聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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57 大将校の所有物

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『チッチッチ』
『ピッピッピッ』

 あ、朝。鳥の鳴き声がするってことは、もう日が昇っている?しまった!朝のお務めの時間!神父様に寝坊した事をネチネチと言われてしまう!

 パチリと目が覚める。·····何故にルディが私のベッドにいる···いや、違った。ここは私のベッドではなく、ホテルだった。
 この一月程、夜明け頃に叩き起こされるのが、習慣化して久しぶりに日が昇るまで眠れたので、寝ぼけてしまったようだ。
 やっぱりあの『ウキョー鳥』は絞め殺すべきだと思う。

「ウキョー鳥、ブッ殺す」

「なに、朝から物騒な事を言っているんだ?」

 ルディは起きていたようだ。いつもの胡散臭い笑顔ではなく、呆れたような笑いを浮かべている。

「おはよう。アンジュ」

「おはよう」

 起きた早々の私の言動に呆れているのだろうけど、いつも普通にしていればいいのに。ファルなんて団長コマンドールの前でも爆笑していたぐらいだしね。そこはもう少し取り繕うべきだと思う。

「アンジュは朝から何をブッ殺すって言っているんだ?俺が代わりにヤッておこうか?」

 ん?ルディならウキョー鳥の居場所を知っているかもしれない。

「ウキョー鳥ってどこに居るか知ってる?」

「·····」

 ルディ、何で可哀想な子を見るような目で私を見てくるの!はっ!そう言えば、ウキョー鳥って私が勝手に言っているだけだった。

「この一ヶ月程、私を夜明け前から叩き起す『ウッキョー』って奇声をあげる生き物のこと。実物見ていないから、何が鳴いているのか知らないけれど、あれ安眠の妨害だよね」

 するとルディは苦笑いを浮かべ『それは手が出せないな』と言葉を漏らした。ルディが手が出せないウキョー鳥って、一体何!

「それはマルクスアントニウスと名付けられた魔鳥で···」

 マルク····魔鳥如きになんて長ったらしい名を与えたのか凄く疑問が湧いてきた。響き的には昔の記憶を刺激する皇帝の名前の響きに似ている気がする。

「先代の大将校グラントフィシエの所有物だ」

 先代の大将校グラントフィシエ?いや、大将校グラントフィシエの所有物なら持って帰ってよ。先代ということは、今聖騎士団の敷地内に居ないってことだよね?

 ん?私、大将校グラントフィシエがいるって聞いたことがない。団長コマンドールが聖騎士団をまとめているとファルから説明をされたことがあったけれど、その上官の大将校グラントフィシエがいるとは聞いていない。

「今の大将校グラントフィシエは誰?」

 名前を聞いてもわからないけれど、将校オフィシエになったからには、上官を知っておかないと、すれ違って挨拶しないって駄目だよね。これはきちんとルディに聞いておかないと。

「今、大将校グラントフィシエの階級にいる者はいない」

 あれ?さっきルディは先代の大将校グラントフィシエって言ったよね?でも、今は大将校グラントフィシエの階級に座す者がいない?普通は入れ替わりに誰かがその階級に立つと思うのだけど?

「それっておかしくない?」

「ああ、確かにいい間違えたな。先々代の大将校グラントフィシエの所有物の魔鳥だった。アレを大将校グラントフィシエだと思ったことはなかったから、間違えてしまった」

 またまたおかしな言葉がルディから出てきた。大将校グラントフィシエと成る者がいたようだけど、何らかの要因で排斥された?

「階級があれば何でも押し通すことができると思っている愚か者が大将校グラントフィシエにいるべきじゃなかったんだ。俺からアンジュの遺髪を奪い取る愚か者に····」

 痛い痛い痛い。骨がミシミシいうほど、抱きしめないでほしい。

「ルディ···痛い、これ以上は死にそう」

 私が苦しみ悶えているのにルディは気がついて、力を緩めてくれた。朝から圧死しそうになる私って何?

 どうやら、上層部入れ替わり事件の主犯格のルディにちょっかいを掛けてきたのが、先代の大将校グラントフィシエだったようだ。

 そして、未だに大将校グラントフィシエの階級には誰も居ないって、組織的にどうなの?まぁ、団長コマンドールがいればいいのか?いや、団長コマンドールの首根っこは侍従シャンベランに掴まれていたよね。
 ん?あれ?もしかして、これって···

侍従シャンベランのルディの弟っていう人って、もしかして次の大将校グラントフィシエに成る予定だったりする?」

 ふと、以前感じた疑問を別の角度から見れば、それは必然的だったのかもしれない。

「流石、アンジュだな。何も教えていないのに、その答えにたどり着いたんだな」

 そう言ってルディは私の額に口づけをする。
 いや、どう考えても団長コマンドールより下の階級の侍従シャンベランの方が権力ありそうだったよね。それに侍従シャンベランのお使いに素直に団長コマンドールがしたがっていた。私の脳裏にはあの哀愁漂う背中が映し出されていたのだった。

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