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45 聖痕の相性
しおりを挟む「アンジュ。今日は朝から会議があるから、絶対に部屋から出るな」
あれから2日がたった朝。朝食を部屋で食べたあと、ソファで食後のお茶を飲んでいる時にルディから言われた。どうやら昨日の夜中に聖女様が王都に到着したようだ。だから、これからの事を話し合うのだろう。
「え?散歩は?」
「部屋から出るな」
瞳孔が開いた目で見ないで欲しい。ルディが居ないのなら、この前の聖騎士団の敷地の散策の続きをしたいのだけどなぁ。
「散歩」
「アンジュ。この前の事が、懲りてないのか?」
いや、あれは腕輪の転移される範囲を把握していなかったことが問題だったのだ。あれでおおよその範囲はわかったから、今度は大丈夫のはず。
「アンジュ。いい天気だから散歩したいなぁ」
そう言ってへらりと笑う。
····うーん。大抵、このおねだりで、ルディが折れるのだけど、今回は無理そうか。
左腕もまともに使えないから、今回は諦めよう。
仕方がない、今日は人前ではできない魔術の作成でもすることにしよう。まだ、試していないものはたくさんあるからね。
「アンジュが」
ん?
「アンジュがキスして、おねだりしてくれるのなら、午前中の散歩は許可する」
そうきたかー。どうしても散歩がしたいかと言われれば、ノーだ。うん。今回は大人しく部屋にいよう。
「アンジュ。大人しく部屋にいるから、会議に行ってきていいよ」
私はそっとルディの隣から離れる。しかし、腰をガシッと抱えられ引き寄せられた。
「私、今日は大人しくするよ」
右手をルディの胸板に置いて突っ張って距離を保とうと頑張る。
「憂鬱な、どうでもいい会議に行かなければならない俺にはアンジュが足りない」
足りなくはない。朝もぐずぐずと1刻も朝の攻防をしたのだ。足りなくはない!
ファル!いい加減にルディを迎えに来てよ!
距離を保つために頑張っている右手を握られ、引っ張られ抱き寄せられた。
「今日の会議は10時からだから、ファルークスはまだこない」
私の心を読まなくていい!っていうか会議が10時から!午前中の散歩ってことは2時間しか散歩できないじゃない!まだ、見てないところはたくさんあるのに、今日だけで見ることできる?違った。おねだりはしないからね。
顎を上に向けさせられ、ルディに口づけされる。
「ん゛!」
私はおねだりはしないと決めたのに!
唇を割ってぬるりとルディの舌が入り込んでくる。私はそれを舌で追い出そうと
「「!!!」」
互いが目を見開き、舌を絡めたまま固まった。
そっと唇が離れ、ルディは舌を出す。そこには青い色の水の精霊を象った紋様が浮き出ていた。ルディは舌に聖痕を隠していた。
だから、私も口を開け舌にある物を見せる。私の毒の聖痕。毒々しい赤紫の花の紋様だ。そう、私も聖痕を舌に隠していたのだ。
「クククク」
ルディはこの状況が面白いと言わんばかりに笑い。私を押し倒し覆いかぶさった。
最悪だ。とてもとても最悪だ。
今の私の状態は、ソファの上で仰向けのまま動けない状態だ。
結果から言おう。ルディの水の癒やしの聖痕と私の毒の聖痕の相性は良かった。いや、良すぎた。媚薬だと言っていいほどだった。
ファルが早めに迎えに来なければ、やばかったかもしれない。
そして、なにが最悪か。18禁乙女ゲームなめてた。キスだけで腰が砕けて動けなくなるなんて。
妹よ。お姉ちゃんこの世界で生きていけるだろうか。
砕けた腰に、天使の癒しを使う。こんな事で治癒を使うなんて、ため息しか出ない。
起き上がって、シワになった隊服を整え、乱れた髪を直す。はぁ。散歩にいきますか。
_____________
会議室 Side
会議が始まるにはまだ時間があるが、全部隊の半数ほどの隊長と副隊長がすでに集まっていた。談笑している者、席についている者様々だ。
その会議室にまた新たに入っていくるものがいる。ニコニコと人の良さそうな顔をした第13部隊長とニヤニヤという感じの笑みを浮かべた第13副部隊長だ。
いつもは直ぐに席に着く第13部隊長が、今日は珍しく己の席ではない方向に向かっている。周りの者達はその第13部隊長の行動を遠巻きに見ている。なぜなら、彼に関わるとろくな事にならないからだ。
最近の出来事でいうと、聖騎士団の敷地の北に広がっている森が王都の外壁を超えて消滅したことだ。正に触らぬ神に祟りなしというものだ。できれば関わりたくない人物No.1に名が上がると言っていい。
その人物が誰に用があるのかと、ここにいる者達は戦々恐々だ。
「ロベル第1部隊長」
呼びかけられた人物は大柄で薄い緑の短髪が印象的な人物だった。
「な、なんだ?シュレイン第13部隊長」
呼びかけられた第1部隊長はビクビクして返事をする。そして、思わず左の肋骨に手を添えた。彼の部下である副隊長の2人しか知らないことだが、第13部隊長の怒りに触れ、肋骨を折られたばかりだった。
「先日のことは申し訳ないと思いましてね。実はとある筋から薬をいただいたのです」
ニコニコと人の良さそうな顔をして詫びを入れている。肋骨を折ったことを反省しているようだ。
第13部隊長はポケットから小指程の小さな小瓶を2本取り出した。
「どちらかが、折れた骨も治すことのできる薬で、どちらかが全身から血を吹き出しながら死ぬ薬です。どちらか一本差し上げますよ」
「いらんわ!!だから、俺は知らなかったと説明したよな!不可抗力だ!俺を殺そうとするな!」
第13部隊長の怒りはまだ収まっていなさそうだと、遠巻きに見ていた者達は、更に彼らから距離を取る。
「そうですか。ではこちらを差し上げますよ」
第13部隊長は二本の内一本を第1部隊長に差し出す。
「いらんと言っているだろ!」
第1部隊長が思わずそう言って手振るうと、小指ほどの小瓶を叩き落とされ、床で小瓶の蓋が外れ、中身がこぼれ出る。こぼれ出た液体が赤い絨毯を濡らして····いや、絨毯とその下の床でさえ煙を上げて溶かしだした。
ここにいる全員が心が一つになる。絶対に第13部隊長を怒らせてはならないと。
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