6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴

文字の大きさ
30 / 78
謎の少女襲来編

5話 マルス帝国に行くには

しおりを挟む
 応接室に行きますと、少女が真っ黒な子供用のドレスを着て、ソファーに座りお茶を飲んでいました。その向かい側にはクストも同じく真っ黒な服を着て外套を羽織って座っていました。そして、ルジオーネさんはいつもの軍服に戻っており、もう一人以前見た蛇人の方がいらっしゃいました。この方も黒い服に黒い外套を羽織っていました。

「お待たせしました。」

 そう言いながら、部屋に入っていきます。

「いえ、時間丁度です。」

 少女は懐中時計を見ながら答えます。少女は立ち上がり私の前に来ます。

「行きましょう。私をコートドラン商会の前に転移してください。」

「いいえ。先に入国管理局に行き、入国と出国の手続きをしてからです。」

「ちっ。」

 またしても、舌打ちをされてしまいました。しかし、これをきちんとしておかないと、後々めんどうなことになるのです。

「ですから、一旦コルバート領の入国管理局に行き、里帰り希望で本日入国し、本日出国するという手続きを行ってからです。」

「本当にマルス帝国は面倒ですね。それで、いいです。」

 納得してくれたようですね。クストが隣に来て手を繋いできました。

「その後はどうするんだ。」

「取り敢えず彼女をコートドラン商会に転移を「それは結構です。」」

 さ、遮られてしまいました。

「入国さえできれば、わたしはルーちゃんのところへ跳びます。」

「一人でですか?」

「自分が付いていきます。」

 そう言ってきたのは、蛇人の人でした。

「先程も言いましたが、邪魔なので付いて来ないで下さい。」

「自分は監視員ですので、邪魔はしません。」

 何を監視する必要があるのですか?

「ルーク君を運ぶ要員って思ってくれたらいいですよ。」

 ルジオーネさんが少女を説得しています。監視員は必要ですか。

「はぁ。取り敢えず転移してください。あと、事が終わったあとの集合場所は何処ですか。」

 そうですね。

「コートドラン商会と私が行く研究施設の中間点の中央広場の噴水前はどうでしょうか?」

「土地勘がないのですけど?」

 そうでした。

「直接ここに戻って来てはダメなのか?出国手続きは終わらせるのだろ?」

 クストが尋ねてきましたが、私が答える前に少女が答えてくれました。

「第6師団長さん、マルス帝国を嘗めてますよね。出入国転移の魔質感知までされているって知らないのですか?」

「マジで!」

 マジです。私が作りましたので、間違いないです。

「では、聖堂教会はどうでしょう。遠くからでも高い鐘楼が見えるのでわかると思います。」

「目立つところですが、仕方がないですね。」

 納得はしてくれたようです。それでは

「まず、コルバート領に跳びます『転移』。」


 コルバート領の領都に転移をしました。9刻18時を過ぎた時刻となり、日が落ち辺りは夕暮れの闇に包まれそうになっています。そして、私たちは転移したところの近くにある入国管理局に向います。

 手続きは問題なく終わり、外に出た少女は

「わたしはルーちゃんを迎えに行きますので、失礼します。」

 そう言って、少女と蛇人の人は転移をしていきました。
 私も行きましょう。帝都の研究施設の私が使用していた部屋へ転移をします。

「『転移』」

 転移した先は真っ暗でした。壁にある明かりをつけるためのスイッチを押し、部屋を明るくします。
 部屋は私がいなくなったままの状態でした。
 ここに残してあるものは全て日本語で書いてあるものなので、読んでも意味がわからず放置されたのでしょう。

「ユーフィア。ここからどうするんだ。」

 クストに問いかけられましたが、クストがいることで問題が発生してしまいました。施設使用者登録をしていない者が施設内を歩くと防御機能が働いて攻撃をしてくるのです。管理室に行き防御機能を一時停止をしなければなりません。それからでないと、製造者のいる部屋を探しに行くことができません。

「私だけで行くこと「ダメだ。」」

 やはり否定されてしまいました。

「使用者登録をしていない者が施設内を歩くと防御機能が反応して、攻撃を受けてしまうのです。先に管理室まで行って、防御機能の一時停止をしなければなりません。管理室まで私一人で「だから、ダメだ。」」

 はぁ。どうしましょう。

「管理室とやらの場所はどこだ。」

「ここから一番遠く、廊下を出て右側の一番端の突き当たりの部屋です。」

「攻撃対象は何に反応するんだ。」

「死角がないように設置された、監視カメラ・・・えーと、写真機のようなもので顔認証を行い登録してある人物か照合し、魔質も合っているか照合します。それに、外れた者が攻撃対象です。」

「それなら、写真機に写らない速さだったら?」

「写らないなら問題ないかと。」

 クストはそれならと言いながら、私を片腕で抱えあげます。え。もしかして、強行突破ですか?
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

処理中です...