聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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95 愚痴が酷い

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 広範囲の検索。地上のスキャンに索敵?魔力を薄く広く這わせて、脳内で立体構造に組み立てて·····いや、地図として平面化?鳥瞰図?鳥の目?
 私は空に視線を向ける。

 実際に空から見たほうが早い。

「空から見てくる」

 そう言って私にルディの肩に手を置き、そのまま空に飛び立った。森全体が見える高さまで飛び、足場に透明な結界を置き、全方位にスクリーンのような透明な板を並べ、拡大した情景が映し出されるようにした。

 一番は神父様が指した方向だ。多くの騎士シュヴァリエ達が剣を振るい二足歩行の山伏の格好をしたカラスと戦っていた。カラス天狗だ。それもカラス天狗は統率力があるようで、集団対集団の混戦を極めているようだ。いや、騎士たちの方が武が悪いか。
 他にカラス天狗と戦っているところが10箇所。森の浅瀬では逃げてきた普通の魔物と戦っている所が15箇所。森の浅瀬の方はまだいい。対処可能だ。だけど、他の10箇所は死人も出ているようだ。ただでさえ見たことのないカラス天狗だ。それも飛行する相手にまともに剣が届かないようだ。

 私は『響声』を使う。普通は遠くの者に行動の指示を出すのに使う魔術だ。

「"酒吞。茨木。カラス天狗が森の中にいる。雑魚はいいからそのまま真っすぐ行ったところで3体のカラス天狗を駆逐して、そして、そのままカラス天狗を探し出して倒していって"」

 森の中を爆走している鬼の二人に、カラス天狗を倒すようにお願いしてみたけど、大丈夫なのだろうか。ん?あれ?確か鞍馬のカラス天狗って、どうみても牛若丸なカラス天狗だったよね。まぁ、所詮スチルはスチルだったということだね。

「これはどうやって見ているのですか?」

「うぎゃー!」

 背後から神父様の声が!!恐る恐る振り返ると、にこにことした神父様と機嫌が悪そうなルディが背後にいた。怖いよ。ここ上空なんだけど?

「え?何で二人がここにいるわけ?」

「アンジュが出来ているのですから、出来て当然ですよね」

 あ。うん。まぁ、そうなのだけど。まさか神父様まで上空にいるだなんて、脳内の拒否反応が酷いのだけど?現実逃避をしたい気分なのだけど?

「それで、これは?」

「森の中の情景を拡大して映しただけ。どこも戦況は悪いみたい。特にこの10箇所。あ、今9箇所になったね。空を飛ぶ相手に苦戦しているみたい。まともに戦えているのは、将校オフィシエだけだね」

 皆、甲冑を着ているけれど、将校オフィシエは白マントを羽織っているから目立つのだ。
 因みに私達は戦闘するつもりで、このキルクスに来てはいないため、白い隊服のままだ。まぁ、だから鬼の彼らを肉癖として前を歩かせてるようにルディが指示を出していたのだけど、私が遊撃隊へと移行させてしまった。

「先程いた彼らは、戦い慣れているようですね。まるで、この異形なモノと戦った事があるように」

 まぁ、あるかもしれないね。その真偽のほどは私にはわからないけれど、彼らはカラス天狗を倒せるという事がわかっただけで十分だ。

「さて、では小蝿の駆除をしてきましょう」

 そう言って神父様は腰に佩いていた剣を抜いた。その瞬間辺り一帯の空気が凍った。いや、正確には神父様が発する殺気に世界が軋んだのだ。
 目の前から消えた神父様にため息を吐く。敵わない事を身に染み込まされているから余計に思うことなのだけど、絶対的強者が敵でないことに心から安堵した。どうやって勝てるか幾度となくシミュレーションしてみたけど、先程のように意表を突いても勝てることは無い。

「アンジュ。勝手な行動はするなと言っているよな」

 まだ、機嫌が悪いだけのルディから言われた。でも、今度事前に声をかけたよ?

「ちゃんと空から見てくると言って、離れたよ。それに状況が明確にわかったよね。小競り合いしているところは神父様が瞬殺していっているみたいだけど、どうする?」

 神父様の行動が早すぎる。つい先程までここにいたのに、もう2箇所を制圧してしまった。

「言われたからには、職務は全うする」

 そう言ってルディは私を抱え、降下した。

「アンジュ。やはりリュミエール神父と仲が良すぎるよな。あの戯れ合いはなんだ?見ているこちらが、イライラする。それに毎回リュミエール神父からお菓子を貰っているのか?」

 ルディは更に森の奥に向かいながら、文句を言い始めた。ちらりと横目でファルに視線を送ってみるも、首を横に振られるだけだ。

「昔からアンジュはリュミエール神父の事が好きだったよな」

 いや、それは違う。何度も否定しているように違う。

「今日も楽しそうに二人で話しているし」

 それも違う。どの辺りが楽しそうだったと?私は凄く悔しい思いしかしていない。

「あのお菓子もリュミエール神父がわざわざアンジュの為に買ってきたのだろう?」

 それは否定できない。なぜか私は他の子達がもらっていないお菓子を手にしていることが多かった。

 森の奥にたどり着くまでルディの神父様への愚痴が止まることはなかった。ファルと普通に話していてもルディはファルに嫉妬心を持たないのに、何で神父様には嫉妬心を持つのか私にはよくわからなかった。これも昔から変わらないよね。

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