57 / 461
57 大将校の所有物
しおりを挟む『チッチッチ』
『ピッピッピッ』
あ、朝。鳥の鳴き声がするってことは、もう日が昇っている?しまった!朝のお務めの時間!神父様に寝坊した事をネチネチと言われてしまう!
パチリと目が覚める。·····何故にルディが私のベッドにいる···いや、違った。ここは私のベッドではなく、ホテルだった。
この一月程、夜明け頃に叩き起こされるのが、習慣化して久しぶりに日が昇るまで眠れたので、寝ぼけてしまったようだ。
やっぱりあの『ウキョー鳥』は絞め殺すべきだと思う。
「ウキョー鳥、ブッ殺す」
「なに、朝から物騒な事を言っているんだ?」
ルディは起きていたようだ。いつもの胡散臭い笑顔ではなく、呆れたような笑いを浮かべている。
「おはよう。アンジュ」
「おはよう」
起きた早々の私の言動に呆れているのだろうけど、いつも普通にしていればいいのに。ファルなんて団長の前でも爆笑していたぐらいだしね。そこはもう少し取り繕うべきだと思う。
「アンジュは朝から何をブッ殺すって言っているんだ?俺が代わりにヤッておこうか?」
ん?ルディならウキョー鳥の居場所を知っているかもしれない。
「ウキョー鳥ってどこに居るか知ってる?」
「·····」
ルディ、何で可哀想な子を見るような目で私を見てくるの!はっ!そう言えば、ウキョー鳥って私が勝手に言っているだけだった。
「この一ヶ月程、私を夜明け前から叩き起す『ウッキョー』って奇声をあげる生き物のこと。実物見ていないから、何が鳴いているのか知らないけれど、あれ安眠の妨害だよね」
するとルディは苦笑いを浮かべ『それは手が出せないな』と言葉を漏らした。ルディが手が出せないウキョー鳥って、一体何!
「それはマルクスアントニウスと名付けられた魔鳥で···」
マルク····魔鳥如きになんて長ったらしい名を与えたのか凄く疑問が湧いてきた。響き的には昔の記憶を刺激する皇帝の名前の響きに似ている気がする。
「先代の大将校の所有物だ」
先代の大将校?いや、大将校の所有物なら持って帰ってよ。先代ということは、今聖騎士団の敷地内に居ないってことだよね?
ん?私、大将校がいるって聞いたことがない。団長が聖騎士団をまとめているとファルから説明をされたことがあったけれど、その上官の大将校がいるとは聞いていない。
「今の大将校は誰?」
名前を聞いてもわからないけれど、将校になったからには、上官を知っておかないと、すれ違って挨拶しないって駄目だよね。これはきちんとルディに聞いておかないと。
「今、大将校の階級にいる者はいない」
あれ?さっきルディは先代の大将校って言ったよね?でも、今は大将校の階級に座す者がいない?普通は入れ替わりに誰かがその階級に立つと思うのだけど?
「それっておかしくない?」
「ああ、確かにいい間違えたな。先々代の大将校の所有物の魔鳥だった。アレを大将校だと思ったことはなかったから、間違えてしまった」
またまたおかしな言葉がルディから出てきた。大将校と成る者がいたようだけど、何らかの要因で排斥された?
「階級があれば何でも押し通すことができると思っている愚か者が大将校にいるべきじゃなかったんだ。俺からアンジュの髪を奪い取る愚か者に····」
痛い痛い痛い。骨がミシミシいうほど、抱きしめないでほしい。
「ルディ···痛い、これ以上は死にそう」
私が苦しみ悶えているのにルディは気がついて、力を緩めてくれた。朝から圧死しそうになる私って何?
どうやら、上層部入れ替わり事件の主犯格のルディにちょっかいを掛けてきたのが、先代の大将校だったようだ。
そして、未だに大将校の階級には誰も居ないって、組織的にどうなの?まぁ、団長がいればいいのか?いや、団長の首根っこは侍従に掴まれていたよね。
ん?あれ?もしかして、これって···
「侍従のルディの弟っていう人って、もしかして次の大将校に成る予定だったりする?」
ふと、以前感じた疑問を別の角度から見れば、それは必然的だったのかもしれない。
「流石、アンジュだな。何も教えていないのに、その答えにたどり着いたんだな」
そう言ってルディは私の額に口づけをする。
いや、どう考えても団長より下の階級の侍従の方が権力ありそうだったよね。それに侍従のお使いに素直に団長がしたがっていた。私の脳裏にはあの哀愁漂う背中が映し出されていたのだった。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている
おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。
しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。
男爵家の次女マリベルを除いて。
◇素直になれない男女のすったもんだ
◇腐った令嬢が登場したりします
◇50話完結予定
2025.2.14
タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)
【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする
白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、
12歳の時からの日常だった。
恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。
それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。
ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。
『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、
魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___
(※転生ものではありません) ※完結しました
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる