458 / 462
458 太陽の聖女
しおりを挟む
「団長に報告してきた。ここが最後だったらしい。これで、今起こっている異形の被害は対処できたということだ」
ルディが団長と連絡をとって戻ってきた。
いや、私たちは既に山を降りていた。なので、合流したと言ったほうが正しい。
そして、ファルが一人山の中で木々を生やしているという状況だった。
「今日中に第一部隊の駐屯地に戻り、明日帰路につく。王都に到着は夕刻とする」
ルディが今後の予定を口にする。
思っていたより早く解決してよかった。
聖女お披露目パーティーには二日の猶予ができた。
これでパーティーでの対策を話し合う時間がもてる。とはいっても、まだ何もわからない状況なのだけど。
「しかし、解決までに時間を要したために、多くの被害を出してしまった。そのことに、団長から直々に全騎士に対して話がある。駐屯地には最低限の騎士を残して王都に帰還するようにとの命令だ」
これは第十一部隊長さんへの言葉だろう。
「ルディ。第一部隊に戻るのは待ってね。ファル様に木を生やしてもらっているから」
凄い勢いで、緑化していっている山を指しながらいう。冬にも関わらず新緑のような葉を茂らせた木々がだ。
これはこれで異様な状態だ。
「それは見ればわかる。それにアンジュが付き合う必要はない」
いや、私はその後にひび割れた空をなんとかするかかりだからね。
というか、今回のことで常闇があらわになったところが多いのではないのだろうか。
そうなると、私一人がこっそりと後始末するのも難しい。
だけど、他の異形や魔物が出てこない内に対処する必要がある。
「ここには、いくつか常闇があるから、ファル様が戻ってきたら、全部閉じるよ」
私は空に浮かんでいる黒いひび割れを指しながら言った。
「あと、今回の各地で暴れた異形が出てきた常闇があると思うのだけど、それは聖女様の初仕事にすればいいと思うんだよ」
これは聖女シェーンの名を売り出すにはいい機会だと思う。今回異形が暴れた各地を巡りながら常闇を閉じて行くのだ。
「ああ、そうだな。アンジュがわざわざ出向いてやる必要はない」
……いや、私がではなくて、聖女シェーンを国民に周知させるためだよ。
「終わったぞ!俺一人だけ働きすぎだろう!」
凄く疲れた感じのファルが戻ってきた。
私は毛皮のコートのポケットから小瓶を取り出す。
「一本いっとく?」
「いらん。そのヤバい薬に頼るような言い方が嫌だ」
好き嫌いは駄目だよ。
私はファルの手に小瓶を握らせた。
「我慢せずに、楽になるといいよ」
「だから、そのヤバい薬を勧める言い方をやめろと言っているんだ!」
文句を言っているファルを背にして、私は小高い山に近づいて行く。
「アンジュ」
あ、不安症候群のルディがついてきてしまった。
いや、そこまで遠くに行かないからついてこなくていいよ。
集まっていた場所から、少し離れたところで立ち止まる。
そして両手を小高い山に向かって伸ばした。
今回は常闇を全体に広げずに閉じることを試みる。
流石に明るい時間に、黒い鎖が天を貫くのを人々の目に晒すわけにはいかない。
なんとなくは理解した。ルディの常闇を出現させ消した方法を見てだ。
表は裏であり、裏は表である。
世界は一つである。
常闇は世界の一部。だから消すことはできない。
だから私が行うことは、表は表に裏は裏に分けるだけ。
世界の穴を埋めるのではなく、分ける。
二度と異物が侵入してこないようにだ。
とはいっても、世界が望めば意味がないのだけどね。
世界に光を満たす。闇を打ち消す光をだ。
私の頭上からまばゆい光が放たれ、光の粒が飛び散った。
うぇ?あれ燃えるとかないよね?
私の心配をよそに光の粒は空間に溶けるように消えていく。まるで欠けた世界を補修するように光が固まって消えていくのだ。
今まで一旦常闇を強引に開いていたので、気が付かなかったけど、もしかして思っていた以上に穴の部分が多いのだろうか?
そして光が消え去れば、何事もない世界が広がっていた。
空は冬の色を移しており、山は新緑の色をまとっている。
ファル。違和感が酷いよ。
「これで、完了。今日は美味しいものが食べたいな」
私は頭上の輪っかを掴んで、左目に戻しながら振り返った。
すると背後にいるはずのルディの姿が見えない。視線を下に向けると、何故か跪いていた。
「え?疲れた?」
まぁ、今回は遊撃隊をしていたのでそんなに頑張っていないから疲れていない。だけど、四人を相手にしても余裕だったあの怪神を相手にしていたから、疲れてしまったのかもしれない。
どうしたものかと、視線をみんなの方に向ける。すると、鬼の二人と緑龍以外がぬかるんだ地面に跪いているじゃない。
これは、もしかして……
「太陽の聖痕が、眩しすぎて目がやられたってこと!」
「どうしてアンジュって、外見と中身が合わないのかなぁ」
何故か、残念な感じで言うロゼの声が聞こえてきたのだった。
ルディが団長と連絡をとって戻ってきた。
いや、私たちは既に山を降りていた。なので、合流したと言ったほうが正しい。
そして、ファルが一人山の中で木々を生やしているという状況だった。
「今日中に第一部隊の駐屯地に戻り、明日帰路につく。王都に到着は夕刻とする」
ルディが今後の予定を口にする。
思っていたより早く解決してよかった。
聖女お披露目パーティーには二日の猶予ができた。
これでパーティーでの対策を話し合う時間がもてる。とはいっても、まだ何もわからない状況なのだけど。
「しかし、解決までに時間を要したために、多くの被害を出してしまった。そのことに、団長から直々に全騎士に対して話がある。駐屯地には最低限の騎士を残して王都に帰還するようにとの命令だ」
これは第十一部隊長さんへの言葉だろう。
「ルディ。第一部隊に戻るのは待ってね。ファル様に木を生やしてもらっているから」
凄い勢いで、緑化していっている山を指しながらいう。冬にも関わらず新緑のような葉を茂らせた木々がだ。
これはこれで異様な状態だ。
「それは見ればわかる。それにアンジュが付き合う必要はない」
いや、私はその後にひび割れた空をなんとかするかかりだからね。
というか、今回のことで常闇があらわになったところが多いのではないのだろうか。
そうなると、私一人がこっそりと後始末するのも難しい。
だけど、他の異形や魔物が出てこない内に対処する必要がある。
「ここには、いくつか常闇があるから、ファル様が戻ってきたら、全部閉じるよ」
私は空に浮かんでいる黒いひび割れを指しながら言った。
「あと、今回の各地で暴れた異形が出てきた常闇があると思うのだけど、それは聖女様の初仕事にすればいいと思うんだよ」
これは聖女シェーンの名を売り出すにはいい機会だと思う。今回異形が暴れた各地を巡りながら常闇を閉じて行くのだ。
「ああ、そうだな。アンジュがわざわざ出向いてやる必要はない」
……いや、私がではなくて、聖女シェーンを国民に周知させるためだよ。
「終わったぞ!俺一人だけ働きすぎだろう!」
凄く疲れた感じのファルが戻ってきた。
私は毛皮のコートのポケットから小瓶を取り出す。
「一本いっとく?」
「いらん。そのヤバい薬に頼るような言い方が嫌だ」
好き嫌いは駄目だよ。
私はファルの手に小瓶を握らせた。
「我慢せずに、楽になるといいよ」
「だから、そのヤバい薬を勧める言い方をやめろと言っているんだ!」
文句を言っているファルを背にして、私は小高い山に近づいて行く。
「アンジュ」
あ、不安症候群のルディがついてきてしまった。
いや、そこまで遠くに行かないからついてこなくていいよ。
集まっていた場所から、少し離れたところで立ち止まる。
そして両手を小高い山に向かって伸ばした。
今回は常闇を全体に広げずに閉じることを試みる。
流石に明るい時間に、黒い鎖が天を貫くのを人々の目に晒すわけにはいかない。
なんとなくは理解した。ルディの常闇を出現させ消した方法を見てだ。
表は裏であり、裏は表である。
世界は一つである。
常闇は世界の一部。だから消すことはできない。
だから私が行うことは、表は表に裏は裏に分けるだけ。
世界の穴を埋めるのではなく、分ける。
二度と異物が侵入してこないようにだ。
とはいっても、世界が望めば意味がないのだけどね。
世界に光を満たす。闇を打ち消す光をだ。
私の頭上からまばゆい光が放たれ、光の粒が飛び散った。
うぇ?あれ燃えるとかないよね?
私の心配をよそに光の粒は空間に溶けるように消えていく。まるで欠けた世界を補修するように光が固まって消えていくのだ。
今まで一旦常闇を強引に開いていたので、気が付かなかったけど、もしかして思っていた以上に穴の部分が多いのだろうか?
そして光が消え去れば、何事もない世界が広がっていた。
空は冬の色を移しており、山は新緑の色をまとっている。
ファル。違和感が酷いよ。
「これで、完了。今日は美味しいものが食べたいな」
私は頭上の輪っかを掴んで、左目に戻しながら振り返った。
すると背後にいるはずのルディの姿が見えない。視線を下に向けると、何故か跪いていた。
「え?疲れた?」
まぁ、今回は遊撃隊をしていたのでそんなに頑張っていないから疲れていない。だけど、四人を相手にしても余裕だったあの怪神を相手にしていたから、疲れてしまったのかもしれない。
どうしたものかと、視線をみんなの方に向ける。すると、鬼の二人と緑龍以外がぬかるんだ地面に跪いているじゃない。
これは、もしかして……
「太陽の聖痕が、眩しすぎて目がやられたってこと!」
「どうしてアンジュって、外見と中身が合わないのかなぁ」
何故か、残念な感じで言うロゼの声が聞こえてきたのだった。
31
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする
白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、
12歳の時からの日常だった。
恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。
それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。
ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。
『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、
魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___
(※転生ものではありません) ※完結しました
【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている
おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。
しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。
男爵家の次女マリベルを除いて。
◇素直になれない男女のすったもんだ
◇腐った令嬢が登場したりします
◇50話完結予定
2025.2.14
タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のアメリナは、幼馴染の侯爵令息、ルドルフが大好き。ルドルフと少しでも一緒にいたくて、日々奮闘中だ。ただ、以前から自分に冷たいルドルフの態度を気にしていた。
そんなある日、友人たちと話しているルドルフを見つけ、近づこうとしたアメリナだったが
“俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!”
いつもクールなルドルフが、珍しく声を荒げていた。
うるさい女って、私の事よね。以前から私に冷たかったのは、ずっと嫌われていたからなの?
いつもルドルフに付きまとっていたアメリナは、完全に自分が嫌われていると勘違いし、彼を諦める事を決意する。
一方ルドルフは、今までいつも自分の傍にいたアメリナが急に冷たくなったことで、完全に動揺していた。実はルドルフは、誰よりもアメリナを愛していたのだ。アメリナに冷たく当たっていたのも、アメリナのある言葉を信じたため。
お互い思い合っているのにすれ違う2人。
さらなる勘違いから、焦りと不安を募らせていくルドルフは、次第に心が病んでいき…
※すれ違いからのハッピーエンドを目指していたのですが、なぜかヒーローが病んでしまいました汗
こんな感じの作品ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる