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82 『私がドラゴンを倒しましょう』(玉座の間 Side)
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玉座の間 Side
歓声が沸き起こっている。その大きさは割れんばかりだ。耳が痛くなると、白銀の王は思わず顔をしかめる。
隠し部屋は玉座の間の全体が見える高いところに配置してあった。眼下を見下ろすと、一人の少女を中心として、きらびやかな人々が囲い込み、まるで彼女に向って褒め称えているようだ。
白銀の王は意味がわからず、首を傾げ隠し部屋から言葉を送る。己の弟であり、この場の事を見聞きしていたはずのフリーデンハイドにだ。
『フリーデンハイド。何があった』
白銀の王は念話を使ってフリーデンハイドに語りかけた。彼は生ける屍となりながらも、己の言葉を他人に伝えるために、もがき苦しみから生み出した方法だった。
その言葉が聞こえたフリーデンハイドは顔を上げ、隠し部屋の方を見て、一つ頷いてから、人々の目を盗んで玉座の間から姿を消した。
暫し待つと、扉のない部屋の壁が開き、水色の髪の人物が入ってきた。それも珍しく笑いを押し殺したような、顔をしながら入って来たのだ。
「私には理解不能なことが起きていまして、どうしたものかと、ふふふ」
いや、笑いが漏れていた。
「それで何かあった?」
白銀の王はフリーデンハイドに尋ねる。尋ねられたフリーデンハイドは白銀の王の背後にいた己のもうひとりの兄を見た。
「シュレイン兄上。あのドラゴンに張り付いていたのは、兄上の婚約者の将校アンジュで間違いないですよね。ふふふ」
「ああ」
シュレインは機嫌が悪そうに一言で答えた。その返事にフリーデンハイドは、更に笑いが堪えられなくなったのか、肩を揺らして笑いだした。
「ふふふふ。まさかドラゴンに蹴りを入れるなんてね」
「フリーデンハイド。私の質問に答えていないが?」
フリーデンハイドの笑う姿を諌めるように、白銀の王が目を細めて彼を見る。
「はっ!申し訳ございません。ドラゴンが飛来したことで、玉座の間が騒然となったのですが、そこで聖女シェーンが言ったのです。『私がドラゴンを倒しましょう』と」
「「······」」
フリーデンハイドの二人の兄は意味がわからないという顔をしていた。
「私はその間もドラゴンの行動を、よく見えるようになった目で注視していたのですが、バットルアックスを担いた者が蹴りを入れることで、王都が火の海になることがさけられたと見えました。しかしその間、聖女シェーンは祈りの姿をとっていただけで、貴族達はその姿をみているだけでした。そして、火の雨が空を満たしたあと、ドラゴンの姿が消えていたため、あのような騒ぎになっておりました」
白銀の王は更に困惑した顔をしていた。その背後にいるシュレインは不機嫌が更に増し怒っているようにも見える。
「私には全て一人の人物がドラゴンに対して武器を使わずに対処したようにしか見えなかったけれどね」
白銀の王はこの度聖女に任命される少女の行動が理解できないという困惑が表れていた。
「私にも同じ様に見えましたが、肝心のドラゴンとアンジュがどこに消えたのでしょうか。シュレイン兄上?」
黒い何かが漏れ出ているシュレインを見て、フリーデンハイドの顔が思わず引き攣る。
そのシュレインはというと、己の左手にある銀色の腕輪に絡みついた鎖を引き千切ろうと指が触れると同時に、鎖が黒い炎によって燃え、シュレインの姿はこの場から消え去った。
その頃シストヴァ商会前では
「うわぁー。本気でドラゴンを連れ去っていったな。相変わらずアンジュは食べ物の事になるとがめついな」
アルージラルドは己の店の前で今は青い色だけが広がっている空を仰いでいた。
「アルージラルドの旦那。さっきの聖騎士様と知り合いなのか?」
武器屋の主であるアルージラルドの顔は広い。そんなアルージラルドならドラゴンと一騎打ちができる聖騎士とも知り合いかもしれない。道行く人が未だに空を見上げているアルージラルドに尋ねた。
「ああ、聖騎士になる前からの知り合いだな。俺の上客だ」
アルージラルドとしては取り引き相手としてはいい客だという意味だ。彼女の思考は普通からは逸脱していた。
冒険者について回っている変わった子供がキルクスにいる事は噂では聞いていた。その子供と知り合ったことで、色々アイデアをもらい。ここまで商会を大きくできたと言っていい。
やはり一番の売上は教会の聖水で清められた魔石を武器に埋め込んだ、魔武器の存在だろう。
数日に一度は魔石を聖水につけ込んで清めなければならいが、今までの使用直前に聖水を武器に掛けて使うという面倒な事がなくなり、冒険者たちからの反響がよく、今では商会のメイン商品と言っていいだろう。
アルージラルドから先程のドラゴンに向かっていった聖騎士が『上客』という言葉を聞いた者が····いや、アルージラルドの周りで先程の聖騎士がどういう者か気になっていた者たちが、一様に思った。
シストヴァ商会は聖騎士ですら御用達しにするほどの商会だと。流石、シストヴァ商会だと。
そして、更にシストヴァ商会の名が上がり、売上の貢献をするのだった。
歓声が沸き起こっている。その大きさは割れんばかりだ。耳が痛くなると、白銀の王は思わず顔をしかめる。
隠し部屋は玉座の間の全体が見える高いところに配置してあった。眼下を見下ろすと、一人の少女を中心として、きらびやかな人々が囲い込み、まるで彼女に向って褒め称えているようだ。
白銀の王は意味がわからず、首を傾げ隠し部屋から言葉を送る。己の弟であり、この場の事を見聞きしていたはずのフリーデンハイドにだ。
『フリーデンハイド。何があった』
白銀の王は念話を使ってフリーデンハイドに語りかけた。彼は生ける屍となりながらも、己の言葉を他人に伝えるために、もがき苦しみから生み出した方法だった。
その言葉が聞こえたフリーデンハイドは顔を上げ、隠し部屋の方を見て、一つ頷いてから、人々の目を盗んで玉座の間から姿を消した。
暫し待つと、扉のない部屋の壁が開き、水色の髪の人物が入ってきた。それも珍しく笑いを押し殺したような、顔をしながら入って来たのだ。
「私には理解不能なことが起きていまして、どうしたものかと、ふふふ」
いや、笑いが漏れていた。
「それで何かあった?」
白銀の王はフリーデンハイドに尋ねる。尋ねられたフリーデンハイドは白銀の王の背後にいた己のもうひとりの兄を見た。
「シュレイン兄上。あのドラゴンに張り付いていたのは、兄上の婚約者の将校アンジュで間違いないですよね。ふふふ」
「ああ」
シュレインは機嫌が悪そうに一言で答えた。その返事にフリーデンハイドは、更に笑いが堪えられなくなったのか、肩を揺らして笑いだした。
「ふふふふ。まさかドラゴンに蹴りを入れるなんてね」
「フリーデンハイド。私の質問に答えていないが?」
フリーデンハイドの笑う姿を諌めるように、白銀の王が目を細めて彼を見る。
「はっ!申し訳ございません。ドラゴンが飛来したことで、玉座の間が騒然となったのですが、そこで聖女シェーンが言ったのです。『私がドラゴンを倒しましょう』と」
「「······」」
フリーデンハイドの二人の兄は意味がわからないという顔をしていた。
「私はその間もドラゴンの行動を、よく見えるようになった目で注視していたのですが、バットルアックスを担いた者が蹴りを入れることで、王都が火の海になることがさけられたと見えました。しかしその間、聖女シェーンは祈りの姿をとっていただけで、貴族達はその姿をみているだけでした。そして、火の雨が空を満たしたあと、ドラゴンの姿が消えていたため、あのような騒ぎになっておりました」
白銀の王は更に困惑した顔をしていた。その背後にいるシュレインは不機嫌が更に増し怒っているようにも見える。
「私には全て一人の人物がドラゴンに対して武器を使わずに対処したようにしか見えなかったけれどね」
白銀の王はこの度聖女に任命される少女の行動が理解できないという困惑が表れていた。
「私にも同じ様に見えましたが、肝心のドラゴンとアンジュがどこに消えたのでしょうか。シュレイン兄上?」
黒い何かが漏れ出ているシュレインを見て、フリーデンハイドの顔が思わず引き攣る。
そのシュレインはというと、己の左手にある銀色の腕輪に絡みついた鎖を引き千切ろうと指が触れると同時に、鎖が黒い炎によって燃え、シュレインの姿はこの場から消え去った。
その頃シストヴァ商会前では
「うわぁー。本気でドラゴンを連れ去っていったな。相変わらずアンジュは食べ物の事になるとがめついな」
アルージラルドは己の店の前で今は青い色だけが広がっている空を仰いでいた。
「アルージラルドの旦那。さっきの聖騎士様と知り合いなのか?」
武器屋の主であるアルージラルドの顔は広い。そんなアルージラルドならドラゴンと一騎打ちができる聖騎士とも知り合いかもしれない。道行く人が未だに空を見上げているアルージラルドに尋ねた。
「ああ、聖騎士になる前からの知り合いだな。俺の上客だ」
アルージラルドとしては取り引き相手としてはいい客だという意味だ。彼女の思考は普通からは逸脱していた。
冒険者について回っている変わった子供がキルクスにいる事は噂では聞いていた。その子供と知り合ったことで、色々アイデアをもらい。ここまで商会を大きくできたと言っていい。
やはり一番の売上は教会の聖水で清められた魔石を武器に埋め込んだ、魔武器の存在だろう。
数日に一度は魔石を聖水につけ込んで清めなければならいが、今までの使用直前に聖水を武器に掛けて使うという面倒な事がなくなり、冒険者たちからの反響がよく、今では商会のメイン商品と言っていいだろう。
アルージラルドから先程のドラゴンに向かっていった聖騎士が『上客』という言葉を聞いた者が····いや、アルージラルドの周りで先程の聖騎士がどういう者か気になっていた者たちが、一様に思った。
シストヴァ商会は聖騎士ですら御用達しにするほどの商会だと。流石、シストヴァ商会だと。
そして、更にシストヴァ商会の名が上がり、売上の貢献をするのだった。
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