いてほしいという。だが、スーウェンの視線はグレイを見るばかりで、オルクスの声が聞こえていないかのように無視をしている。
「あのな。オルクスに、リオン。魔眼に抵抗する術を持っていないお前たちが先行してどうする。相手が魔眼持ちかどうか確認する能力がないのなら、ちゃんとシェリーの指示に従え!」
一番年下であり一番弱いグレイからオルクスとリオンは説教されるのであった。
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