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本編
10話 ドレスの生地の色は
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あれから4日経ちました。結婚式のプランは一般的な挙式と披露宴を兼ねた、ナヴァル家での晩餐のみになりました。ルジオーネさんが何かと喧嘩祭りを加えようとしていましたが、全て、却下をしました。
そして、今日は商人の国であるギラン共和国の商人をわざわざ呼んでいただいたのです。流石公爵家です。
そして、ドレス生地を選ぶ様に言われたのですが、部屋一面に生地を並べられても、選択できません。
マリアに一般的な花嫁のドレスを聞きますと、
「ユーフィア様の好きな生地を選んでいただければいいのですよ。」
「えっと、白がいいとか、相手の色を選ぶとかないのですか?」
「花嫁は自分の好きな色や自分の目や髪の色に合う色合いにします。」
獣人は自己顕示欲が強いのでしょうか。別の侍女も同じ事をいいました。
「やはり自分の毛並みにあった色合いがいいですよね。ユーフィア様なら瞳の青に合わせてもいいかもしれません。」
キツネ獣人の侍女セーラです。黄金色をした髪や耳そして、尻尾の毛並みはキラキラ輝いてます。
因みに彼女は王族の血を引いていますが世界一の侍女になると言って王宮を飛び出してここで勤めているそうです。世界一の侍女ってどのようなものなのでしょうか。
そして、マリアは金狼なので、マリアの毛並みもキラキラしています。
「ドレスの生地は決まったか?」
クストさんが生地に埋もれた部屋に入って来ました。
「旦那様ノックをしてから入って来て下さい。」
「あ。すまん。」
マリアに言われて、廊下側のドアをノックするクストさん・・・。今さらノックされても対応に困ります。
「ドレスの生地はまだ決まっていません。」
「そうなのか?ユーフィアなら何でも似合うと思うけどな。」
「旦那様、何でもという言い方はよくありません。旦那様は決められたのですか?」
「ああ、黒にした。」
「「黒ですか!」」
マリアとセーラは黒がダメなようです。
「あんな縁起でもない色をなぜ選択したのですか。選び直してください。」
マリアが怒っているのでダメらしい。確かに、かの国では喪服の色ではあったけど、そこまで怒らなくていいのではないのでしょうか。
「クストさんの目も黒色ですから、いいのではないのですか?」
「ユーフィア様は黒でも構わないとおっしゃるのですか。」
「?。はい。」
「そうですか。」
マリアは不服のようです。
「ユーフィアはやっぱり青か?好きなのを選んでいいぞ。」
「気になる物があるのですが・・・。」
「「そうなのですか。早く言ってください。」」
マリアとセーラに詰め寄られて来られ、ちょっと、近いです。
「「どれですか。」」
「多分、商品ではないような気がするのですが、あの箱からちらりと見えている白い花びらの生地です。」
「ああ、この生地でございますか。」
商人の方が箱から出して手渡してくれました。
「これは炎国のものでごさいます。」
濃紺の生地に白い五弁の花とその一片の花びらが多数舞い踊る図柄まさに
「夜桜」
「ご存じでしたか。炎国特有の図柄になりますから、あまり他国のご婦人方には興味を示されないもので、箱に仕舞っていたのですよ。」
商人の方はそう言って先程の生地が入っていた箱を持ち上げ
「炎国の物がよろしければこちらに並べましょう。」
空いているスペースに並べてくれました。
春の桜、初夏の紫陽花、夜の蛍火、夏の朝顔、赤い鬼灯、秋の紅葉、赤い万両・千両、そして、雪の六花。
派手さがなく、凛とした空間を作り出すこの独特の図柄の配置。
すべてが、かの国の図柄。私が私になる前の魂の故郷。私だけじゃなかった。私だけが、この異世界に迷い込んだわけじゃなかった。これを作り出した人もこの世界に根付いて生きているんだ。
「これ、全部ください。これは私が買います。」
「ユーフィアが欲しいなら俺が」
クストさんの言葉を手を上げて遮ります。
「これは、私が欲しいのです。だから、私が買うべき物なのです。」
クストさんの目を見てはっきりいいます。しかし、困った顔をされてしまいました。
「ユーフィア様これを」
マリアがハンカチを渡してくれます。何故でしょう?困っているとハンカチを頬に当ててくれました。どうやら、泣いていたようです。
「ありがとう。マリア。」
マリアにお礼をいい。手に持っていた夜桜の図柄の生地を見ます。白く広がる五弁の花を上に下側に舞い踊る花びらがくるように生地の向きを変えます。
ふふふ、思わず笑ってしまいます。この風景はきっと作った人の心の風景だったのでしょう。この世界にない物を作り出した、この世界に迷い込んだ日本人。
私も作りましょう。この世界にはないあの国の物を作りましょう。
「マリアこれに決めました。ドレスはこれで作ってください。」
「これでございますか?」
「ええ。この色クストさんの髪の色に似ているでしょう?」
「ユーフィア!」
「うっ。」
え?なぜ私は生地を選んでクストさんに抱きつかれているのですか?
「じゃあ、俺もユーフィアの金で」
「クストさんは金が似合わなそうだから止めた方がいいですよ。」
「ぐふっ。俺もユーフィアの色がいい」
「床で拗ねないで下さい。青ならいいのではないのですか。」
わかった。青にする。と言いながらクストさんは部屋を出ていきました。え。クストさん黒はいいのですか?
そして、今日は商人の国であるギラン共和国の商人をわざわざ呼んでいただいたのです。流石公爵家です。
そして、ドレス生地を選ぶ様に言われたのですが、部屋一面に生地を並べられても、選択できません。
マリアに一般的な花嫁のドレスを聞きますと、
「ユーフィア様の好きな生地を選んでいただければいいのですよ。」
「えっと、白がいいとか、相手の色を選ぶとかないのですか?」
「花嫁は自分の好きな色や自分の目や髪の色に合う色合いにします。」
獣人は自己顕示欲が強いのでしょうか。別の侍女も同じ事をいいました。
「やはり自分の毛並みにあった色合いがいいですよね。ユーフィア様なら瞳の青に合わせてもいいかもしれません。」
キツネ獣人の侍女セーラです。黄金色をした髪や耳そして、尻尾の毛並みはキラキラ輝いてます。
因みに彼女は王族の血を引いていますが世界一の侍女になると言って王宮を飛び出してここで勤めているそうです。世界一の侍女ってどのようなものなのでしょうか。
そして、マリアは金狼なので、マリアの毛並みもキラキラしています。
「ドレスの生地は決まったか?」
クストさんが生地に埋もれた部屋に入って来ました。
「旦那様ノックをしてから入って来て下さい。」
「あ。すまん。」
マリアに言われて、廊下側のドアをノックするクストさん・・・。今さらノックされても対応に困ります。
「ドレスの生地はまだ決まっていません。」
「そうなのか?ユーフィアなら何でも似合うと思うけどな。」
「旦那様、何でもという言い方はよくありません。旦那様は決められたのですか?」
「ああ、黒にした。」
「「黒ですか!」」
マリアとセーラは黒がダメなようです。
「あんな縁起でもない色をなぜ選択したのですか。選び直してください。」
マリアが怒っているのでダメらしい。確かに、かの国では喪服の色ではあったけど、そこまで怒らなくていいのではないのでしょうか。
「クストさんの目も黒色ですから、いいのではないのですか?」
「ユーフィア様は黒でも構わないとおっしゃるのですか。」
「?。はい。」
「そうですか。」
マリアは不服のようです。
「ユーフィアはやっぱり青か?好きなのを選んでいいぞ。」
「気になる物があるのですが・・・。」
「「そうなのですか。早く言ってください。」」
マリアとセーラに詰め寄られて来られ、ちょっと、近いです。
「「どれですか。」」
「多分、商品ではないような気がするのですが、あの箱からちらりと見えている白い花びらの生地です。」
「ああ、この生地でございますか。」
商人の方が箱から出して手渡してくれました。
「これは炎国のものでごさいます。」
濃紺の生地に白い五弁の花とその一片の花びらが多数舞い踊る図柄まさに
「夜桜」
「ご存じでしたか。炎国特有の図柄になりますから、あまり他国のご婦人方には興味を示されないもので、箱に仕舞っていたのですよ。」
商人の方はそう言って先程の生地が入っていた箱を持ち上げ
「炎国の物がよろしければこちらに並べましょう。」
空いているスペースに並べてくれました。
春の桜、初夏の紫陽花、夜の蛍火、夏の朝顔、赤い鬼灯、秋の紅葉、赤い万両・千両、そして、雪の六花。
派手さがなく、凛とした空間を作り出すこの独特の図柄の配置。
すべてが、かの国の図柄。私が私になる前の魂の故郷。私だけじゃなかった。私だけが、この異世界に迷い込んだわけじゃなかった。これを作り出した人もこの世界に根付いて生きているんだ。
「これ、全部ください。これは私が買います。」
「ユーフィアが欲しいなら俺が」
クストさんの言葉を手を上げて遮ります。
「これは、私が欲しいのです。だから、私が買うべき物なのです。」
クストさんの目を見てはっきりいいます。しかし、困った顔をされてしまいました。
「ユーフィア様これを」
マリアがハンカチを渡してくれます。何故でしょう?困っているとハンカチを頬に当ててくれました。どうやら、泣いていたようです。
「ありがとう。マリア。」
マリアにお礼をいい。手に持っていた夜桜の図柄の生地を見ます。白く広がる五弁の花を上に下側に舞い踊る花びらがくるように生地の向きを変えます。
ふふふ、思わず笑ってしまいます。この風景はきっと作った人の心の風景だったのでしょう。この世界にない物を作り出した、この世界に迷い込んだ日本人。
私も作りましょう。この世界にはないあの国の物を作りましょう。
「マリアこれに決めました。ドレスはこれで作ってください。」
「これでございますか?」
「ええ。この色クストさんの髪の色に似ているでしょう?」
「ユーフィア!」
「うっ。」
え?なぜ私は生地を選んでクストさんに抱きつかれているのですか?
「じゃあ、俺もユーフィアの金で」
「クストさんは金が似合わなそうだから止めた方がいいですよ。」
「ぐふっ。俺もユーフィアの色がいい」
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