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42 聖騎士同士で付き合うと直ぐ別れるのがジンクス
しおりを挟むこれは由々しき事態だ。ルディと彼らとの間になにかあったのだろうか。何があったのか聞きたいけれど、胡散臭い笑顔のルディは話さなそうだし、彼らもルディの前だと言わなさそうだし、やっぱりファルに聞くしかないのかな?
といって、私が彼らとルディの仲を取り持てるほど、コミュニケーション能力が高いかと問われれば、首を傾げてしまう。うん。やっぱりこういうものは適材適所ということで、ファルに任せた方がいい。
それにしても、暇だ。ファルのやっていることを手伝ってあげたほうがいいのでは?いや、今日はルディの機嫌を取るように言われし····でも、暇。ひま。ヒマ。
ルディの機嫌を取ってヒマを潰れることって····よし!
「ルディ。お昼の食材買いにデートしよう」
すると、ルディは読んでいた本をパタリと閉じて、胡散臭い笑顔でにこりと微笑む。
「そうでした。もともと昨日はデートする約束でしたね」
いや、そんな約束はしていなかった。
ルディは私を抱えたまま立ち上がり、本棚に本を戻して、固まっている4人の方に視線だけ向けて言った。
「少し出掛けますが、直ぐに戻ってきます」
そのルディの言葉に4人はコクコクと頷いていると同時にホッと安心したような表情をしていた。
「アンジュは何処に行きたいですか?」
聖騎士団の敷地の中を胡散臭い笑顔のルディと手を繋いで歩いている。勤務の始業時間よりも少し早い時間なので、ちらほら人の姿を見かける。
そんな中、将校が二人並んで、それも手を繋いで歩いているので、どうしても人の視線を集めてしまっている。
「どこと聞かれても以前行った食材屋に行ってほしい」
まぁ、私はその店しか食べ物が売っているお店を知らないだけなのだけど。
しかし、視線が痛いほど突き刺さる。いや、わからないでもない。聖騎士同士で恋人になる人達は少ないのだ。
まぁ、一緒に寝食を共にしていれば、惚れた腫れたなんてこともあるだろう。
現に教会では男女別の棟の宿舎だったが、聖騎士団の宿舎は男女共用だ。そこで、色恋に発展することもあるだろうが、大抵は破綻する。別に仕事に休みがなく、すれ違いが起こって破綻するということではない。物理的な問題だ。
教会に居た時は無く。聖騎士にはあるもの。それは聖痕だ。
聖痕には相性があると言われている。これは教会で教わったことなので信義は定かではないけれど、火と水の聖痕は相性が悪いというものが一番有名だ。
聖痕はその大きさに比例して力も強くなってくるのだが、例えで教えられた話あった。
火の聖痕を全身にまとう男性と右腕だけに水の聖痕がある女性がいた。女性の右腕が男性の聖痕に触れた瞬間、聖痕が燃え皮膚が焼けただれたという話だ。
もう一つ逆の話もされた。火の聖痕より水の聖痕が大きな人物の聖痕同士が触れた場合。火の聖痕に激痛がはしり、聖痕から皮膚が裂けたとい話だ。
だから、夏のくそ暑い日でも皆、隊服の詰め襟を閉め、長袖を着込んでいるのだ。
見せびらかせている馬鹿もいるにはいるけれど。
だから、聖痕には相性があるため、付き合っている二人がいても、直ぐに別れるのだろうなという視線が向けられるのだ。
ちなみに、あの妹が勧めてきた18禁乙女ゲームの聖女はどうなんだという話になるのだが、聖女の聖痕は頭上に掲げる天の日が聖痕に当たるため、聖女の身体には何も影響を及ぼさないのだ。だから、妹曰く聖騎士共と、あんなことやこんなこともできてしまうのだ。
こういうことから、毎日一緒に過ごして一緒のベッドで寝ているルディの聖痕を私は見たことがない。服で隠れるところ以外聖痕があるのであれば、色々気を使うことがあるだろうが、普通に過ごしている分には問題がないのだ。
····普通に過ごしていれば。
手を繋がれたまま、聖騎士団の敷地の外まできた。ここには聖騎士を食い物にしようという商売人···いや、聖騎士たちがよく使うお店が立ち並んでいる。聖騎士団の敷地は王都の北の端にあるため、一般の人が住むには少々不便だが、ここには大抵のお店が揃っているので、敢えて北地区に居を構える人もいるらしい。
王都には5つの騎士団が存在するが、聖騎士団以外は全てが王都の中央付近にあるため、この商業区画は聖騎士団専用と言ってよかった。いや、聖質を持つ騎士たちに他の物に目を向けさせず、ここに押し込めるための区画と言い換えた方が適切かもしれない。
私は以前来た、食料品がところ狭しと並んでいるお店に入り、物色する。
「アンジュ。昨日食べていたものと同じ物を作ることはできますか?」
お昼に何を食べようかと考えていたところにルディが声を掛けてきた。昨日食べていたもの?スパイスカレーのこと?いや、あれは私の好みで作ったものだから、人様の口には合わないと思う。ココナッツミルクがあれば少しマイルドになるのだけど。
「あれ?あれは、とても辛い料理だから、人にはオススメ出来ない」
「そうですか」
うーん。ん?
「おじさん、これは?」
お店のおじさんに大きな麻の袋からこぼれ出ていた物を聞いてみた。
「ああ、これかい?間違えて来ちまったみたいでね。家畜の飼料だ。邪魔だったね。直ぐに引き取ってもらおうと、ここに置きっぱなしにしてしまってたんだよ」
「あ、これください」
玄米って、この世界にあったんだ。
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